トラディッショナルな単気筒モデルといえば、真っ先に思い浮かぶのがSR400だ。同クラスの単気筒は新旧さまざまなモデルがあったものの、これほどロングセラーとなっているものはほかにない。だから、SR400は、シングルスポーツの代表格と言ってしまっても差し支えないだろう。
SR400が登場したのは、今から30年も前の78年3月のことだ。オフロード向けのモデルであるXT500の車体とエンジンをベースとして作られたロードスポーツがSR500であり、中型二輪免許のライダー向けとして、同時に用意されたのが、ストロークを短くした、このSR400。
現在となっては、発売以来ほとんど変わらぬ姿のまま作り続けられていること、また、今でもライダーからの需要があるということだけでも、驚異的な存在に違いない。もちろん細かな部分を見ていけば、30年もの間には数々の変更が加えられている。しかし大きな変更といえばホイールやブレーキ、カラーリング程度。30年前の乗り味が、そのまま今でも味わうことができるのだ。
さて、このSR400の魅力といえば、シングルならではのシンプルな作りと、それゆえに持ち合わせるスリムな車体、そして軽快さだ。フルサイズの車体ではあるが、けっして身構えることなく、気軽に乗り出せる。そして扱いやすい。たとえば、車体がある程度傾いた状態でも、足で支えられる車重だ。足着き性も良好だから、Uターンだって恐くないし、傾斜地での停止も不安なくできる。
エンジンは、発進時の極低速域からトコトコと走り、低中速域も非常に扱いやすい性格付けとなっている。だから、細い路地を散策するような、まったりとした走りは、それこそ50tのバイクか、はたまた自転車にでも乗っているような感覚なのだ。
そして、ゴー&ストップが苦にならないから、小道を走っている際に、道の交わる地点に入ってから一旦停止して、道順を変えるようなことも自然にできてしまう。ゆっくりと走ることがこんなに楽しめるのは、やはりエンジンの性格付けと、シングルスポーツだから可能となるに違いない。
また、車体の造りは、ひと昔前のオフロード車のような雰囲気。乗車ポジションは極めて自然で、腕や足に余裕ができるし、ハンドル操作も軽い。舗装されていない横道を見つけたら、ちゅうちょせずに入っていけそうな気分にもなる。ベースがXT500だということを思い出して、なるほどと感心できるような乗り味なのだ。
一方で、絶対的なエンジン出力は、同じ400tの最新スポーツには及ばない。比べてしまえば、SR400は高速道路で競争するような走りが楽しいバイクとはとても言えない。高速での長距離巡航も、ハイパワー車やカウル付きのモデルほどラクチンにこなすことはできない。
ただし、100q/hちょいで巡航することは十分に可能だから、ときには飛ばし、ときにはゆっくりと走るオーソドクッスなツーリングなら、それほど不満なくこなしてくれる。
つまり、SRらしいスピードで、SRらしい走りをするのがすごく楽しい。今となっては、一種独特な持ち味のバイクなのだ。
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