国内4メーカーで、いまなお大型二輪クラスの国内仕様フルカウルスポーツ車を生産し続けているのは、残念ながらホンダだけだ。CBRの600RRと1000RR。なかでも600は、Fの時代から考えると、長い歴史がある。
いまは、逆輸入車や海外メーカーモデルを、日本でも比較的簡単に入手できる時代。だからその事実に、どれほどのユーザーがありがたみを感じ、一方でどれほどのユーザーが、選択肢が少ないことを残念に感じているかはわからない。だけど、これはホンダが国内ユーザーをないがしろにしていない、という証明であるということだけには、変わりがないだろう。
07年には、国内仕様専用のアンダーカバーを新設計、国内の加速騒音規制に対応させ、新型600RRを市場投入してみせた。
いま新車で買える、いわゆる08年型も、車体塗色などを除けば、この07年モデルと同じ仕様だ。改めてコレに乗ってみると、そうまでしてホンダが新型を導入してくれたことに、感謝したくなる。それは、単にこれが唯一無二の存在だからというだけでない。国内仕様ならではの弱点も忘れさせてくれるほど、高い運動性能を持っているからだ。
その基礎になっているのは、05〜06年型(2代目600RR)と比べて、装備重量で7kgも減った車体の軽さだ。とにかく、減速から旋回、Uターンから押し歩きまで、何をするにも軽さがある。
運動性を高めるのに、軽量化が抜群の効果を発揮することは、大幅なダイエットを経験したことがある人なら、すぐ理解できると思う。スポーツするときだけでなく、日常生活で階段を昇降したり、店をウロウロしたりするときですら、その違いは体感できる。現行600RRも、まさにそんな大幅ダイエット後と同じ印象だ。
ちなみに、「バイクは、人間が乗るんだから、まず乗り手がやせたほうが……」と考えなくもないが、何せ600RRは2年で7kg と、話題のバナナダイエットも真っ青のやせっぷり。しかもリバウンドもない。きっとこの数値を実現するため、ホンダの技術者は激ヤセか激太りしたに違いない。
話がそれたが、そんなわけで現行600RRは、峠道でも極めてクイックなコーナリングを堪能できる。でもそれは、過敏すぎるというものではなく、車体全体にはまとまり感もある。結果的に、スポーツライディングを心の底から楽しむことができる。
軽さと同時に、車体はとてもコンパクトで、エンジン出力は大型二輪初心者でも十分に扱いきれるレベル。スポーツライディングの基礎を学ぶナンバー付きモデルとしては、最適な機種のひとつと言ってよいのではないだろうか。
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