セローにはちょっとした思い入れがある。初めての海外ツーリングの相棒がセロー(225)だったのだ。モンゴルの大草原を走る3日間の冒険旅。ラフな路面から絶えず衝撃を受け、下手クソな私にバタバタと倒されながらも、故障ひとつなく完走してくれたセローの耐久性には心底感動した。
とはいえ、それは225ccのセローの話。ご存知の通り、セローは05年にフルモデルチェンジを遂げ、250ccにサイズアップし、デザインも一新された。まったくのニューモデルとしてこのセロー250を改めて見てみても……うん、今バイクを買うならコイツが欲しい!
何しろオフロードバイクだ。軽くてタフで、道を選ばない。メインテナンスも簡単だしコストもあまりかからない。取りまわしがラク。渋滞をすり抜けるのもラク。多少傷ついてもサマになっちゃうから気もラクだ。このフットワークの軽さは、オフロード志向ではないライダーにとってもスゴク魅力的。街乗りよし。通勤によし。もちろん、250ccあればツーリングも十分楽しめる。マルチな使いかたができて、まるでスニーカーみたいなバイクなのだ。
それなら別に他のオフロードバイクでもいい? この排気量クラスのオフ車なら各メーカーにある。けれど街にも映えるデザインと言ったらコイツがダントツだし、やはりセローには225cc時代からの歴史がある。80年代のオフロードブームに生まれ、今日まで途絶えることなく供給されてきたオフロードバイクがセローのほかにはないって、知ってた?
セローが誕生した85年はレーサーレプリカ全盛期で、オフロードバイクも先鋭的なモデルが人気を博していた。そんななか、セローはオフロードライドの原点に立ち返り、もう一歩、山深く分け入る"ためのトレイルバイクとして登場した。低中速トルクの優れたエンジンをコンパクトな車体に積んで、シート高を当時の流行より大幅に下げたところ、女性やオフロードビギナー、そして過激なレースに飽き始めたライダーたちまでも一気に取り込んだ、という輝かしい歴史を持つ。
その後も人気が続いたのは、ヤマハがユーザーの声に耳を傾け、毎年のようにマイナーチェンジを重ねてきたから。キャブレターの変更、セルスターターの追加、タンク容量アップ、サスペンションやブレーキの見直し……。セロー=改良の伝統。そのエンジンが今年、環境に配慮してFI(フューエルインジェクション)化された。25ccの排気量アップはツーリングでの疲労を少なくしてくれた。続くFI化は環境に優しいだけじゃなく、ガソリンに無駄がないぶんお財布にも優しい。こうして時代にあわせて姿を変えつつも、小柄な私でもじっくりと付き合えそうな穏やかな個性は健在。だって伝統だから。セローなら安心。パワーアップしたコイツでまた海外を走りたいなぁ……。
小さな日常から大きな夢まで、ひと思いに面倒を見てくれる。人と同じで、バイクも気負わず付き合えることが、長続きの秘訣だったりするよね。
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