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特徴的なプロフィールを有する純粋なオフ車としてデビュー。あまり注目を集めなかった時代を経て、ストリートシーンで大ブレイク。ブームも一段落した今、立派にロングセラーといえる17年の歴史、そしてけっしてギミックではない特徴的な装備の数々を見ていこう |
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'80〜'90年代に巻き起こった空前のバイクブームでは、メーカーが矢継ぎ早に送り出してくる新型車こそが流行の先端だった。そして、それら最新モデルの高性能ぶりを比較テストなどによって評価したメディアが、さらにその傾向を助長する部分があった。
しかし'90年代も半ばを過ぎるころには、バイクはだまっていても売れる商品ではなくなっていた。バブル崩壊の日本経済はバイク市場も無縁ではなかったのだ。ところがここで、じつに面白い現象が起き始めていた。
それはカスタマイズの流れが急激に高まっていったことである。それもストリートカスタムと呼ばれる独特のものだった。
それらを作り出したのはメーカーでもなければメディアでもない。バイクをファッションのひとつとしてとらえ、だからこそ個性的に仕立て上げようとユーザー自身が推し進めたものである。しかもベースモデルとして一躍人気モデルとなったのは、それまで目立たない存在だったTW200だったのだ。
小径極太のバルーンタイヤを装着したユニークなオフロードモデルとして登場したTW200は、砂地や泥ねい地での高い走破性を特徴としていた。セル始動、低シート高もそうした使用状況でとくに効果的なものだった。
だが、搭載する空冷単気筒エンジンにパワーはなく、ハンドリングもクセの強い特性で、日常的に走りやすいバイクとはとてもいえたモデルではない。 いうなれば、かなりマニアックなバイクだ。
しかしその個性的なスタイルが、逆に街で目立つモノとして若者の注目を集める結果となった。以来TWは、ストリートカスタムの中心モデルとして確固たる地位を築くことになる。カスタムTWに乗るライダーを総称した「ティーダバー」という言葉まで生まれた。TVドラマに使われたことも人気に拍車をかけた。
2000年、TW200は方向性を変更した。ユーザー側から発生したブームを受けるかたちで、ストリートカスタムスタイルへと、その仕様を大きく見直したのである。
根源的ともいえるオフロード性能を犠牲にし、あくまでもスタイル優先のマイナーチェンジが行われた。もちろん、市街地で使用を考慮してフロントディスクブレーキを採用するなど、ハードとしての性能向上も図られた。付け加えるなら、エンジニアも若手中心になったという。
さらに2002年、TWはまた大きくモデルチェンジされた。200ccのエンジンは、トルク、パワーの向上を目指し225ccへとスケールアップ。この動力性能の向上に伴いブレーキも強化された。市街地での走りに力強さを加えたことで、ストリートカスタムベースとしての資質をより高めたわけだ。同時にそれは、ツーリング性を高めることにもつながった。あくまでもスタンダードでの話だが、排気量アップはそのまま、オールラウンド性を高める結果にもなったのだ。
現在、ストリートカスタムの形態も多種多様になった。スクーターが台頭したこともあってTW人気も一段落の状況だ。
ブームである以上、浮き沈みがあることは当然のこと。しかし、このブームがなかったとしたらTWは225になることはなかっただろうし、ひょっとすると、すでに生産されていなかったかもしれない。だがTWは現存している。開発者の思いとは違った方向に成長していってしまったが、それもまたひとつの進化であることは間違いない。そういう意味でも、強い個性を持ったバイクなのである。 |
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