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レーシングマシンのノウハウを注ぎ込み
斬新かつ大胆なスタイリングを持つ
スパルタンなスポーツバイクとしての
ビューエルの歴史を見てみよう |
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ハーレーダビッドソンのVツインエンジンを独自にチューンアップして、コンパクトな車体に搭載したスポーツバイク。それがビューエルの始まりだ。
もともとズ太い中低速トルクを発揮するのが得意なエンジン・キャラクターとスポーツバイクとの融合が大きな話題を呼び、日本市場でも徐々に注目度を高め、今では侮れない人気を獲得するまでに至っている。
あくまで走りのスポーツ性を狙った開発コンセプトは、当時大きく重くなる傾向にあったビッグスポーツの分野に一石を投じるものだったと言えるだろう。
空冷エンジンをパワーアップさせていくときに生じるオーバーヒートの問題などからクランクケース一体式のスポーツスター用レボリューション。後にツインカム88が登場した現在もその点は変わっていない。
しかし、もともとの発端をたどれば、2ストローク・ロータリーディスクバルブのスクエア4気筒エンジンを搭載し、AMA のフォーミュラ1レース参戦を目指したRM750 に行き着く。
その後アメリカンブランドのスポーツバイク。それも世界一流の仕上がりを目指し、レースでの活躍で有名なXR1000のエンジンを搭載したRR1000を開発。
そんなレーシングマシン譲りのノウハウをフィードバックし、ビューエルは徐々にその姿を表してきた。
つまり分かりやすく言えば、ハーレーダビッドソンのレーシング部門が独自にスポーツバイクを開発、独立して生産を始めたようなものだ。
軽量コンパクトな車体はマスの集中化を徹底的に追求してデザインされたのが特徴で、リヤショックのレイアウトやマフラーの取りまわしにもコダワリの部分が表現された。
もっとも重い部品となるエンジンの下や近くにほかの重量物を集中させることで、車体に加わるストレスを軽減できる。その結果フレームは軽量設計が追求できるわけだ。
加減速時の運動特性はもちろん、コーナリング性能でも左右へのクイックな切り返しなど、ライダーにとっての扱いやすさに貢献できる点も見逃せない。
三角形を組み合わせたような構造を持つユニプランナー・チューブラー・ペリメターフレームは、エンジンブロックも剛性メンバーに加える考えで造られ、その意味でもリジッドマウントを許容したXR系エンジンの搭載となったわけだ。
オーバー1リッターのスポーツバイクながら、非常にコンパクトなスタイリングを誇り、ホイールベースはそれこそ125ccクラス並の短さにある。当初のモデルはS1とS2Tだが、その軸距離は共に僅か1400mmに過ぎない。
全体がギュウッと凝縮されたかのような塊感のある個性的フォルムはビューエルならではのアイデンティティ・デザインとして印象深い。
前述のRW750登場は1983年のことだが、RR1000を開発。1988年には1200になり、ビキニカウル部を残してフルフェアリングを取り去ったRS1200も造られ、翌年には発売もされている。1991年には5速ミッション車も投入された。しかし日本にもその名をよく知られるように弾みがついたのは、1993年にビューエル・モーターサイクル・カンパニーが設立されてからだ。
ハーレーダビッドンのモーターサイクルエンジニアでありデザイナーでもあるエリック・ビューエルが設立した新会社で、ここにハーレーダビッドソンも資本参加した。
ニッチなモーターサイクル市場をターゲントに製品開発と生産を行うベンチャーとして起業し、世に送り出されたのがS1とS2Tだった。 スーパーネイキッドとかストリートファイターという言葉もなかった当時、まさにビッグ・スポーツ・ネイキッドの新しい方向性を示して見せたビューエルは、そのブランドを世界に知らしめることに成功したのだ。
フロントにはキャストホイールのリム径に近いぐらいの大径シングルディスク・ローターを採用するなど先進の軽量化技術を披露しているのもユニーク。
2001年にはすべてエンジンをのぞいて新開発されたファイアボルトXB9Rを投入。ますます異色スーパースポーツとしてのキャラクターを濃いものにした。
現在はハーレー・ダビッドソンの傘下に納まり、スパルタンなロードスポーツの分野を担うブランドとなっている。
Vツインエンジンと軽量車体とのマッチングが発揮する怒濤の加速力は、ライバルなき感動の走りを生み出しているのだ。 |
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