ハッシュタグ 海刊オートバイのカスタム・ツーリング情報30件

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    • 1
    • マリン後輩さんが投稿した愛車情報(Ninja ZX-12R)

      Ninja ZX-12R

      2023年01月30日

      66グー!

      「じゃあお世話になりました〜」
      ディーラーから仕上がった愛車を受け取り、イソイソと押していく。
      「○○がもうメーカー在庫無いので、〜〜がもう廃盤で〜」
      整備のドンが小言、アドバイスをおっしゃる。
      「ハハハ、ですよね」
      思わず苦笑い。
      「ほんじゃま、ウッスウッス」
      そしてセルをしばし長押し。
      キャンギャンキャン!

      ドドンッ!!!!ドルドルドルドル!
      ZX-12Rの久方ぶりの勝鬨。

      「…フフフ」
      ニヤける顔を隠すように、一張羅のフルフェイスのあご紐を締めていく。
      ハンドルを握る。
      愛車に跨がる。
      伝わる振動。
      次第に俺の心臓と脳みそのボルテージが上がっていく。
      「お世話になりましたー」
      静かにディラーから出ていく。
      10分ほどして高速に乗る。

      ヴォォォォォ!バンッ!ヴァァァァァァ!
      雄叫びを上げ疾走する愛車。
      「アヒャヒャヒャヒャ!ヨッシャアアア!」
      俺は爆笑した。


      始まりは友達がバイクにハマったことだった。
      最初は1人が250クラスに乗り始めて、その次にもう一人が400クラスに乗り始めて、そして俺も免許取ろっかななって。
      そして9ヶ月後には、、、
      「俺のヤツぁ200馬力以上でー」
      「バーカ、馬力有っても扱えにゃ意味無くね? その点、俺んは最新の電子制御で〜」
      「、、、ハハハ」
      俺はその時の愛車を見る。
      あんなに好きだったのが、急に色褪せて見えた。

      その夜。
      「なぁ親父」
      家のリビングで笑点を見る親父に話しかける。
      「今度、親父の12R乗っていい?」


      乗り始めて数分で後悔した。
      親父が後生大事にしていた古いバイク。
      ZX-12Rは噂に違わぬバイクだった。
      文句を言い出すとキリがないので、簡単に言うと、ものすごく乗るのに苦労した。
      「あ〜もう!チクショウが!」
      友達(あいつら)をビビらす為に、乗ろうと考えていた自分の浅はかさに反吐が出た。
      そして今日まで乗ってきた親父を尊敬した。
      ビビッて歯を食いしばって、この股下の化け物を手懐ける。
      いや、その気難しい御心に寄り添っていく。
      「ハハハ、こいつは――」
      スゴいですや。 


      苦労して苦労して乗れるようになった12R、ソレに跨り友達とのマスツーに出かける。
      まず加速について行けなかった。
      次にカーブで反対車線に突っ込みかけた、オマケで危うくガードレールにキスもしかけた。
      「おい!大丈夫か」「休憩すっか?」
      友達らの優しさがチクチクした。
      ああ、、、これが20年のバイクの進化かぁ、、、
      でも。
      2車線の有料道路。
      「ぐぐぐ」
      200キロで先行する2台についていく!
      凄まじい風切り音と、チリチリと心臓を焼く恐怖。
      橋に差し掛かり、周囲の風景が開ける。
      吹きつける暴力的な横風!!
      「あ⁉」
      風に煽られ、前の2人がふらつきブレーキが光る!
      フラリと揺れる2つの赤。
      まるで逆走するかのように急激に近付く紅い残光。
      「““““““」
      それらの真ん中を12Rにしがみつきブチ抜く。
      チラリと見たメーター、目に焼きつく数字、3○○。
      最寄りのサービスエリア。
      あーだこーだと話し合い、一通りダベって、ラーメン食って帰路につく。

      「お? おかえり。ツーリング楽しかったか?」
      家に付くと親父、いや父さんが出迎えてくれた。
      「うん」
      「そうか! まぁ、無事に帰ってきてくれて安心安心」 
      「ねえ、父さん」
      「あん?」
      「12R楽しいね」
      俺の言葉。
      「だろう♪」
      父さんはめちゃくちゃ良い笑顔を作った。
      12Rを納屋に戻す。
      傍らに停まっている俺の愛車。
      窓から差し込むオレンジに照らされ輝くソレに俺は跨がる。
      「そうだよなぁ、そうなんだよ」
      トンチキな独り言。タンクに伏せ、スロットルをカチャカチャとひねる。

      「ブオーンブオーン!」


      #ZX-12R #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2021年03月17日

      71グー!

      連絡を受けたのは仕事終わりに、コンビニに寄った時であった。
      聞けば親友が結婚するという。
      「マジか! 行くわ!」
      二つ返事に答え、言われたファミレスに向かう。
      「そうかぁ~タツロウも結婚かぁ~」
      1人しみじみと呟きながら走る……

      オレとタツロウは幼稚園から高校まで共に育った幼馴染みだった。暇な時は2人で遊び、互いの家に入り浸って、で同じようにバイクに興味を持ち免許を取った。2人とも我先にとバイクを買った。タツロウはカワサキ、俺はヤマハ。ヤマハに惚れた。デザインとかスペックとか色々有ったけど、何て言うか主人公感みたいなのを感じたんだ!

      思い出す風景、、、
      「ドラ!◯ソォ!!!」
      タツロウがニンジャ250SLをフル加速させる!
      俺はメットの中、軽く上唇を舐める。
      「ドッセエェェェェイッ!」
      俺もハンドルにしがみつき、YZF-R25をフル加速させた!

      ウゥ~ッ!
      その直後、後方よりサイレン、そして紅い点滅が俺達を追ってきた──

      眼下の愛車、YZF-R25を一瞥。
      バカやってたなぁ~。
      しかしソレも就職を機に段々と疎遠に、気付けば何年も連絡を取っていなかった。
      ……まぁ、でも。
      「ドッセェェェェイッ!」
      俺はバイパスを、フルスロットルで駆けていく。
      タツロウ待ってろよ~!!!

      日付も変わろうかという時間にファミレスに到着する。
      店に入り、店内を見回す。
      「お~い!」タツロウがこちらに手を振る。
      「お~う。久しぶりじゃん、生きてたか?」
      「お前こそ、、あら?」
      向かい側に座ろうとして気付く。
      「ヘヘ! 紹介するわ、嫁のランコ!」
      「どうも」
      タツロウに肩を抱かれながら、ランコさんが小さく一礼する。
      「ぼぇ~!? めっちゃ別嬪さんじゃんか! どこで拐ってきたんや?」
      「あぁ、それはな。詳しくは言えんが……ってなんでや!?」
      そんな俺とタツロウの会話に、ランコさんがクスクスと笑う。
      久しぶりに会う親友とのお喋りに花が咲く。
      あったあった!そうなんか? そうかそうか!
      なんて中身も無いような話が楽しくて楽しくてしょうがない。
      時間も忘れて語り合う。
      そんな感じで、話に一区切りが付いたところで。ふと……

      「そういえば今、タツロウ仕事で出世とかしたの?」
      タツロウに尋ねてみる
      「俺? 今、係長だぜ!毎日部下や上司に取引先に~もうクタクタだぜ」
      「そこで知り合ったんだよね」
      ランコさんがタツロウを見る。
      「「ねぇ~」」2人が笑う。
      「……ハハハ」
      一抹の、こう……ザワザワとした感じが俺を襲う。
      「お前は?」
      タツロウが手元のハンバーグを食べながら尋ねる。
      「俺はレストランで働いてるよ」
      コーヒーをすすりながら、答える。
      「へぇ~どこどこ?」
      「◯◯◯」
      「えっ! 最近、雑誌で取り上げられたイタリアンじゃないですか! 私行きました!」
      ランコさんが目を輝かせながら、スマホをいじり、俺に写真を見せる。
      名物にしているマロンとレモンが入ったドリアが写っていた。
      「ご利用ありがとうございました。またの来店お待ちして降ります」
      営業スマイルでお返しする。
      3人で爆笑した。

      夜もさらに更けて
      「じゃあ今度、、、ん?」
      タツロウがふと窓の外を見る。
      「あれ? あの赤いバイクってお前のヤツか?」
      「ああ、そうだぜ。」
      「まだ乗ってたんやなぁ」
      「勿論! ってか、タツロウ。お前はこれからハーレーとか乗るんか?クルーザーとかの方がタンデムが──」
      「あぁ、ゴメン。俺バイク辞めたんよ」
      タツロウが半分笑いながら喋る。
      ──あぁ、そうか。
      「あぁ、別にバイクがどうこうじゃないぜ? ただ~……その、いつまでの遊んでちゃ……ね?」
      タツロウがバツが悪そうに目を伏せる。視線の先にはランコさんの左手の……
      「やっぱもしも時が怖いんです」
      ランコさんがタツロウの手をギュッと握る。
      「……だよなぁ。そうだよ、何だよ、俺に気を使うなよ」
      俺はおどけてみせる。
      「当たり前だよ。いやぁ、こっちとしては羨ましいわ!こっちは万年、物言わぬ鉄の塊が恋人なんだぜ? そんな同情なんかせんでぇ~」
      「ハハハ! そう?」
      「そうだよ。いやぁ、ホント。タツロウにはガキの頃も、そして今も先を越されるなぁ~」
      俺は窓の外の白んできた空を見て、時間を確認する。
      「あぁ! ゴメン。俺そろそろ行くわ」
      財布から万札を出し、2人に差し出す。
      2人がアワアワしながら断る。
      「結婚祝い! 寂しい独り身に良い格好させてくれよ」
      顔が引きつったようなウィンクをする。
      タツロウとランコさんが何とか受け取ってくれた。
      「じゃ、また。ちゃんと結婚式呼んでくれよ」
      店の外へと出ていく。
      ランコさんがペコペコと頭を下げる。
      R25に跨がりメットを被り、店に振り返る。
      店内からタツロウとランコさんが手を振ってくれていた。
      軽く会釈、小さく手を上げる。

      アクセルフルスロットルで走っていく!
      「ああああああ」
      明日が休みで良かった!
      アクセルフルスロットルで走っていく!!!
      「アアアアアアアアアア」
      出来るだけ遠くに! 遠くに遠くに走っていく!!!
      「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
      メットの中で叫ぶ! ありったけの声を上げて胸の中のザワザワしたモノを吹き飛ばす!
      「くそぅ! 何だよ!めっちゃ雨入ってくんだけど!」
      「めっちゃシールド曇るッ! 前がよく見えねぇ!!!」
      走る。走って走って走って走って!

      「あっ」ガシャンッ!
      視界が90°傾く。信号待ちで俺はぶっ倒れた。
      跳んできた周りの車のドライバーや歩行者に支えられながら、近くのバス停に避難。

      左側に倒れたR25を引き起こす。
      「はい。大丈夫です」頼む
      「問題ないです」お願いだから
      「心配おかけしました」俺に優しくしないでくれ
      いっぱいいっぱいの体で何とか走っていく。

      たどり着いたのは海辺だった。
      思い返せば昨日から寝てない、ここはどこだ? 俺は何をしてるんだ?ボーっとする頭で、海を眺める。
      ヴォヴォヴォヴォヴォ!
      独特なパルス音を響かせバイクが、俺のR25の近くに停まる。
      現行のYZF-R1だった。
      ライダーがAGVのメットを脱ぎ、一息。革ツナギの格好で海辺のベンチに腰かける。
      「あの、R1カッコいいですね」
      精一杯にこやかに話しかける
      「あぁども」
      ライダーが俺を一瞥、そして拒絶するようにスマホをイジりだす。

      あ、もう無理。

      俺の目からドバドバと涙が出てくる。
      「──ッは? ええッ!? わ、ちょっ! おま、え、泣くなよ~」
      ライダーがスマホを放り投げて俺に駆け寄ってきてくれた。
      人目も憚らず、嗚咽を漏らし泣く。
      「ああ!もう! はいはい」
      ライダーが泣きじゃくる俺をベンチに座らせる。
      「ワカル! ワカルよ~ うんうん! そうだな」
      えずく俺の背中をライダーがポンポンと撫でる。
      情けなくて、、、悔しくて、、、悲しくて。
      もうオンオンとガキのように泣きじゃくった。

      「失礼しました」
      散々泣き腫らした後、どこかスッキリした気持ちでライダーさんに深く頭を下げる。
      「ああ、もう良いわ」
      ライダーさんがタバコを吸いながら、疲れた目で俺を見る。
      「まぁ、アレだな。アンタはその友達の結婚に際して、ちょっと色々思ったんだな」
      「そう、、、なりますね」
      ズビズビと鼻を噛みながら喋る。
      そこからお互い喋らず、無言で2人で海を眺める。
      ──どれぐらいそうしただろうか?
      「自分はどうすれば良いんですかね?」
      俺はライダーさんに尋ねる
      「知らん、分からんね」当然の答え。
      「……でも」 ……でも?
      「自分の気持ちに素直になれば良いんじゃない? 好きだから乗る、飽きたから降りる、そんなものまで他人に左右されるとかバカじゃねぇの?」
      「………」
      「バイク好きなんだろ?」
      頷く。
      「自分の人生の主人公は手前でしょ? やりたいようにすれば? 知らんけど」
      「…………」
      俺は無言で海を眺める。
      ライダーさんが一息に一気にタバコを吹かす。
      「悪ぃ、何か俺がしんどくなってきた。そろそろ行くわ」
      言うが先か、そそくさとメットを被る。
      「無責任な言葉かもしれんが、何とかなるって。ガンバんな」
      ライダーさんが軽く俺に手を上げ去っていく。
      クロスプレーンの音が木霊し遠ざかっていく。

      「ンあぁ~っ!」
      ベンチに寝っ転がり、縮み上がった体を伸ばす!
      腫れた目で空を見上げる。そして。
      「ッしゃあ!」
      勢い良く飛び起きる!
      「帰りますかな」まずは~
      「お前の修理だな」
      左側に思いっきりガリ傷の入ったR25を優しく俺は撫でた。

      朝の遅刻前のアラームが鳴り響く。
      壁に掛けていた服に身を包む。
      っとヤバいヤバい。
      急いで支度。
      アパートの階段を下りて──
      そして。
      「よっこらせ!」
      カバーをめくり、愛車の。
      「おはよう」YZF-R1Mに挨拶。
      R1Mに火を入れる!
      ヴォヴォヴォヴォッ!
      野太いファンファーレを鳴らす!
      そして。
      「どっせい!」
      もう1つのカバーをめくって。
      「行ってくるな」YZF-R25にも挨拶。
      その素敵なフェイスを撫でる。

      ん~やはり、2台持ちってのは無理が有ったか、、、なんて。
      「まあ、何とかなるっしょ!」
      ふと、いつぞやに聞いたヤマハのバイクの誇りを思い出す。
      ヤマハ車ってのはコーナーの先なんだ。
      ストレートで負けてても、コーナーで追い付いて、そしてコーナー先で先頭に立つ。
      皆があたふたしてる中をぶち抜くんだ。まさに俺じゃないか!
      なんたって俺は。

      「主人公なんだからな」
      愛車と共に俺は今日も走っていく。

      #YZF-R25 #YZF-R1M #俺RIDE #海刊オートバイ

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年06月20日

      47グー!

      (では~今日はこの辺で)
      (良ければ高評価とチャンネル登録お願いします)
      (ではでは~)
      すっかり夜も更けた真夜中。
      私は動画を視聴しパソコンを閉じる。
      「まぁ、こんなもんかな。 ん?」
      そして簡単な感想を述べ、傍らの振動するスマホを手に取る。
      「ハ~イ、テツコだけど。どしたエリー?」
      「コンバンハ!動画見たよ、めっちゃ面白かったよぉ~♪」
      エリーがテンション高めに喋る。
      「そう?良かったぁ」
      「サイコーサイコー! また行こうね!じゃねSee you」
      「うん。また行こうねSee you」
      私は通話を切り、ベッドに横になる。
      ンフフ♪ 思わずニヤける。
      今回はどれくらい再生数いくかなぁ?
      5000? 10000?
      「おやすみなさい」
      私は証明を消し目を閉じる。
      明日の朝が楽しみだ。

      「お~い! テツコちゃん、こっち手伝って~」
      会社の上司が私を呼ぶ。
      「はーい!今行きまーす」
      私は手元の作業を中断し、上司の元へと急ぐ。
      「テツコ~」
      エリーが私を見つけ駆け寄ってくる。
      「私も手伝うよ」
      「Thank You~」
      私はエリーと共に振り分けられた仕事をこなす。
      エリー。外国人技能実習として会社に来た外国籍の女の子。そして私が指導員として一緒に仕事している会社の同僚。
      「私達の動画、メチャ再生されてたよ~」
      エリーがコロコロと笑いながら私に話しかける。
      「そうなん? やったね!沢山お金入ってくるよ」
      私もそれを聞いて顔がニヤける。
      私とエリーは2人でモトブログをやっている。
      お互いバイク好き、しかもオフロード! ましてやお互いにジェベルに乗っているといった感じにシンパシーを感じて意気投合。
      2人で走って動画を撮り、そしてソレを私が編集してアップする。
      「次はどこ行こうか?」
      「うーん……どうしょっかな~」
      与えられた資料をパソコンに入力していく。
      「私、アドベンチャーしたい!」
      エリーがそう言って目を輝かせる。
      「アドベンチャー……オフロード……」
      私は動画映えしそうなスポットを考えてみる。
      「お~い。テツコちゃんエリーちゃん終わったかーい?」
      上司がせっかちに私達に尋ねる。
      「はい! もうすぐ終わりますよ」
      とりあえず返事を飛ばす。
      「休日行こうね」
      「オーキードーキー! 楽しみにしときます」
      私とエリーはクスクスと笑い仕事へと戻った。

      「うわっ」
      休憩時間に動画のコメント欄を見て私は声を上げる。
      「? どしたのテツコ」
      エリーが私のスマホを見てくる。
      「Oh……」
      そして困ったように声を上げた。

      ザッコww(^q^)
      卑しいモトブログですね
      Motorcycle is poor

      「………」「………」
      アンチコメを前に2人とも顔が引きつる。
      「テ、テツコ! fight!fight!」
      エリーが励ますようにファイティングポーズを取る。
      「……そだね。ファイトだね」
      私もファイティングポーズを取った。
      「エリー。コーヒー買いに行こうか」
      私はスマホをポケットにしまい休憩室から出る。
      そんな私にエリーがトコトコと付いてくる。
      ~♪~♪
      っと、出たところで休憩終了のチャイムがなってしまった。
      「残念、次の休憩時間ね」
      私は肩をすくめて、小さく舌を出す。
      「Oh……残念ですね」
      エリーも肩をすくめて、ペロッと可愛く舌を出してくれた。

      「うひゃ~! 恐い!ムリ!ムリ!」
      私は激しく上下する視界に悲鳴を上げる!
      「頑張れテツコ! もうちょい!もう少し!」
      先行するエリーが派手に泥砂利を上げながら進んでいく。
      私達は休日を使い地元の林道に来ていた。
      最初はいつも通りの緩いツーリングだったのだが。
      「? あれ?」
      どこかで道を間違えたのか。
      「Why? 電波入んないよ」
      気が付けばジャングルのような酷道へと足を踏み入れていた。
      「ハァ……ハァ……エリー……待って……待って……」
      ぬかるんだ路面にタイヤを取られる。
      「テツコ! 止まったらダメ!GO!GO!GO!」
      2人汗だくになって何とか進んでいく。
      しばらく走って。
      「ちょっと休憩!」
      道の傍らに座り込み、持ってきたポカリをラッパ飲みする。
      「ーク!ーク!ップハァ!」
      横で同じようにポカリをラッパ飲みするエリーを見る。
      流石は外国人! その姿すらも様になっていた。
      「大丈夫?」
      「うん平気。テツコは?」
      「私も何とか……あ」
      私は目の前に広がる景色に思わず声を漏らす。
      「どしたのテツコ……」
      連れて景色を見たエリーも言葉を失う。
      曇っていた空が晴れて、眼下に光輝く海が広がっていた。
      「綺麗………」「ーーBeautiful」
      私は思い出したように手元のゴープロで風景を撮影する。
      青々とした木々とキラキラと輝く海。
      しっかりと目とカメラに写す。そして。
      「お!?」
      私はゴープロの録画をスマホで確認し声を上げる。
      「電波復活してる! ええと、この後はーー」
      スマホで道を確認する。
      良かった、このまま進んで行けば何とか県道に繋がるようだ。
      「行けそう?」
      エリーが心配そうに私を見る。
      「OKみたい。 じゃ次は私は先導するね」
      私はスマホとゴープロをハンドルにセットする。
      「Here we go!」
      そしてバイクに跨がり出発ーー
      カシュン!
      思いっきりエンストした。
      たまらずバランスを崩す。
      「△△△△ッ!」
      エリーが思わず母国語を叫び私に駆け寄る!
      ガチャン!
      私は立ちゴケした。
      「痛っ~!エリーヘルプミー~」
      足がジェベルの下敷きになってしまった。
      エリーに覆い被さるジェベルを起こしてもらう。
      「大丈夫?」
      エリーが心配そうに私の足を優しく撫でる。
      「ん、、、ちょっとヤバいかも」
      足がジンジンと痛み、思わず顔をしかめる。
      そんな私を見てエリーがオロオロと周りを見渡す。
      「ーーあの」
      ふと聞きなれない声がした。
      私もエリーも声の方を見る。
      「大丈夫ですか?」
      オレンジ水玉のアパレルに身を包んだオフスタイルの女の子が立っていた。

      「いやぁ助かったよ。ありがとね」
      私は女の子に深々と頭を下げる。
      「こちらこそお役に立てて光栄です。いえいえ! オフロードは助け合いですよ」
      女の子、カシマさんがオーバーにリアクションして私に笑いかける。
      カシマさん。たまたま通り掛かって親切に手を貸してくれた女性オフライダー。
      あの後、私達はカシマさんに手助けされて何とか県道まで出ることが出来た。
      私がエリーのジェベルにタンデムし、そしてカシマさんが私のジェベルに乗って、三人でーー
      「わぁ!わぁ! コケるコケる!」「ちょっと待って!エリー!キャーッ!」「ええ! ジェベルシート高ッ! わっちょ!ひゃ~ッ!」
      ワチャワチャしながら何とかここまでたどり着くことが出来た。
      「ホントありがとうね」
      「いえいえ。では私はこれで」
      カシマさんがペコリと頭を下げ、踵を返して歩いていく。
      「今度は一緒に走ろうね!」
      私は手を大きく振って叫ぶ。
      「~♪」
      カシマさんも手を大きく振り返してくれた。
      「……さて、私達も」ーーぅふ!
      エリーが中腰になり私にくっつく。
      「ーー!ーー!」
      そしてグリグリと体を押し付けてきた。
      「え? え? なに?」ってか足痛いんーー
      ああ、そっか。
      「I can never thank you enough」
      私はそう言ってポンポンとエリーの頭を撫でる。
      「Thank you.Any time」
      エリーはニカッと笑った。
      そして2人で近くのバス停のベンチに座り、泥だらけになった2台のジェベルを眺める。
      「ねえエリー、あのアンチコメなんだけどさ」
      独り言のようにエリーに語りかける。
      「私どうでもよくなっちゃった」
      「きぐぅ~、私も」
      「誰に何を言われたって関係ない、まして赤の他人の言葉なんて。エリーと(誰かと)楽しく走って笑う、それだけで十分だね」
      ピェ~。どこからか同意するように草笛が聞こえた。
      「さて、今回の動画は傑作になるよ~」
      私はやる気を示すように腕を回す。
      「期待してますよぉ」
      エリーがマネーと親指と人差し指で輪っかを作る。
      「コラ! この銭ゲバ!」
      「HAHAHA~!」
      2人で笑いあってゆっくりと帰り支度を始める。

      ーーっと忘れてた。
      「では~今日はこの辺で」
      「良ければ高評価とチャンネル登録お願いします」
      「ではでは~」ヾ( ・∀・)ノ


      #DJEBEL250 #海刊オートバイ #俺RIDE #私RIDE #東○海平 #完全妄想オンローダー

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年06月06日

      63グー!

      「すいません。コーヒーのおかわりもらえますか?」
      朝のカフェ、俺はジャムトーストを食べながら、追加のコーヒーを注文する。
      「コーヒーですね。ミルクとお砂糖はどうしますか?」
      「2つ……あ~、いや」
      手元の山のようなミルクとシュガーの空き殻を確認。
      「ブラックで」
      「ーーはい」
      店員がオーダーを取り、空き殻を片付け厨房へと戻っていく。
      「今日はどこ行くんだい?」
      店長が俺の皿に焼いたウィンナーを載せる。
      「あの、これ頼んで……」
      「トーストだけじゃ足りんでしょ? 朝飯はちゃんと食わんと力が出んぞ」
      店長が窓の外を見て、そして俺に笑う。
      「アザます。今日は……」ーーいや。
      「今日でね」
      俺も窓の外を見る。
      「この町を出ていこうと思うんですよ」

      2週間前。
      ヤバいドジを踏んでしまった。
      プライベートでのヤラカシ、犯罪じゃないんだが、人生をやり直そうと思った。

      「今までお世話になりました」
      俺は馴染みの先輩の元に訪れ、別れを告げる。
      「ーーそうか」
      ソファーに座る先輩は深く息を吐き、静かに喋る。
      「アレはどうするんだ?」
      先輩がクイッと指で、奥の幌を被ったものを指す。
      俺はそれに近付いて、優しく幌をめくる。
      外装が無惨に割れたバイクが有った。
      完全なオーバースピード、火花を散らすバイク、口の中に広がる苦味。
      「また落ち着いたら連絡します」
      俺はバイクに幌を掛け直す。
      「……分かった」
      先輩は俺の言葉を聞き、少しだけ笑った。
      「なぁ、ヤス」
      先輩が俺の名を呼ぶ。

      「お前バイク好きか?」
      先輩からの問い。

      ーーそうですね。
      自分の心に聞いてみる。
      「好きですね。俺に何も教えてくれないけど、でも俺のこと分かってくれてて。ん~参ったな、上手く言えませんわ」
      俺は唇を噛む。
      「好きで好きでたまりません。いや困った、やっぱぁ、いざとなると……」
      しんどいっすわ。
      「ハハハハハ!」
      先輩が爆笑する。
      「そうか!そうか……」
      そして一通り笑い、立ち上がって。
      「ほれ」
      俺の上着のポケットに何かを突っ込む。
      「俺からの餞別だ、持ってけバイクバカ」
      ポケットを確認する。
      バイクのカギが入っていた。
      「外にザンザス有ったろ? 手続きは済ましといてやる。落ち着いたら住民票送れ」
      先輩は言うだけ言って、自分のバイクへと歩いていく。
      「悪いな、呼び出しだ。お前も早く行けよ?」
      先輩が手をヒラヒラと扇ぐ。
      「あの、ケンジさん!」
      俺は先輩、ケンジさんを呼ぶ。
      「ありがとうございました! 良いバイクライフを!」
      俺の言葉、言い終わる前にケンジさんは爆笑した。

      ぶち当たる風に身を屈める。
      10000回転の狂気の世界、ここまで回すと風の音しか聞こえない。
      ストリートファイターならではの体験。
      「ヒッヒッヒ!」
      アドレナリンとバイクの楽しさに溺れる。
      久しぶりの体験、やっぱバイクは
      楽しいなぁ~。
      ミラーが眩しく輝く。
      と、まずいまずい。
      俺はスピードと回転数を落とし、道のわきに寄る。
      その直後。
      フォン!フォン!フォン!フォン!フォン!フォン!
      凄まじい速さでバイクが数台通過していく!
      そして。
      「!」
      しんがりの青いライダーが俺にヤエーをしてくれた。
      「ハハハ」
      やっべ、速すぎだろ……。

      誰も居ない海辺の展望台。
      ずいぶんと遠くに来た。
      どっと疲れが押し寄せ、近くのベンチに座る。
      「しゃーない。今日はここで寝るか」
      のそのそとキャンプの設営を始める。
      しばらくの格闘。
      で。やっとこさ設営を終え、銀マットの上に寝転がる。
      グゥ~。
      「あ」
      腹の虫が鳴いた。
      朝食をすっかり使いきってしまったらしい。
      「……腹減ったな」
      飯でも食い行くか。
      ーーくぅーん。
      「ん?」
      また腹の虫?
      銀マットがグイグイと引っ張られる。
      「あ」
      ちっこい子犬が居た。首輪も無い、野良犬か?
      子犬が一生懸命にマットを引っ張る。
      「どれどれ~」
      枕元のバックから非常食の魚肉ソーセージを出し、子犬に差し出す。
      子犬がビクビクしながらも近付いてくる。
      「心配するな」ーー俺も野良だよ。
      子犬がチビチビとソーセージを食べる。
      そして食べ終わると俺の方に近付き、ペロペロと頬を舐めてきた。
      子犬を両手で抱え立ち上がる。
      「お前も一緒に行くか?」
      子犬に尋ねる。

      ーーゲフ。

      げっぷが返ってきた。
      「ハハハハハ!」
      俺は子犬をシャツの胸ポケットに入れる。
      無職に野良犬に野良バイク。
      「一気に大所帯だな」
      ジャケットを羽織り、チャックを上げる。
      ーーぶふぅ。
      子犬が苦しそうにチャックの隙間から顔を出す。
      子犬……う~む。
      「クロベエ掴まってろよ」
      キュルルッ! ブォォォーン!
      ザンザスが雄叫びを上げる。
      ーーアォアォーン!
      クロベエも雄叫びを上げる。
      「がおーっ!」
      俺も雄叫びを上げた。


      #XANTHUS #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #(U^ω^)

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年04月17日

      53グー!

      バイクってのは軽ければ軽いほど良い。
      馬力とかトルクとか空力とか色々有るかもしれんが、運転してて最も実感するのは軽さだ。
      「オラァッ!」
      俺はこれ見よがしに690dukeでウィリーをかます!
      ほら、軽いと簡単にこれが出来ちまうんだ。
      これめっちゃカッコいいだろう?

      朝飯は馴染みのカフェに愛車で向かうことにした。
      道ながらドンドンと力強いビックシングルのパルスに手が痺れる。
      「ーふぅ」
      信号待ちで手を揉んでは次に備える。
      そして青信号と共にスタートダッシュ!
      暴力的な加速に前輪が浮く。
      あぁ楽しい~。
      カフェに到着。
      「う~い。店長1人ね~」
      コーヒーの香る店内のカウンターに座る。
      「いらっしゃい。しかしお前のデューク五月蝿いな~」
      店長がお冷やとおしぼりを出してくる。
      「えぇ? アクラポでめっちゃ良い音と思うんだけどなぁ~。 あ、スペシャルホットドッグのセットで」
      「あいよ~」
      なんとなく店の外を見る。
      よく見れば店長の幌を掛けられた愛車と横に、もう1台幌を掛けられたバイクが停まっていた。
      「あれ? 店長バイク増車したの?」
      「あぁ、あれ? バイトの子のヤツだよ」
      「へぇ~」
      こんなライダーしか来なさそうなカフェでバイトとは、物好きなヤツも居たもんだ……
      「おい、何か失礼なこと考えてねぇか?」
      店長がマグカップに、なみなみと注がれたコーヒーを出してくる。
      「いえ。今日も良い天気だなぁって……熱ッ!」
      マグカップまで熱々にされていた。

      「で、軽さは武器だと思うんよね~」
      「そうだな~」
      ホットドッグを頬張りながら、店長とバイク談義に花を咲かせる。
      このカフェの店長は元ロードレースのプロレーサーだ。
      流石、元レーサーの店長。
      俺の考えを良く分かってくれた。
      「お前は本当にKTMが好きなんだな」
      店長がコーヒーをすすりながら、俺のデュークを見る。
      「もっと走り込めば店長よりも速くなっちゃうな~」
      「抜かせよ。寝言は寝て言うんだな」
      店長が俺のカップにおかわりのコーヒーを注ぐ。
      「さぁ。天気も良いんだし、こんなところで道草食ってねぇで、走ってこい」
      「こんなところって……」
      シュールな笑いをこらえながら、これまた熱々のコーヒーを飲む。
      「おはようございまーす」
      挨拶と共に綺麗な女の子がバンダナ姿でキッチンに出てくる。
      「ー!」
      マジか! 危うくコーヒーを吹くかと思った。
      「嘘でしょ、バイトって女の子だったの?」
      「アハハ、まぁな」
      何故か誇らしげな店長。
      「あ、いらっしゃいませ」
      女の子が俺に微笑む。
      「……どもっす」
      俺は姿勢を正し挨拶する。

      「あ、そうだ。ホマレ、ちょっとコイツと走ってやってくれないか?」

      「え?」「え!」
      店長がとんでもないことを言い出した。
      「ちょっと店長ーー」
      いや、待てよ。これチャンスじゃないか?
      「え、でも……」
      女の子、ホマレさんが困ったように店長に目配せをする。
      「ーーー」ヤツノタカッパナヲヘシオッテヤレ
      店長が何かをホマレさんに耳打ちする。
      「分かりました。じゃ、ちょっと待っててもらえますか?」
      ホマレさんが裏に消える。
      「店長、アザます!」
      俺は店長に手を合わせる。
      「そういえば、ホマレさんは何に乗ってるんですか?」
      「ん? あぁ、VTRだよ」
      「そうですか……」
      250のVツインかな? 頑張ろうと思った。
      「頑張れよ」
      店長が俺にサムズアップを示す。
      「ウスッ!」
      俺は一足先に店の外で相棒に火を入れて、戦闘態勢に入る。
      「行くぜデューク!」

      「お待たせしました~」
      ホマレさんがブカブカの革ツナギで現れる。
      店長のお下がりかな?
      「お手柔らかに」
      ホマレさんが再び俺に微笑む。
      「うぃすッ!」
      テンションとやる気が鰻登る。

      READY TO RACE!!
      今こそその時!
      我が世の春が来た!


      #690duke #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #その戦闘力は軽くなく

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年04月13日

      51グー!

      「本当に買われるんですか?」
      ショップの店員が半信半疑に尋ねてくる。
      「はい。コイツをお願いします」
      俺は迷わず答える。
      目の前に有るのは、下品なピンクに塗られたホンダのフォルツァ。
      素人の俺から見ても酷い様だ。
      缶スプレーで塗装面はボロボロ、安っぽいメッキパーツは所々サビを吹いている。唯一の救いはシートだけはピカピカなことか……
      「ま、張り直すけどね」
      「え? あ、やっぱ止められますか?」
      「ん? いえいえ買いますよ」
      テーブルに移動し購入の手続きを進める。
      相場よりも随分と安く買うことが出来そうだった。
      見たところ、エンジンやサスなどは至って正常。やはり見た目だろうか……
      「では、来週辺りに点検が終わると思いますんで」
      「あ、はい。それでお願いします」
      サービスで貰った缶コーヒーを飲みながら店を後にする。
      ピンクのフォルツァと目が合う。
      見てて何だか。
      「ハハハ」
      笑いが出てしまった。

      「ふぅ~ぅ」
      ガレージの中、塗装用防護マスクを外し、一息をつく。
      俺はフォルツァを納車と同時に全バラにした。
      エンジン系は予想通り健康そのものだった。
      件のカウルのピンクを落とし、下地を塗り直して黒に染める。
      「なかなか良いんじゃないか」
      結構いい感じに仕上げることが出来た。
      カウルを壁に吊るし換気扇を全開にして、キャプテンスタッグの椅子に座り込む。
      傍らに転がる鉄屑が目に入る。
      焼け焦げて真っ黒になったソレ。
      煤けて焼き付き見るも無惨な姿。
      「ーーー」
      昔日の風景を思い出す。
      こちらに突っ込みヘコんだ車、延々と燃え盛る炎、ギャーギャーと喚く周囲、遠くから響くサイレン。
      地べたに這いつくばり、目に焼き付けられる愛車の末期……
      「すまんな」
      鉄屑に手を伸ばす。
      「直ぐにとはいかんが、、、必ず」
      直してやるからな。
      「さて、と」
      俺は立ち上がり、素っ裸になったフォルツァのハンドルを握る。
      「ヨロシクな黒スケ」
      期待を込めて名前を付けてやる。
      アイツの分までしばらくは頑張ってくれよな?

      「~♪~♪」
      ヘルメットに仕込んだスピーカーより流れる音楽に鼻唄を乗せる。
      今日は黒スケ
      での初めてのツーリング。
      ゆったりと、たまにキビキビと目的地まで走っていく。
      「おぉ良いじゃん」
      走っていく黒スケと俺の影に惚れ惚れする。
      ビッグスクーターは良い。
      見た目と裏腹に以外と小回りが効き、そして人も荷物も沢山載せて、走る喜びを実感できる。
      「黒スケお前最高だな!」
      バイクの楽しさにテンションが上がる。
      「お!」
      そんなことを考えてたら、左に絶景が広がった。
      後ろを確認して路肩に停め、シートに腰掛けて絶景を楽しむ。
      後ろを走っていた複数台のバイクたちが、振り返りながらも通りすぎていく……
      一般のバイクは、おいそれと停まれんもんなぁ……
      「ハハハ! うまッ!」
      笑って、ドリンクホルダーのコーラに舌鼓をうつ。
      「~♪~♪」
      音楽に合わせて軽くモモを叩いてリズムをとる。
      「気持ちいいな~♪」
      目的地も忘れ今を楽しむ。

      バイクに乗れるという楽しさ
      走ることの喜び
      ライダーという最高の幸せ
      それを今、俺は全てをもって感じているんだ……


      #FORZA #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #頭ハッピーセット

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年04月13日

      66グー!

      「ヒカリちゃん今までご苦労様でした」
      店長が私に花束を渡してくる
      「ヒカリお疲れ様」「先輩お世話になりました」「新しい場所でも頑張って下さい」
      同僚や後輩たちが拍手と共に応援の言葉をかけてくれる
      「ありがとうございます」
      私は何度も何度も頭を下げる。
      ありがとうありがとうありがとうありがとう。っと握手を交わす
      「ではありがとうございました~」
      店を後にする……

      「……ハァ」
      緊張が解け、思わずため息が出た。
      渡された花束を見る。
      「苦手なのよね。こういうの」
      何ともし難い居心地の悪さを感じながら、駐車場までの街灯に照らされた夜道を歩いていく……
      皆の顔が頭の中でストロボのように流れる。
      皆が私との別れを悲しんでくれた。
      「まぁ、だからと言って戻りはしないんですけどね」
      駐車場に着いた。
      愛車のFZ400のシートに花束をネットでくくりつける。
      「………」
      花束が見事にひしゃげてしまった。
      いや、流石にこれはイカンでしょ……
      着ていたパーカーのファスナーを開け、体との間に花束を押し込む。
      「うぅ」
      濃厚な花の香りにむせそうになる。
      て言うかむせた。
      FZに火を入れる。
      ブォンブォンと直4の良い音が刻まれる。
      ヘルメットを被り空を見上げる。
      花の香りに包まれながら見る夜空は、いつもよりも綺麗な気がした。

      昔から人付き合いが苦手だった。
      男女の中はもとより、同性間でも友達であっても苦手だった。
      仲良くは出来る、しかし長いこと付き合っていると、自分や相手のアクが見えてきて疲れてしまう。
      「お前さ繊細すぎ。思春期かよ」
      元カレはそんな私を見て、大層めんどくさそうに呟いた。
      「あんた、そんな人に言えるほど大した人間なの?」
      友達の辛辣な言葉。
      「分かってる」
      分かっているんだけど、、、

      「はぁぁ」
      深夜の空港のフライトロード。
      その道路脇に座り、タバコをふかす。
      これからどうしたものか。
      どこに行こうか? 次の仕事は何をすれば? そもそも、いつまでこんな人生の逃避行を続けるのか?
      不安で心が押し潰されそうになる。
      「ねえ、君はどう思う?」
      FZに問いを投げる。
      FZ400。いつぞやの職場で誘いを断れず免許を取らされて、これまた提案を断れずに買ってしまったバイク。
      最初は嫌だった。でも気付けば今でも乗っているほどには気に入ってしまった。
      そんな私の愛車。
      「ーー」
      無論、FZは何も言わない。
      「しょうがない。とりあえず走るか」
      タバコを地面に押し付け、携帯灰皿に入れる。
      「どこ行きたい?」
      FZに行き先を尋ねる。
      「そっかそっか」
      グローブを着け、ジャケットを羽織る。
      物言わぬバイクに1人話しかけるなど端から見れば立派なーー
      「メン○ラだね」

      県を南から北へ上っていく。
      途中、何度かコンビニに寄って缶コーヒーと暖を取る。
      そしてオマケでタバコをふかしてはFZと会話。
      少しずつ東の空が明るくなっていく。
      「あ、やっば」
      県境を越す手前でガソリンが心許なくなってきた。
      最寄りのガソスタで、FZに奮発しハイオクを満タンに見舞う。
      「どうだ。ハイオクは美味いか!?」
      再び北上していく。
      回転数高めでFZの音を存分に楽しむ。
      しかし目的地に近づくにつれ、肌寒くなってきた。
      「寒い! 私を風から守って~」
      体を屈めてFZの小さなビキニカウルに潜り込む。
      そして……

      「到着~!」
      山の展望台の広い駐車場、私は思わず声を上げる。
      何とか間に合った。
      まばゆい朝日が真っ正面から差し、私とFZを照らす。
      眩しさに目を細める。
      寒い山の朝。
      夜通し走ったこともあり、すっかり体が冷えてしまった。
      FZのエンジンに手を近付けて暖をとる。
      「はぁ……綺麗」
      見える朝日はあまりにも綺麗だった。
      人生の逃避行。
      この旅の終わりはまだ見えないけど。
      今は少しだけ、この瞬間を楽しもうと思った。
      「ふぅ~」
      エンジンで温まった手をタンクに添える。
      これからも私を支えてね。
      走ってる時は私が君を支えるから。
      ーーだから。
      「これからもヨロシクね」
      FZのタンクを撫でる。
      私とFZの旅は終わらない。
      行こう。
      決意の朝を何度も迎えて。
      今日もアクビをひとつ
      変わらずタバコを吹かしてーー

      待ってろよ。
      私はなかなか手強いぞ。
      次こそは負けないからな。


      #FZ400 #海刊オートバイ #俺RIDE #私RIDE #東○海平 #人生楽ありゃ苦もあるさ

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年04月12日

      63グー!

      今年の春で息子が社会人になった。
      祖父の代より住んでいる我が家、私と妻とでは手広になってしまった。
      「久しぶりに乗ってみるか」
      ふと、このところご無沙汰だった相棒に会いに行こうと思った。
      トラクターを納めている倉庫の中、幌をかけられた相棒から幌を引っ剥がす。
      「よう、久しぶり」
      相棒、GSX-R750に久方振りの日光が眩しく差す。
      その当時、アマチュアからル・マン、WGPで活躍するスズキに惚れ込み、カツカツにローンを組んで手に入れた相棒。
      あの頃は将来も考えず、草レースにツーリングに明け暮れていた、、、
      「若かったなぁ~」
      忘れていた熱いモノが、昔日の興奮と共に甦ってくる。
      最後に乗ったのはいつだったか……
      座り込み相棒のコンディションを確認する。
      タイヤはオシャカ、移動を試みればキチキチと異音、E/Gもタンクも覗けばドロドロ。
      この数年は、なにかと忙しく放置してしまっていた。
      「まずは、お山のカミさんに相談だな」
      私は思い立ち、出掛けることにした。

      「もう一度、バイクに乗ろうと思うんだ」
      私は妻に、献上品のケーキを差し出しながら申し出る。
      「ふぅん。そう」
      妻は興味無さげ言って、ケーキを皿に移す。
      「反対しないのか?」
      「子供も1人立ちしました。私や家計への負担を抑えるなら良いんじゃないです?」
      「……そっか」
      肩透かしながら、テーブルで小さくガッツポーズをとる。
      「事故だけはしないでね」
      妻がケーキを頬張りながら小さく、しかし確りと聞き取れる声で私に釘を刺す。
      「ああ。約束する、ありがとう」
      私も確りと頷いた。

      「うわ! ジスペケナナハンじゃないすか!」
      相棒を持ち込んだショップの兄ちゃんが目を輝かせる。
      「知ってるのかい?」
      「知ってるも何も、初代で~、油冷で~、油冷によって~、他メーカーよりも軽さで~」
      兄ちゃんがまるで宝物を見つけたように饒舌に言葉を紡ぐ。
      「………」
      驚いた。よもや相棒よりも年下であろう若い子たちが、コイツの歴史を語るとはーー
      「そうだよ、そうなんだよ」
      思わず年甲斐もなく子供のように語り合う。
      「しかし、750ってまだ売ってるんだね~」
      ショップに並ぶ最新のSSの中に混じるGSX-R750を見て驚く。
      てっきり、レギュレーションと共に1000ccに駆逐されたと思っていたが……
      「スズキですよ。浮沈を支えた750を切るわけありませんよ」
      「ははは。そうかそうだね」
      その言葉に思わずにやける。
      「あ、そういえば。その750買いたいってお客さん来たんすよ」
      「へぇ~」
      「買われるのも時間の問題っすね~」
      ーーそうか。
      「じゃお願いします」
      相棒を預け、丁寧に見送りまでしてくれた兄ちゃんに手を振る。
      ふと振り返り、並んでいたGSX-R750のことを考える。
      「大事にしてもらえよ」
      老婆心ながら750に檄を飛ばした。

      ボオォォォン!
      水冷には無いガラガラ音と共に喧しい音を奏でる。
      近所の軽いワインディング、久方ぶりの興奮だ。
      懐かしい音、匂い、振動、熱。
      クラッチを握り、軽くスロットルを煽る
      ボォン!ボォン!
      3000回転から始まるタコメーターの中、忙しく針が跳ねた。
      「ハハハハ」
      仕事に追われ、子育てに苦心し、当たり前の大人になるために、いつの間にか忘れていたモノ。
      「帰っていたぜ」
      少しだけ速度を上げる。

      「ふぅ」
      開けた海岸線の駐車場。
      新調したヘルメットを脱ぎ、相棒の横に座る。
      疲れてしまった。
      やはり、こればかりは20年前と一緒とはいかないか、、、
      額から頬に伝う汗を袖で拭う。
      傍らの相棒がチリチリと音を立てる。
      「………」
      見ればカウルやタイヤに所々、剥がれが見えた。
      「お互い年食ったなぁ……」
      ブオオオオォォォン!
      けたたましい音が鳴り響く。
      見れば海岸線の向こうにバイクが見えた。
      ヘッドライトの光が近づいてくる……
      そして、同じように駐車場に入ってきた。
      「え?」
      しかも、何を思ったのか相棒の横に止めてくる。
      不審に思いながら立ち上がる。
      見れば先日の最新のGSX-R750だった。
      跨がるライダーがミラーシールドのヘルメットを脱ぐ。
      「うぃーす」
      ライダーが私に微笑んでくる。
      「ーーは?」
      私は思わず声を上げる。
      「久しぶり父さん」
      ライダーが私をそう呼ぶ。

      はにかむ息子がそこに居た。

      「お前バイク乗ってたのか」
      「うん。実は免許取ったんだ」
      息子と缶コーヒーを飲みながら、久しぶりに語り合う。
      「驚いたよ」
      「驚かせたかったからね」
      聞けば、以前よりバイクに興味はあったらしい。
      しかし、言えば反対させると思い我慢していたとのこと。
      そして社会人となって免許を取り
      、意気揚々とバイクを買ったという。
      「ホントは父さんのジスペケ乗りたかったんだけどね」
      「ほう」
      「でも、コイツに惚れちゃって」
      息子が自分のジスペケを愛おしそうに眺める。
      そうか。お前も相棒を見つけたか……
      「じゃ次は嫁さんだな」
      「うるさいやい」
      「母さんみたいな美人さんを捕まえるんだぞ」
      「はいはい」
      「相手は居らんのか?」
      「あぁ~。さて、そろそろ走るかなぁ!」
      息子がいそいそと準備をし、足早にジスペケに火を入れる。
      「あ、待て。バカ息子!」
      私も急いで準備し、相棒に火を入れる。
      時代を越えて、形を変えて。
      しかし変わらぬ名前と思いを抱いて。
      2台のGSX-Rが雄叫びを上げる。


      #GSX-R750 #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #E/Gのボアストローク変わってないとかマジ!?

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年04月08日

      59グー!

      空高く10Rが舞う。
      砕け散るライムグリーン、相棒がバラバラに破壊されていく。
      見上げれば地面、空と地面がひっくり返る。
      ついで全身をグラベルに叩きつけられる。
      「ふぇ」
      衝撃に息が止まる、ヘルメットのシールド越しに高速で地面がスライドしていく。
      「終わった」
      昼間にも拘わらず、暗い闇の中へと落ちていく。

      「あぁ、痛って」
      俺は悪戦苦闘し車から降りる。そして足を引きずりながら後部座席から松葉杖を取り出し、一歩一歩前へと進む。
      「ちはっ」
      松葉杖をつき、ショップに顔を出す。
      「お~う、久しぶり。生きてたか」
      店長が大破したバイクをいじりながら手を振る。
      ヨボヨボと近づいていく。
      「ボロボロだな」
      「体に何本かボルト入れたもんで」
      「ロボ○ップ?」
      「人間です」
      傍らのバイクを見る。
      「……ひどいっすね」
      「廃車やな、てかこれお前のやろがい!」
      目の前のバイク、俺の10Rは見るも無惨な姿になっていた。
      フロントカウルは垂れ下がり、シートは抉れ、リアに至っては完全に歪んでドラッグマシンのよう。
      かろうじてライムグリーンでカワサキ車と分かるのが関の山だった。
      「空高く舞い上がったらしいな」
      「ええ、見事にハイサイドしました。ドローンの気分を味わえましたよ」
      傷だらけの愛車に触れる。
      あの瞬間の恐怖がよみがえり、冷たいモノが体に走った。
      「……直すか?」
      「ーー直せますか?」
      「高くつくが、、、出来るっちゃ出来る」
      「………」
      「俺としては買い換えを勧めるの。……そっちの方が儲かるし」
      「おいジジイ」
      「ハハハ!」
      10Rの千切れなかった片割れの目と目が合う。
      リフレクターに写るは、ヘボライダー。
      「ちょっと考えてみます」
      ヨボヨボと車まで戻る。
      「養生せえ、それまでは預かっといちゃるわ」
      店長の言葉に軽く手を上げ答える。

      「ふ~む」
      雑誌でバイクのインプレを読む。
      赤い200馬力オーバーのヤツ、青いレーサーレプリカ、ストファイにモタード。
      動画も見て確認する。
      ストレートの伸び、コーナーでの猫足、電子制御によるGPライダー並みのライディング。
      「これとか良くね!」「メガスポ!メガスポ!」「2st!250!セパハン!チャンバー!ドッグファイト! 」
      バイク仲間が、ここぞとばかりに自分の愛車をプッシュしてくる。
      「う~む」
      なかなかしっくりと来ない。
      ま、そう言いながらも、まだ傷も癒えておらず跨がることも出来ないんだが。
      「ひぃ……ひぃ……」
      リハビリがてら近くのワインディングを歩く。それだけで青色吐息になった。
      「あ無理」
      バス停のベンチに座り込む。
      バイクで走れば、あっという間なのになぁ………
      しばしの間、ぼんやりと風景を眺める。
      頭に浮かぶのは昔日の10Rでのクラッシュ
      サーキットでのライディング。
      間近に迫るカーブ、ギアを落とし1万回転でカーブに進入。
      脱出につれて徐々にスロットルを開けていく。
      確かなタイヤの感触、地面に吸い付くように地面にバンク。
      裏ストレートに差し掛かる!
      一気にフルスロットル!
      脳ミソが置いていかれそうな加速ーー
      が。
      「!」
      突如、イン側よりバイクが膨らんでくる。
      「ウソだろ!」
      ガッツリとブレーキを握り込んでしまう。
      車体が左にスライドしていく……
      そして勢いにより体がカタパルトのように空へ投げ出される。
      眼下で10Rが錐揉みに地面に叩きつけられ激しくバウンド。
      そして俺はーー

      「こええ」
      寒気にブルッと震えた。
      ブオオオオォォォン!
      目の前を1台のSSが凄まじい速さで通過していく。
      「………」
      目で追うも、あっという間に遥か彼方へと消えていく。
      なるほど。ーー良いじゃないか。
      「よっしゃ」
      声を出し、勢いよく立ち上がる。
      スマホを取り出す。
      「あの~、店長。10Rのことなんですがーー」

      4台での連隊走行。
      ○○キロ越えでワインディングを走っていく。
      「ーー」
      先頭の俺はエスケープゾーンへと入る為、後方に手を振る。
      「ふぅ」
      愛車たちを並べて一息つく。
      「おつかれっした」「やっぱ速ぇっすね」「体もう大丈夫なんすか?」
      久しぶりのバイク、良い汗をかくことが出来た。
      「しかし驚きましたよ~」
      後輩の1人が俺のバイクを見ながら、俺に話しかけてくる。
      「まさか、もう一度10R買うとは……」
      ほかの2人も俺のバイクをジロジロと覗き込む。
      俺はもう一度10Rを買った。
      色々考えたが、結局はコイツになった。
      理由という理由は無い。
      強いて言うならば……
      「コイツじゃなきゃダメだったんよ」
      それだけで十分。色んな葛藤や迷いは吹き飛んでしまった。
      「しかし、またイン側空いてましたね」
      「うるせぇ!」
      「ちょっとビビっとんちゃいます?」
      「やかましいわッ!カマ掘んぞ!」
      「おお~こわッこわッ」
      後輩たちが蜘蛛の子散らすようにガードレールの向こうに避難する。

      「じゃ、そろそろ行くか」
      俺はヘルメットのアゴひもを絞め直す。
      「次、俺が前行っても良いすか?」
      「おう、バチバチに煽ったるわ」
      「ひょえ~!!」
      俺とコイツの前を走ることは誰であろうと許さない。
      俺が最強、コイツが最速。
      道端の石くれと化すまで、スロットルを開け続けろ!!
      速きこと、これだけが我が存在証明なり。


      #ZX-10R #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #今年の8耐楽しみです

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年04月05日

      52グー!

      「行くよ、ジュリー♪」
      私はフリスビーを持つ手に力を込める!
      「それ~!」
      空高くフリスビーを投げる。
      フリスビーめがけ、愛犬のボーダーコリーのジュリーが弾丸のように走っていく。
      見事にキャッチ。
      「よしよ~し」
      褒めて褒めてと帰ってきたジュリーの頭を撫でる。
      じゃもう1回、私は再び空へとフリスビーを放り投げる。

      「サトミ君から連絡来てたよ」
      ドッグランから帰ってきてシャワーから上がると、夫がソファに寝そべりながら報告してきた。
      「ふーん。何て言ってた?」
      冷蔵庫のお茶を飲みながら尋ねる。
      「ザイゼン先生とアズマ先生しんどいって」
      「ハハハ!」
      思わず吹き出した。そんな私の足にすり寄るジュリーを撫でる。
      「あの2人と仕事とか胃にポリープが出来るわ」
      「間違いない。で、来週末はよろしくって」
      L字のソファに座りながら2人でジュリーに構う。
      「分かった。後で連絡しとく」
      「存分に楽しんどいでぅぅぅ!」
      夫がジュリーに顔をベロベロ舐められる。
      思わず、また吹き出した。

      「アサクラ先輩ー」
      後輩が私の名を呼ぶ。
      「ここが○○で、分からないんですけどどうすれば良いですか?」
      「ああ、ここはね。カテーテルをーーで後は内科の先生に指示を仰いで」
      「ありがとうございます!」
      後輩がカルテを纏めて去っていく。
      「忙しそうだな」
      サトミ君が声をかけてくる。
      「ううん。こんなもんだよ、何か頼み事?」
      仕事をこなしながら喋る。
      「んや。日曜はよろしくって言いに来ただけ」
      じゃあの。っとサトミ君が仕事に戻っていく。
      「頑張ってね。2人に負けちゃイカンよ」
      彼に檄を飛ばす。
      サトミ君はガックリとうなだれて、軽く手のひらを上げた。

      「じゃ。一旦休憩でーす」
      先頭を走る店長が道の脇にバイクを停めて声を上げる。
      続々と走るバイクとライダーが停まっていく。
      「ーーふぅ」
      私も一息をついて、愛車のR100GSを停める。
      今日は待ちに待った近所のショップ開催林道ツーリング。
      緩やかなフラットダートをのんびりと走るツーリングに私は参加していた。
      しかし思いの外しんどく、すっかり汗だくになっていた。
      ゴーグルとヘルメットをミラーに引っかけ、ポカリを体に流し込む。
      「お疲れ」
      サトミ君が涼しい顔で話しかけてくる。
      彼の愛車はKTM1190アドベンチャー、ヘビー級オフロードを振り回してこの様子。
      「元気だね~」
      すごいなぁと思った。
      「食べる?」
      サトミ君が溶けかけの塩飴を差し出してくる
      「うん。いらない」
      「ハハハ!だよね!」
      ベンチに座り体力を回復させる。
      汚れた皆の愛車、談笑するメンバーの様子を眺める。

      「どうも、こんにちは~」
      私と同じ女性に話しかけられる。
      「こんにちは」
      とりあえず会釈。
      「とても綺麗に乗られてますね~」
      彼女が私のGSをキラキラした目で眺める。
      「えへ。どうも」
      愛車を褒められてにやけてしまう。
      「BMWが好きなんですか?」
      「うん、そうなんです。仕事柄、ドイツが好きになりまして……」
      「あなたの愛車は?」
      私は彼女に尋ねる。
      「……あそこのです」
      彼女が恥ずかしそうに列に並ぶバイクを指差す。
      「ーーウソでしょ!」
      私は思わず目を疑った。
      彼女の愛車は、GAS GASの真っ青なパンペーラ250だった。
      「渋いね~!」
      「どうも♪」
      しばしオフロードトークに花を咲かせる。
      「オフロード走ってると違う自分に出会えて楽しいんですよ」
      「分かる分かる!」
      「お、なになに? えらく盛り上がってるじゃない」
      サトミ君が出歯亀してくる。
      「お、来たな太鼓持ち」
      「ちょ!その呼び名やめて」
      「フフフ♪」
      「では皆さん!そろそろ出発しまーす!」
      店長が号令をかける。
      ぞろぞろと準備を始める。
      「ではまた」
      「はいッ」
      「俺も俺も」
      林道へと入っていく。

      オフロード走ってると違う自分に出会えて楽しいんですよ
      彼女の言葉を心の中で反響させる。
      「良し!」
      ヘルメットとゴーグルをしっかりと装着。
      GSもといツーリングメンバーの愛車たちが、ドコドコと雄叫びを上げる。
      土と落ち葉を巻き上げて。
      木漏れ日と森林の香りを全身に感じて。
      「心のオフロード入りまーす」

      知らない私に会いに行こう。


      #R100GS #海刊オートバイ #俺RIDE #私RIDE #東○海平 #親戚の看護師の子が結婚しました

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年04月04日

      42グー!

      日も上がりきらぬ早朝
      「おお、さっむ!」
      俺は両手をこすり合わせながら、相棒のVFRに火を入れる。
      独特なV4サウンドが刻まれ始め、相棒が前方を煌々と照らす。
      「……ハァ」
      軽くストレッチし、パニアケースの中に荷物を詰め込んでいく。
      そしてスマホに目的地を設定。
      「さて行こうか」
      俺は遠くに見える朝焼けを目指し出発した。

      「……マジか」
      俺は空を仰ぐ。
      前後左右に固めるはトラックや普通車。
      あんなに朝早く出たのに、俺は交通渋滞に巻き込まれていた。
      遥か前方で赤いパトランプが光っている。
      どうやら事故らしい。
      「こんな朝っぱらから事故ってんじゃねぇよ、馬○が」
      思わず毒づく。
      肌寒さに耐えられず両手を左右のラジエーターに突っ込む。
      「あったけぇ~、おっと」
      少しだけ渋滞の列が前に進んだ。
      ヨチヨチと前に進む。
      あぁ~しんどい。
      軽く後悔、帰ろうかと思った。
      手持ちぶさたで前の車のリアガラスに映り込むVFRを眺める
      「……うそうそ。そうはいかんよなぁ」
      VFRと会話。
      そして、ほどなくして再び どん詰まりになる。
      一体いつになったらたどり着けるのだろうか、、、

      「イヤッホ~♪」
      緩やかなワインディングをかっ飛ばして行く。
      溜まりに溜まったフラストレーションを絞り出すようにスロットルを回す。
      「ヒョエ~!」
      V-TECが作動。
      ただでさえ官能的なV4サウンドが、より一層に艶やかな音に変わる。
      直後に暴力的な加速にシートから尻がずり落ちそうになる。
      ニーグリップと気持ちを締め直し、前方を確認。
      ウォーミングアップをするように理想のラインをなぞっていく。
      「良いね~!良いよ~!!」
      尻を通して伝わる確かな感触にテンションが上がる。
      今日は調子が良い! 期待大だな!
      スマホのナビを一瞥、俺は目的地を目指し、さらにギアをあげていく、、、

      ンヴァァァァァァァ!
      タコメーターの針は11000!
      V4E/Gの絶叫が轟く!
      みるみる内に速度を上げ、ホームストレートへと進入!
      「ッッッ」
      必死に体をスクリーンに押し込め、スロットルを絞っていく。
      140…160…190…210…230!!
      「つぁ!」
      奇声を上げて1コーナーへ。
      ブレーキで投げ出されそうになりながらも、Gに耐えてバンクさせていく。
      チリチリと身を焦がすような興奮!
      アドレナリンとエンドルフィンがドバドバと出る。

      しかし。
      ーーンババババ!
      E/Gがレブる!
      「ッおぁ!」
      リアが横にずれる!
      しまった! ギアを下げすぎた!
      一瞬で判断、直感と気合いで逆ハンを当て車体を立て直す!
      ーーーー
      何とかハイサイドを回避。
      「………」
      無言でエスケープゾーンに車体を走らせる。
      すっかり牙を抜かれてしまった、、、

      「すぅ~……ふぅ~」
      パドックで地面に腰を下ろして深呼吸。
      早鐘のように脈打つ心臓を落ち着かせる。
      「あっぶねぇ」
      背中に吹き出る冷や汗をタオルで拭う。
      危うくVFRもろともスクラップになるところだった。
      「やっぱ自走で来るのは無理があったなぁ」
      生還した愛車を下から見上げながら呟く。
      足に力が入らず立てなかった。
      まさに生まれたての子鹿だ。

      「危なかったねぇ~」
      近くに居たマーシャルのおじさんが俺に話しかけてくる。
      「どもっす」
      「見事なリカバリーだったよ、マ○ク・マル○スかと思ったわ」
      「ははは…」
      疲れ果てて、苦笑いしか出来ない。
      「まぁ、頑張りな」
      おじさんが俺の肩を揉んでくる。
      ツナギとはいえ、ちょっと痛かった。
      「じゃあの」
      おじさんが満足したのか去っていく。

      「………」
      頑張れねぇ。もうヘロヘロなんだが。
      「クラス下げて、緩く流すか」
      壁に寄りかかりながら立ち上がる。
      「どう思う?」
      凶悪な面構えのVFRに語りかけ、とりあえずパニアの中のモンスターをがぶ飲みする。

      「いいんじゃない?」

      「は?」
      思わず振り返る!
      「………」「………」
      「………」「……ハ!」
      「そうか。お前もそう思うか!」
      よしよぉし~
      VFRのタンクをナデナデしてやる。

      とりあえず飯を食おう
      思えば朝から何も食べてない
      腹が減っては おバンクは出来ぬ
      「ガソリン食わせろ」
      「……5リッターだけな」


      #VFR800 #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #たまにバイクの声が聞こえる……聞こえない?

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年04月03日

      58グー!

      のどかな田園風景。
      ブオォォーン!
      一台のバイクが飛ばして通過していく。
      Uuーッ!Uuーッ!
      私は甲高いサイレンを鳴らし通過していったバイクを追う。
      「ッ!」
      目標のバイクが振り返り、スピードを落とす。
      私はジェスチャーで後に続くように指示。
      「………」
      うなだれたライダーと共に最寄りの安全な側道に入り停車する。
      「どうもぉ」
      出来るだけ柔和に話しかける。
      「ーーども」
      ライダーがため息混じりに答える。
      「急いでたね~」
      「そっすね」
      「……スピード確認してもらって良いかな?」
      「……」
      ライダーが大人しく液晶に表示された速度を確認する。
      「時速63キロ。ここは制限速度50キロね」
      「はい」
      「免許証をお願い出来まーー」
      私の言葉を遮り、ライダーが免許証を突き出す。
      「ーーはい。ご協力ありがとうございます」
      私は必要な書類を用意し、ライダーと手続きを行う。

      「いじってるね~。カワサキかな?」
      「はい」
      「良い音してたね~。でもね~」
      「ええ」
      「春でシーズンだもんね~」
      「そっすね」
      「………」
      ライダーからの露骨な嫌悪と苛立ち。
      一通りのやり取りを終える。
      「では、安全にね」
      切符を渡し、重い足取りのライダーを見送る。
      回転数高めで低音を響かせながらライダーが去っていく。
      業務に戻る。
      「…ぁ」
      ふと振り返る。
      視線の果て、ライダーが切符を投げ捨てるのが見えた。

      「今日の成果です」
      上司に取り締まりのノルマを提出する。
      「おう」
      上司が犠牲者の名簿に目を通す。
      胃がキリキリと痛む。
      「ご苦労様、今日はなかなかやのぅ」
      「ははは、そうですね。では失礼します」
      引きつった笑みを浮かべ、部屋を後にする。
      「ーーハァ」
      ドッと疲れが押し寄せた。

      俺は交通機動隊の白バイ隊員。
      子供の頃に白バイに憧れて、辛い勉強と訓練に耐え、この職に就いた。
      憧れの白バイ隊員。
      しかし現実は蛇蝎の如く嫌われ、怒りと拒絶を日々叩きつけられる。
      「………おっとイカンイカン」
      仕事の相棒、FJR1300Pを洗い忘れていた。
      大急いで車庫に出向き、洗車を始める。
      「この世で最速のバイクって知ってっか?」
      先輩の言葉を思い出す。
      「白バイよ。誰も追い抜けんし逆らえん」
      皮肉の効いた言葉だ。
      「………」
      泡まみれになった相棒の顔をなぞる。
      バイクは皆、ライダーに望まれて作られてくる。
      かけられる金や愛情に違いはあれど、そのバイクはオーナーに愛されてーー。
      「なぁ」
      ライダーに忌み嫌われる君よ。
      「お前は幸せかい?」
      相棒は何も言わない。
      「……ハハハ」
      思わず乾いた笑いが出た。

      そんな矢先。
      「え? バイクの買い換えですか?」
      機動隊の車検で、俺のFJRが落ちた。
      「う~む。ちょっと酷使しすぎたようやのぉ」
      上司がアゴを掻きながら、バツが悪そうにFJRのシートを触る。
      「参ったのぉ~。まぁ、とりあえず、来週からはCBかVFRで……」
      「………」
      書類にペケが書かれた相棒を眺める。
      「コイツ直すんですか?」
      「せやな……。そうしたいのも山々じゃが、ちと予算がなぁ~」
      ーー良し。
      俺の心にバシッと芯が通った。
      「あの!」
      覚悟を言葉にする。
      「コイツ、俺が買っても良いですか?」

      「マジで行くんか?」
      私服姿の上司が俺に尋ねる。
      「ええ。行かせてもらいます」
      俺はグローブをしっかりハメて、払い下げられたFJRに跨がる。
      俺は相棒を買い、一般仕様に組み直した。
      そして貯まっていた有給を用いて、ちょっとした旅に出ようと思った。
      「今回はありがとうございました」
      色々と迷惑をかけた上司に、深々と頭を下げる。
      「まぁ、楽しんできんちゃいや」
      見送りを受けながら、出発する。

      「ーーおっと」
      追い抜いていく車やバイクを見て、思わずサイレンのスイッチを探す。
      「イカンなぁ」
      これがお前の本来の姿なんだよな。
      法定速度を遵守し走っていく、、、
      「お!」
      対向車線のライダーが俺にヤエーをしてくる。
      「ハハハ!」
      満面の笑みを浮かべ、ヤエーを返す。
      「行こうぜ相棒」
      ギアを落として、ちょこっとだけ加速する。
      山を見に行こう
      海を見に行こう
      キャンプを、ツーリングを、カスタムを。

      さあ、新たな世界へ
      この町を飛び出して
      俺をもっと夢中にさせてくれ

      #FJR1300 #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #白馬の王子様

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年04月02日

      74グー!

      「 街の風に引き裂かれ 舞い上った夢くずが~」
      俺はゆるりとカーブを曲がっていく。
      「路上の隅で寒さに震え もみ消されてく~」
      口ずさむのは大好きな尾崎豊。
      「立ち並ぶビルの中 ちっぽけな俺らさ」
      「 のしかかる虚像の中で 心を奪われている Ah~ 」
      横を見れば車やバイクが、どんどん俺を追い抜いて走っていく。

      「みんな速ぇな~」
      狭い日本、そんなに急いで何処へ行くんだろうか……
      「お?」
      目的地の看板が見えた。そのまま進んでいく。
      「ども! どもっす♪ ども~」
      警備案内のスタッフさん達に会釈し会場へ入っていく。
      「おおお!」
      眼前に並ぶはGAG、GAG、GAG。
      そしてスズキにヨシムラにSP武川と夢のようなショップが並んでいた。
      「あ、お~い」
      誰がが俺に手を振る。
      「チャカ!」
      同じギャグ乗りのチャカだった。
      「久しぶりやんか、元気しとったけ?」
      「元気よ。てか、今日はギャタナで来たんやね」
      俺はチャカのカタナルックスのギャグをマジマジと見る。
      「やっと仕上がったんよ♪ 今日はお披露目式」
      チャカの目がキラキラと輝く。
      「なるほどね~」
      とりあえず受付へと行き、入場特典などを受け取る。
      「他には誰か来るんけぇ?」
      お茶を飲みながら尋ねる。
      「タカブーやコージーは来るって言ったがよ」
      「ふ~ん……」
      名前を聞きながら、一抹の寂しさを感じる。
      ギャグが作られて30年以上が経ってしまった。ギャグもライダーもすっかり見なくなってしまったなぁ……
      「お~い」
      メイン会場の方でやたらデカい大男が手を振る。
      「「タカブー!!」」
      俺とチャカは同時に声を上げた。
      「生きとったんかワレ!」
      久しぶりの再会を喜ぶ。
      「コージーは?」
      タカブーが駐車場の隅を指差す。
      「あのバカ……」
      駐車場の隅、コージーが派手に愛車をバラしていた。
      「いやぁ。しかしまた皆で会えるとはなぁ」
      全員で会場のグルメを頬張りながら親睦を深める。
      会えない人のことを考えても仕方がない、今は目の前の旧友との再会を喜ぼう。
      そう思ってーー

      「お~う」

      ふと懐かしい声が聞こえた。
      「おいっす! 待たせたのう、ケン」
      そして俺の名を呼ばれた。
      「「「「チョーさん!」」」」
      全員でチョーさんの名を呼ぶ。
      「主役は遅れてやってくる」
      チョーさんのギャグに全員で爆笑する。

      なるほど
      最高のギャグじゃないか。
      笑いに引きつり、涙が浮かんだ目で空を見る。

      綺麗な青空。
      変な形の白い雲が1つ浮かんでいた。


      #GAG #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #っ^∀^)

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年04月01日

      56グー!

      《お前のファイヤーボルト直ったよ》
      バイク屋のヒロからラインを貰ったのは、仕事終わりの電車の中だった。
      「ふむ……」
      どうしたものか?
      今、乗っている電車はバイク屋とは逆方向に走っている。
      時刻は19時。無論、明日も仕事だ。
      「次は~十二本松~十二本松~」
      電車のアナウンス。
      ああ。覚悟を決める。
      「ーー行くか」
      バイク屋に向かうことにした。
      途中下車し、一度清算を済ませてバイク屋への電車に乗り直す。

      「………」
      さて、愛車に乗るなんて何ヵ月ぶりであろうか?
      ビューエルというメーカーは最早存在していない。
      以前はハーレーで看て貰えたが、今ではそれも怪しくなってきた。
      特殊な構造、独創的な設計、ショートホイルベースとVツインが織り成す唯一無二といえる乗り味。
      これに乗ってはもう他のバイクではーー
      「どうしよう」
      ツーリング先で見事にSプラグが弾け飛び、完全にE/Gがオシャカになって途方にくれていたあの日。
      「大丈夫すかぁ?」
      声を掛けてくれたのがアクティーに乗ったヒロだった。
      「たちまちウチに持っていきましょう」
      ヒロがそう言って慣れた手つきでアクティーの荷台にファイヤーボルトを積み込む。
      見れば車のドアにバイク屋の名前が書かれていた。
      「~♪~♪」
      ヒロが安物のオーディオから流れる洋楽に鼻歌を乗せる。
      「あの、ありがとうございます」
      「いえいえ」
      「俺のビューエル結構めんどくさいと思うんですけど……」
      「ああ、忘れてた。自分もビューエル乗ってんすよ~ま、普段乗りはカブの110ですけどね」
      ヒロがチラッと荷台のファイヤーボルトを見る。
      「見た感じE/Gイワした感じですね。馴染みの店はお持ちで?」
      俺は首を振る。
      「あちゃー、やっぱり。最早部品も怪しくなってきましたしね」
      ヒロの店に到着した。
      愛車を店のジャッキに乗せる。
      覗き込むヒロが眉をひそめた。
      どうやら重症らしい。
      「ちょっと待っててもらえます?」
      ヒロが店の奥の客間に俺を座らせる。そしてぬるい缶コーヒーを渡してきた。
      頼んでもないのに、ファイヤーボルトを分解していく……
      「………」
      何となく店を見渡す。
      狭い店内に並ぶはガチガチに仕上がったKawasaki車2台に、全バラ状態で壁にカウルを釣られた……あれはYAMAHAのR1か?
      そして本棚に並ぶのはレースやツーリングの本ばかり。
      「なるほど。本当にバイクが好きなんだな」
      貰った缶コーヒーを飲み干す。
      「ーーあの!」
      店先で屈み、苦悶の表情を浮かべるヒロに声をかける。
      「俺のビューエルお願いしても良いですか?」

      それからというもの、一々確認の電話が来た。
      プラグが~、バルブが~、燃料ポンプが~
      「分かった! 分かった! もうお前の好きにせぇ!」
      もう何か面倒臭くなりヒロに任せることにした。
      そして今に至る。

      「次は~、四谷口~四谷口~」
      最寄りの駅に着いた。
      まるで急ぐ子供のように、走ってバイク屋へと向かう。
      「うぃ~す」
      店先でタバコをふかすヒロが出迎えてくれた。
      「すまん。遅くなった」
      「良いよ良いよ。さぁ久しぶりの相棒と早ぅ会いんちゃい」
      店の中、照明をスポットライトが如く浴びて俺のファイヤーボルトが鎮座していた。
      はやる気持ちを抑え、安くない治療費を払ってーー
      キュル……ドルンドルン!!
      久しぶりの快音に脳まで痺れる。
      「ありがとう」
      そう言って俺はヘルメットを被り……
      「待て待て」
      ヒロがそう言って店の裏へと消える。
      「ナイツー行こうぜ!」
      そして黒いファイヤーボルトと共に躍り出てきた。
      「はぁ? 俺はもう帰るぞ」
      「固いこと言うなよ~。また壊れるかもしれんだろう?」
      「そん時は金返せ!」
      「ハハハ!」
      しょうがないので走ってやることにした。
      「とりあえずサイゼリア行こうぜ」
      「おいおい。隣町じゃねえか」
      ……まぁいいか。
      たちまち2台でナイツーを始める。
      「ひゃっほう~」
      前を走るヒロが、これ見よがしウィリーをやらかす。
      「うわぁ……」
      ドン引きだ、車間を開ける。でも。
      「おらぁ!」
      仕方がないので、俺もウィリーをしてやることにした。

      俺はビューエルが好きだ。
      これまでもずっと
      そしてこれからもずっと……


      #fireboltXB12R #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #エリック・ビューエルに敬意を表して

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月31日

      54グー!

      「俺、バイク降りようと思うんだ」
      いつもの朝練を済ませ、馴染みの喫茶店での朝食。
      外を見ながらオキツグが呟いた。
      「ーーそうか」
      私は少しコーヒーをすすり頷く。
      オキツグとは80年来からの付き合いだ。
      時代が代わり、愛車が換わり、そして自分達が変わろうとも、バイクに乗り続けてきたバイク仲間。
      その彼がバイクを降りると言う。
      「ーー理由は聞かんのか?」
      オキツグは視線を戻さず尋ねる。
      「聞いて欲しいのか?」
      私も揺れるコーヒーの水面を見つめ問うた。
      「………」「………」
      会話もなく静かになる。
      ふとオキツグに倣って、外を見る。
      朝日に照らされ、オキツグの89NSRと 私の96Γが目映く輝いていた。

      考えてみれば彼も私も齢60に届くほどに生きてきた。
      昨今では高齢者の事故が連日のように糾弾され、免許の返納を声高らかに叫ばれている。
      「私はそんなに老いぼれてねぇ」
      なんて思っていたが、、、
      その矢先、私もヒヤッとする場面があった。
      「敵わんなぁ」
      寄る年波には勝てぬと悟った。
      オキツグもそんなところだろう……

      「さっき思いっきりライン外してたもんなぁ」
      オキツグに野次を飛ばす。
      「うるせぇ。外に膨らんで対向車線に、はみ出たお前に言われたかねぇわい!」
      倍の野次が返ってきた。
      お互いに苦笑。
      「NSRはどうすんだ?」
      「お前にやるよ」
      「要らんわ、あんなチャンガラ。それこそ事故るわ」
      「何を~! お前こそ、あんなガッタレ売り飛ばせ!」
      オキツグと細やかな舌戦を楽しむ。
      「……貰ってはくれんか?」
      オキツグの真剣な眼差し。
      「ああ、分かったよ」
      ーーも ら っ て や る よ。

      「………」
      ガレージに並ぶ3台を眺める。
      2台は数えきれないほどの転倒により ガワはボロボロ。
      スクリーンやメーターは曇り、シートには所々パッチが当てられている。
      「………」
      次いで自分の姿を見る。
      黒ずんだクシタニに、シワシワの手の甲、立ち上がれば立ち眩む頭。
      似たようなもんだな。
      「世話んなったな。また来るぜ」
      丁寧に2台にカバーを被せ、その頭をポンポンと撫でる……そして。

      傍らに並ぶもう1台。
      Ninja150RRをガレージより出す。
      「ッしょ」
      奥のチョークをONし、キックを引き出して跨がる。
      「ーーッそいや!」
      一気に蹴り落とす!
      パリパリパリパリッ!と聞き慣れた音。そして控えめに白煙が立ち上る。
      ヘルメットのアゴひもを閉め直す。
      「いつ降りられるんですか?」
      ふと高齢者教習での若い教官の言葉が脳裏に浮かぶ。
      「そりゃ~」
      狼煙を上げる忍者をしばし眺めて。
      「その時が来るまでよ」
      今日も私は朝練に出かける。

      バイクで人様に迷惑をかけてはならぬ
      イく時は1人で行くべし。
      クる者 去る者を拒むことなかれ

      未だ走る君よ、その道に光あれ


      #Ninja150RR #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #最後の2ストローク

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月28日

      48グー!

      「会長、たまには休んでください」
      部下が机に寄りかかる私にカバンと車の鍵を渡してくる。
      「いや、しかしだな」
      私はやんわりと断り、目の前の資料に目を……
      「最近働きづめだったでしょう? 何でも1人で抱え込むのは悪癖ですよ」
      部下に書類を奪われた。
      「……」
      「先方との予定は私らで承ります。せっかくの春、愛人様方と遊んでらっしゃって下さい」
      「……分かった」

      「むぅ」
      退社して空を見て、思わず日差しに目が眩む。
      貯まっていた仕事を片付けると、久しぶりの休みを貰った。
      「愛人様方ねぇ~」
      言われた通りに自分のガレージに赴く。
      「ふぅむ!」
      そして重たいギロチンのようなシャッターを開ける。
      ガレージの中に光と風が吹き込む。

      「よう。変わらずお前たちは美しいな」
      黒く妖しく艶かしく、静かに佇む2台の愛車に挨拶をする。
      ガレージの壁に掛けていたツナギとヘルメットを身に付ける。
      2台のコンディションを確認。

      まずはHAYABUSA X-1との色事を始める。
      「ーーくぅ」
      Xフォーミュラーのモンスターマシンを振り回す。
      圧倒的性能を存分に堪能!
      跳ね回る針、耳と芯を震わす声、ヨシムラの誇りを再確認する。
      「……ハァ」
      ラジエターファンが回り、ユラユラと陽炎を上げるX-1を納める。
      すっかり汗だくになってしまった。
      自販機のポカリを飲み干す。
      そして傍らのもう1台、TORNADO S-1に跨がる。
      「ーーお待たせ」
      姫が久しぶりのイグニッションに雄叫びを高らかと上げる。
      「ーーッゥ!」
      パワーウェイトレシオ1.0に迫る過激な姫様に胆が冷える。
      コーナーとストレートに息もつけず、神経をタイヤとアクセルコントロールに集中!
      「ぁ」
      途中、登りの左バンクでMAX-Bomberとすれ違う。
      しかしとてもヤエーは出来なかった。

      「ふぅ~」
      2台の愛人との蜜月を済ませ、1人ガレージで煙草を吹かす。
      ジュークボックスを模したスピーカーから音楽を流し、フォールディングチェアに深く体を預けて空を眺める。
      「美しい」
      暮れる空より差す光に見惚れる。
      「あ~マントルが~饒舌に火を吹き上げて~」
      思わず流れる音楽を口ずさむ。

      ヴアァァァン!
      遠くよりマシンの雄叫びが聞こえた。
      先ほどのすれ違ったMAX-Bomberが帰ってきたのかもしれない。
      「さてと」
      私はどちらともなく跨がる。
      「もう一度その声と力を魅せてくれ」

      ヨシムラ
      その名前と誇りを感じて
      私は再び躍り出る

      #ヨシムラ #隼X-1 #トルネードS-1
      #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #白虎野の娘 #平沢進#コンプリートマシンLOVE #XX-BOMBERが欲しい #MAX-Bomberも欲しい

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月28日

      52グー!

      人生の大きな岐路を前に、あの人に会おうと思った。
      「…じゃあ。行ってくるね」
      玄関で見送る母に短く告げる。
      「行ってらっしゃい」
      母がそう言って私のヘルメットを差し出してくる。
      ーーうん。
      ヘルメットを受け取り、愛車のVTRに火を入れる。
      朝日に照らされながら、Vツインのミットを打つようなパルスが刻まれる。
      黒いカウルに朝露が滴る。
      「あの人によろしくね」
      母が目を細め、アンニュイな笑みを浮かべる。
      無言で頷いた。
      ーー行くよ。
      私はタンクを軽く撫で、昇る朝日を目指し出発した。

      私と母は2人で生きてきた。
      父のことが気にならなかった訳では無かったが、女手一つで育ててくれた母を思うと、聞こうとは思わなかった。
      そんな人生の中、高校の悪い先輩のバイクにタンデムした時に転機が訪れた。
      「どや!ホマレ恐いか!? オモロいやろ!」
      先輩の言葉に答えることが出来ない。
      私の中で燃えるようなナニかが、のたうち回っていた。
      「……面白かったです」
      先輩に短く感謝を述べ、満足そうに去っていく先輩を見送る。
      その後、すぐ車校に入った。
      そして免許とバリオスを手に入れて走り回った。

      そんなある日。
      夜走りを終えて、家に帰ると母に呼び止められた。
      「あんたバイク乗ってるの?」
      母の言葉が私に刺さる。
      別にバイクを禁止されてるわけでは無かったが、なぜかとても心が傷んだ。
      「怪我だけはしないでね」
      母の泣きそうな顔と言葉。
      「うん。気を付けます」
      私は頷くことしか出来なかった。

      そして歳を重ね、二十歳を過ぎて人生の大きな岐路に差し掛かり。
      「あなたに話が有るの」
      母が改まって。
      「お父さんについて。どうか聞いてね」
      話をしてくれた。
      初めて自分の父のことを聞いた。
      どんな人だったのか。そして母がどう思っていたのか、今どう思ってるのか。
      「ごめんね……本当にごめんね」
      涙ぐむ母を前にして、私は決心した。
      「…ねえ」
      母の手を握る。
      「お父さんに会いに行ってもいい?」

      私は桜の下、なんとなく頭上の空と桜を眺める。
      父と会った。もっと言えば、父の経営するカフェに行った。
      「あの…えっと。VTR1000Fカッコいいね」
      引きつった笑みを浮かべた父。
      「ありがとうございます。そちらのSPもカッコいいですね」
      私は心臓が飛び出しそうになる緊張と、上擦る声を隠す為に憮然と答える
      「…ありがとう」
      モソモソとコーヒーを煎れる、カウンターの中の父を見つめる。
      ーーよし。
      覚悟を決める。
      「……待ってます。ご馳走さまでした」
      私は父を呼び出した。

      そして。
      「じゃ話を聞こうか」
      桜の下、父が苦笑を浮かべて私を見つめる。
      「来てもらってありがとうございます。」
      私は頭を下げる。
      「初めまして、私は魚谷ホマレと言います。……そして」
      「坂本ショウマさん。私はあなたの娘です」
      私は説明をすっ飛ばし本題を述べる。
      「ーーやっぱりか」
      父…ショウマさんが遠くを見つめる。
      私は一通の手紙をショウマさんに差し出す。
      「私、結婚するんです」
      「……は?」
      「結婚式に来てください」
      「ーーッえ!?」
      ショウマさんが目に見えて取り乱す。
      無理もない。
      いきなり娘が現れて、突然父となり、あまつさえ結婚式に来いと言うのだ。
      招待状を前にモニョモニョと口ごもる。
      「私はあなたを許しません」
      私は正直な言葉を吐露する。
      「………」
      ショウマさんが私の言葉にハッと顔を上げ、そして唇を噛む。
      「でも、もし貴方が私の父親として」
      ーー母の愛した男性として
      「来てくれるのなら」
      ーー頑張ったお母さんに会ってくれるのなら
      「あなたを許そうと思います」

      「……」
      ショウマさんが目を伏せる。
      俺が? 今さら? どの面をさげて?
      そんな葛藤が見てとれた。
      「だめ…ですか?」
      「う~ん、、、」
      ショウマさんが口を手で覆い、深く深く思案する。
      そんな様子を見てーー
      ダメなの? 来てくれないの? 私は? お母さんは?
      と、思わず目頭が熱くなって。
      「ーーねえ」
      思わずうつむく。
      「一緒に行こうよ お父さん」
      視界がゆがむ。
      「家族……なんだよ?」
      私はショウマさん……お父さんに震えながら招待状をーー

      「ーー分かった」
      お父さんが招待状を受け取った。
      「ほら。涙を拭きなさい」
      そしてハンカチで私の目尻を優しく撫でる。
      「ホント。そういうところはホノカそっくりだなぁ~。そうやって彼氏君も落としたのかい?」
      「……ヒミツ」
      ふと私とお父さんの間に風が吹き、散っていた花びらが舞い上がる。
      「なぁ、、、その、ホマレ?」
      お父さんが おっかなびっくりに私の名を呼ぶ。
      「ちょっと走らないかい? お前も分かるかもしれないが、バイクに乗ると言葉を交わさなくても気持ちが伝わると思うんだ」
      「俺の走りで気持ちをお前に伝えたい。ーーだから」
      お前の気持ちを俺にぶつけてくれないか?
      「分かった」
      私はぐちゃぐちゃになったメイクをジャケットの袖で拭う。
      「私の気持ちを伝えるね」
      「おう! どんと来い」
      「私速いよ~♪」
      お父さんと今までの時間を取り戻すように語り合う。

      ~~~~
      「ちなみに、お前のお婿さん。俺の義理の息子はバイクに乗ってるのかい?」
      「うん。私よりも速いよ♪」
      「なにぃ! それは聞き捨てならんな~!」
      「相棒は何だ! 1000トリか? まさかR1か?」
      「H2~」

      桜の名所に親子のエキゾーストノートが響き渡る。
      父が前に、娘が前に。
      舞うは花びら、バージンロード。
      2台のVTRがラインをクロスさせ走る。
      今やっと。その手に然りと勝利を掴んで……


      #VTR1000F #海刊オートバイ #俺RIDE #私RIDE #東○海平 #(ヽ´ω`)

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月25日

      50グー!

      「ガアアアアアァァァァ!」
      振動と爆音と風切り音に気が狂いそうになる
      スロットルはフルスロットル、スピードメーターは頭打ち、回転数は15000に届きかけ
      ……なのに。
      遥か前方でテールランプがチラッと光る。
      「あのバカ! 何キロ出してんだ!」
      まるで追い付けなかった。
      「ンンンン」
      最早、言葉とも言えぬ声を出して身を屈めて、一心不乱に前に進んでいく。

      20歳間近にしてカタナ250を買った。
      曰く小刀。
      兄貴のカタナ1100に影響されたのもあったが、カタナというモノに一目惚れした。
      自分よりも一回り年上のバイクに乗る。
      ーーそんな矢先に。

      「カタナのイベント有るけど行くか?」
      兄貴からの誘い。
      「良いね! 行こうか」
      軽い気持ちで、その誘いに乗った。
      福岡から静岡までのツーリング。
      いつもヘラヘラしてる兄貴、アイツが行けるなら俺も大丈夫だろう……
      そう思っていた。

      が。
      「アアアア! 恐ェ! 壊れる!壊れる!」
      現実は甘くなかった。
      兄貴とカタナ1100に付いていけない。
      圧倒的な技量と排気量の差を思い知らされた。
      益田に付く頃には体力も気力も底を尽きかけていた。
      「おお、お疲れ。今日はここで休むか」
      俺とは引き換え、兄貴の元気なこって……
      宿で風呂と食事を済ませ、泥のように眠りにつく。

      そして翌日。
      心の大半を後悔に蝕まれながらも意地と気合いで静岡を目指し出発。
      「ーーー」
      もはや何も喋らず、只々走り続ける。
      「~♪~♪」
      たまに蛇行運転を行う兄貴を見ながら急速にカタナ250に体を慣らしていく。
      その甲斐も有ってか、今日は舞鶴までたどり着くことが出来た。
      「はぁ~」「ふぅ~」
      兄弟で宿の湯船に浸かり、疲れを吐き出す。
      「だいぶ走ったのォ」
      「せやね~」
      「まさかマジで付いてくるとは思わんかったでよ」
      「兄貴こそ、ちったぁ手加減してくれると思ってたがの」
      「ハハハハハ!」
      「笑い事じゃねぇわ、バカ」
      ふと空を眺める。
      「明日は晴れるらしいで」
      「マジか、最高やな」
      そんな会話をし、今日も泥のように眠りに付く。

      そして当日。
      「っしゃあ! 安全に行くぞ!」
      「おう!」
      静岡に向けて出発する。
      「~♪」
      ご機嫌な兄貴を見て
      「~♪」
      俺もご機嫌な運転。
      「お、カタナ400じゃ」
      ミラーを見れば、後方にカタナ400が付いてきていた。
      「おおおお!」
      銀に黒に赤に青にカーボン。
      刀に脇差しに短刀、小刀、カッターナイフに彫刻刀。
      目的に近付くにつれ、どんどんカタナが集まってくる。

      ブーン! ブォーン!
      スリ抜いていくカタナにヤエーを飛ばす
      ーVーーV
      たくさんのヤエーが返ってきた。
      「アハッ♪」
      思わず笑みがこぼれた。
      目的地が目に写る!
      「来たぜ浜松! 待ってろよ~」
      ギアを落とし一気にアクセル!
      兄貴や周囲のカタナをぶち抜く。

      「俺が一番乗り!」
      諸手を上げて、のぼり旗を通過して行く。
      気分はまさにグランプリライダー!

      刄 KATANA Meeting2020
      俺はカタナ乗り
      今再び鬨を上げる!


      #GSX-R250SKATANA #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #カタナ250 #カタナミーティング

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月21日

      41グー!

      ラジオを聞きながらの朝の仕込み。
      前日に仕入れた食材を整理し、開店前の準備を進めていく。
      「今日はミネストローネにしよう」
      大量に買ったトマトを見ながら1人呟く。
      「~♪~♪」
      ラジオのトークと音楽を聞きながら鼻歌を乗せる。
      窓から差し込む日だまり、コトコトと音を立てる鍋、傍らのデミタスコーヒー。
      ラジオが11時の時報を伝える。
      「ーーさてと」
      俺はそれを聞き、店の入り口に移動。
      店先のVTR1000SP2のカバーを引っぺがす。
      黒い車体に太陽が反射する。
      「うん、良き良き」
      入口の看板をひっくり返す。
      Vistro Vonaparte ouvert
      さぁ、今日も開店だ。

      店の外にバイクが停まる。
      「うぃーす。マスターおはよう」
      常連のケイゴがメットを腕に提げ店に入ってくる。
      「いらっしゃい。ご注文は?」
      「クロックムッシュとブレンドで」
      「あいよ~」
      注文のメニューを作っていく。
      「スープ飲むかい?」
      「良いね。今日は何出してくれんの?」
      「ミネストローネ」
      「おお良いじゃん! 貰うわ」
      温めていたスープを出す。
      「うまっ!」
      「だろう! 新鮮なトマトが手に入ったんよ」
      料理を進めていく。
      「今日はバイク出してるんだね」
      ケイゴが店先のVTRを見ながら尋ねる。
      「おう。今日は昼の休憩時間に走ろうと思ってな」
      「へぇ~」
      窓の外を眺めるケイゴにクロックムッシュとコーヒーを出す。
      「ウハッ! やっぱマスターのヤツは美味いね!」
      ケイゴの頬張る姿を見て、俺も外に視線を移す。
      また1台、店のバイクが停まりライダーが店に入ってくる。
      「いらっしゃいま……」
      俺は喋っていて言葉に詰まった。
      そこに居たのはーー

      俺はその昔、ロードレースに出ていた。
      幼い頃からバイクに乗り、一進一退の勝負を重ねて1歩ずつ上へと昇格していく。
      血反吐を吐くほどに努力し、ようやく年間タイトルに手が届くという所まで行った。
      スポンサーも付いた、安定とは言えないが大きな金が手に入るようになった、そして当時付き合っていた彼女ともゴールイン間近
      ただ、ひたすらに勝利を求めて闘ってきて、ようやく本当の意味での勝利を掴みかけていた……
      そんな時にーー
      「うわぁーッ!多重クラッシュだ!23番チーム○○! サカモトォ!」
      俺はコケた。
      それも周りの複数台を巻き込んでの派手なハイサイド。
      俺は錐揉みになったバイクの下敷きになった。
      「……あぁ」
      気付けば病院のベッドの上、選手生命の断絶を余儀なくされる程の大怪我だった。
      だが俺は諦めなかった。
      また血反吐を吐くような努力と、身を削るようなリハビリをした。
      「やめてよ!」
      見かねた彼女の言葉。
      そんな彼女をはね除けて、俺はまた ひたすらに勝利を求めた。
      もう一度あの場所へ!
      「お前は見てろ! 俺は立ち上がる!」
      何より彼女の為……と。
      全てを自分すらも犠牲にして努力。
      そしてそんな生活を数年続けて。
      「23番サカモト、今チェッカーフラグ!」
      俺はもう一度、レースに帰ってきていた。
      昔日の身体能力を取り戻し、再び勝利をこの手に掴もうとしかけていた。
      これでようやく。これでやっと…彼女に……
      俺は彼女の待つ自宅へと帰る。
      「………」
      家には誰も居なかった。

      《ごめんなさい。もう疲れちゃった》

      有ったのは書き置き。
      「ははは」
      思わず渇いた笑いが出た。
      全てを犠牲にした勝利、彼女すらも犠牲にしての勝利だった。

      俺はタイトルを獲得した。
      喉を掻き毟るほどに欲していたソレを手にした
      「ーーー」
      手の中のソレはーー
      俺はそれを最後にロードレースを降りた。
      そして地元に戻り、知り合いの伝で飲食業を始めた。
      多少の苦労は有ったが、元チャンピオンライダーという肩書きは大きく、程なくして安定した。
      後は たまに舞い込んでくる新型バイクのインプレッションで生計を立てる。
      波乱万丈ではあったが、終わってみれば順風満帆。
      もはや勝利も何も無い。

      「ホノカ……」
      俺は店に入ってきた女の子を前に、思わずその名を呼ぶ。
      昔日の彼女が居たのだ。
      「クロックマダム、カフェラテ」
      そんな俺を尻目に、彼女がカウンター座り憮然とオーダーを投げつける。
      「ーーあ、はい。少々お待ちを」
      混乱する頭。
      思わずケイゴに目配せ。
      「じゃご馳走さま」
      ケイゴが状況を察し、お代を置いて出ていく。
      ーーマジか。
      「………」「………」
      パンと目玉焼きを焼く傍ら、カウンターの彼女を見る。
      アンニュイな表情、その瞳は店の外のバイクを見ていた。
      俺の黒いVTR1000SP2の横に並ぶは
      黒いVTR1000F。
      「カフェラテです」
      彼女にカフェラテを出す
      「…どうも」
      彼女の目は外に向いたまま。
      どういうことだ。
      彼女が出ていったのはもう20年近く前、だとすれば娘か?
      「まずいまずい」
      とりあえずクロックマダムを作ることに専念する。
      そして。
      「お待たせしました」
      クロックマダムを彼女に出す。
      俺も彼女も何も喋らない。
      レース前の静けさにも似た、なんともむず痒い感覚。
      久しぶりにソレを感じた。
      「あの…えっと。VTR1000Fカッコいいね」
      引きつった笑みを浮かべ彼女に話しかける。
      「ありがとうございます。そちらのSPもカッコいいですね」
      「…ありがとう」
      会話が途絶える。
      気まずさに、とりあえず店のグラスを磨く。
      20歳前半の女の子に、40過ぎのおっさんがオドオドしている。
      なんとも情けない話だ。
      「あの」
      彼女が私に視線を移した。
      「昼休み、予定有りますか?」
      彼女が俺に尋ねる。
      「んあぁ、これといって無いよ?」
      思わず声が上ずる。
      「……待ってます。ご馳走さまでした」
      彼女がお代と共に写真を置いて出ていく。
      俺は呆気にとられ、去っていく彼女を眺めてしまう。
      彼女がVTRに跨がり、ミットを叩くようなパルスを響かせ走り去っていく。

      「……て、違う!」
      置かれたお金と、写真を確認。
      そこには桜が写っていた。
      「マジか」
      桜。その桜は俺が昔日にデートで何度も眺めていたモノ。
      昼休みなど待ってられない!
      俺は店の看板をひっくり返し、SP2に火を入れる。
      荒ぶるように怒れるVツインサウンドが雄叫びを上げる!
      「ワクワクするじゃねぇの」
      E/Gの暖気と共に俺の心にも熱が入る。

      勝利を求めた
      ただソレのみを願った
      その果てに俺は今
      勝利は目前
      あとは進むだけだ


      #VTR1000SP #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #Vツインにお熱

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月19日

      41グー!

      夜も更け、もう店を閉めようかというところで電話が鳴った。
      「はい。忠夫飯店でございます」
      「もしもし! 俺ばってんが!」
      早口でまくし立てる口調で名乗られる。
      「あぁ、ヒデオさん。どうかされました?」
      常連のヒデオさんからだった。
      「まだ店やっとんね?」
      「すいません……。もう閉めようかと…」
      「なら良かった! ちょっと頼みが有っての。頼まれてくれんかね?」
      「……はぁ」
      とりあえずヒデオさんの話を聞く。
      さては酔い潰れたか? もしくは飯の配達か……
      「人がね倒れとっちゃん」
      「え?」
      「今から言う場所に来てくれんの」
      「…はい」
      思ったよりも深刻だった。

      愛車のドラスタ250に乗り、現場へ向かう。
      「人が倒れてるねぇ~」
      ヒデオさんはお節介焼きだ。
      困ってる人を放っておけない人、家には拾った犬や猫まで居る。
      そんな人が、呑気に電話してくるくらいだ。
      最悪の状況ではないんだろう……
      「しっかし温かくなったな」
      さすが4月ともなれば、深夜でも寒くない。
      片側2車線の国道2号を走って行く。
      途中、右車線を爆音を響かせ数台が通過していった。
      青、赤、銀。
      一瞬だけカウルが見えて、テールランプの残光と消える。
      「速いなぁ…」
      元気だねぇ~。
      そうこうしてるうちに到着。

      「おーい。こっちこっち」
      広々とした公園の駐車場にヒデオさんと、バイクの傍らグッタリと腰かけるライダーの兄ちゃんが居た。
      「すまんすまん。兄ちゃんが1人でキャンプしてて、心配でのぉ」
      1人喋るヒデオさん。
      「飯も食っとらんち言うけんね、放っとけんやろ」
      傍らの兄ちゃんを見ると、街路灯の光も手伝って青ざめて見えた。
      「………」
      当の兄ちゃんはなにも言わない。
      くっきりと眉間に寄ったシワ。
      恐らくは私達を警戒しているんだろう。
      無理もない。何せ夜営してたら、いきなりうるさいオッサンに絡まれ、あげく仲間まで呼ばれてるのだから……
      「……旅の方ですか?」
      私の問いに兄ちゃんが頷く。
      「うち、飯屋やってるんですよ。食べに来ませんか?」
      ヒデオさんの勢いに乗っかり提案。
      兄ちゃんが露骨に嫌そうな顔になる。
      「これも旅。旅は道連れ、世は情けですよ」
      「そうばい、そうばい。タダオの飯は美味かぞぉ~」
      ヒデオさんも畳み掛ける。

      「分かりました」

      兄ちゃんが折れた。
      「では私のドラスタに付いてきて下さい」
      ヒデオさんに別れを言って、兄ちゃんのエストレヤと店を目指す。
      途中、はぐれてないかミラーで確認。
      その姿にはドッと疲れが来ているのが見えた。
      「こりゃ腕によりを掛けなきゃね」
      店の前にドラスタとエストレヤを停める。
      「どうぞ~。いらっしゃいませ~」
      入口の鍵を開け、店の照明を点ける。

      「……すいません」
      兄ちゃんの申し訳無さそうな声。
      とりあえずテレビを垂れ流す。
      準備の傍ら見れば、探偵ナイトス○ープが放送されていた。
      「………」「………」
      吹き抜けの厨房で料理を作っていく。
      何を作るかは決めていた。
      「……この町に来る途中、若いライダーと会ったんですよ」
      兄ちゃんがポツリと喋る。
      「……そうですか」
      兄ちゃんの話を相づちを打ちながら聞く。
      旅での出会い
      旅のきっかけ
      そして今の現状
      兄ちゃんの漠然とした澱のようなモノを欠片ながら享受する。
      「そうなんですね。じゃ」
      一通り話が進み、またナイト○クープもCMに入った所で、私は出来上がった料理を出した。
      「鶏カシューナッツ炒めです。ご賞味あれ」
      大皿に溢れるほどに盛り付けた渾身の料理。
      「……頂きます」
      兄ちゃんの目に少しだけ光が見えた。
      スプーンで口に運んだのを確認し、次の料理に取りかかる。
      「ーーうめぇ」
      こぼれる言葉。その言葉に心が温かくなる!
      兄ちゃんがスプーンを進めていく。
      まずい! このままでは間に合わん!
      大急ぎで鉄鍋を振るう。
      「はい、チャーハン!」
      こんもりと盛ったチャーハンを追加。
      「うめぇ」
      兄ちゃんがハフハフと息を荒立てながらも感想を言ってくれた。
      「ふふふ」
      私は もはや笑みを隠せなかった。
      これだ。これなんだ!これこそが私の幸せ!
      私は片付けの傍ら、頬張る兄ちゃんを眺めた。

      しばらくして。
      「……ふぅ。ごちそうさまでした」
      兄ちゃんが手を合わせる。
      「お粗末さまでした」
      「ホント美味しかったです」
      「ふふふ、そうですか。お口に合って何よりです」
      私は満ち足りた気持ちで皿を片付ける。
      兄ちゃんが何を言うでもなく、テレビを眺める。
      「~~」「~~」
      テレビの音と洗い物の音が場を支配する。
      「ーーあの」
      私は兄ちゃんに話しかける。
      「さっきの旅の話ですけど……」
      ーーそう断って。
      「私の考えを言っても良いですか?」
      尋ねる。兄ちゃんは頷いてくれた。

      「私は貴方を知りません。……でもね。1つだけ貴方のことが分かります」
      「それはバイクに乗っているということ」
      私の言葉を兄ちゃんが静かに聞く。
      「今の時代、バイクに乗らなくてもどこでも行けます」
      「車、電車、飛行機に船。より安全に移動、目的をこなせる手段は幾らでもあります」
      「Y○UTUBEを見ればアマゾンの奥地でも富士山の山頂でも時速300キロのクレイジーな世界でも見ることが出来る」
      ーーでもーーそれでも。
      「貴方と私はバイクに乗っている」
      「同じセカイを目と肌と耳で感じている。これって素晴らしいことじゃありませんか?」
      兄ちゃんは何も喋らない。
      「生きていると色々なモノに縛られます」
      「最早自分が何のために生きているのかと 道標 を見失うことだって有る」
      「そんな時にするのが、旅なんじゃないですかね?」
      「絡まる有象無象から己を解き放ち、自分の居場所、自分の行く先を、道標を確認する」
      ーーそれが旅。

      ……それが見つからなかったら?
      兄ちゃんの真っ直ぐな瞳。

      ーーその時は。
      「周りを見てください。貴方の周りには私達(ライダー)が居ますよ」
      「知ってますか? ライダーのメットが簡単に脱げるのは相手と喋る為なんですよ」
      兄ちゃんにパインジュースを差し出す。
      「バイクも人も1人で立ち続けることは出来ません。もし見失って倒れそうな時は」
      おまけで冷蔵庫から胡麻団子も出す。
      「支えますよ。時代も地位も全てを飛び越えてね」
      バイクに心底惚れてるバカ同士仲良くしましょうや。

      「…………なるほど」
      兄ちゃんが胡麻団子を食べる。
      「すいません。長々と自分語りしてしまって」
      まさしく汗顔の至り。支離滅裂なことを喋ったかもしれない。
      「……ん?」
      ドコドコと聞きなれた音が聞こえた。
      店の外が明るく照らされる。
      そして。
      「おーい。まだやっとるかーい」
      ヒデオさんがやって来た。
      「酒も持ってきたぞぉ! 喜多屋ぞ喜多屋!」
      「えぇ~。酒飲んでどうやって帰るんですかぁ?」
      「お前ん家泊まりゃ良かろうもんッ! あ、兄ちゃんもの。今日は帰さんぞ! 面白か話ば聞かせんかッ!」
      ヒデオさんが兄ちゃんの横に陣取る。
      「んもう~」
      絡まれる兄ちゃんを見る。
      「これで貴方も私も~♪な~か~ま~♪」

      気付けば眉間のシワは消え失せてーー

      #DragStar250 #道標 #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #こらぼれーしょん

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月15日

      49グー!

      西暦2040年
      日本 広島 宮島SA
      「ホントに良いんだな?」
      男が目の前の青年に尋ねる。
      「来いよ、そのニヤけ面を引きつらせてやる」
      青年は毅然として答えた。
      爆笑が木霊する。
      「結構結構! 了解したよ」
      男が傍らに有ったマクラーレン・P1 GTRに乗り込む。
      それを見て、青年は傍らに有ったNinja H2に跨がる。
      P1とH2のE/Gに火が灯り、双方の爆音が奏でられる。
      「生きて帰れると良いな」
      男が下卑た笑いを浮かべる。
      「はんッ!おっさんこそ車両保険の準備は良いのかよ?」
      青年も口角を吊り上げる。
      車の窓が閉められる、ヘルメットのシールドが下げられる。
      そして、けたたましいブリッピング!
      カウントダウンが始まる
      5…4…3…2…1…
      0!「「ッ!」」
      凄まじいスキール音を響かせ、それは始まった!

      この始まりは後輩の事故だった。
      病院に担ぎ込まれたという後輩に会いに行く。
      「すいません……負けました」
      包帯でミイラのようになった後輩が申し訳なさそうに喋る。
      聞けばバイパスをZX-25Rで走っていたところ、4輪車に煽られたらしい。
      後輩も意地になりスピードを上げたが、、、
      相手を振り切ることが出来ずに。
      「オーバースピードで壁に……か」
      俺は後輩の言葉を継ぐ。
      「ーーいえ」
      後輩が首を振る。
      その時、ふと彼の左腕のアザに気付く。
      「ーーまさか!」
      当てられたのか!?
      「……すいません」
      苦虫を噛んだような顔の後輩。
      そんな彼の肩に手を置く。
      「お前が謝る必要なんかねぇよ。……心配すんな」
      俺は後輩に声をかけ、踵を返し、病室を後にする。

      あの後輩の様子。
      おそらく本当に……
      「ーーッ!」
      煮え滾る感情が渦巻く。
      後輩の言葉を元に、件の4輪車を探すことにした。

      そして捜索を開始して数日が経った頃、宮島SAに居た友達から連絡が入った。
      「居たぜ、あの下品なオレンジの車体。間違いねぇ」
      その言葉を聞き、現場へ急ぐ。
      そして見つけた。
      旧車のたむろする集団の中、偉そうに喋るそいつが居た。
      「おい。おっさん」
      俺の言葉に おっさんが振り返る。
      「あんたの車のこれについて見覚え無い?」
      俺はマクラーレン・F1の右の黒い擦り痕を触る。
      「ああん? あぁ。ちっと前にとれぇチャリにぶつけたかもな?」
      その言葉に友達がイキり立つ!
      俺はそれを制止した。そして。
      「なぁおっさん、俺と勝負しようぜ?」
      おっさんに提案する。
      勿論、相手はとり合わない。
      だからこそ
      「あんたが買ったら、これやるよ」
      おっさんに動画を見せる。
      そこにはしっかりと悪意を持ってF1が25Rにぶつかる映像が……

      「やるな、兄ちゃん。良いぜ、やってやるよ」
      おっさんが了解する。
      「明日の10時に、またここで」
      俺は踵を返す。
      これ以上喋っていると俺が殴りかかりそうだった。
      「ゴールは!?」
      おっさんの苛立った声。しばし考える。
      「福岡の古賀SAだ。ここから250キロ。丁度良いだろう!」
      俺は振り返らず答えた。
      後はアイツを叩き潰すだけだ。

      翌日。
      本番に向け準備をし、SAに向かう。
      おっさんは別の車で来ていた。
      あっちもあっちで俺を完膚無きまでに叩き潰す気らしい。
      そして、冒頭へ……。

      人工筋肉を仕込んだRSタイチのレーシングスーツで、250馬力を超えるH2を操っていく!
      ヘルメットのSHOEI X-20のシールドに浮かぶ速度は280キロ越え!
      最早何も聞こえない!
      高速道路を合間を縫って駆け抜けていく!
      P1は はるか後方の点へと化していた……しかし。
      「油断は出来ねぇ」
      P1 GTRは1000馬力、様々なテクノロジーを詰め込まれたマシン。
      そもそも、アイツは後輩を愛車諸共に壊しているのだ!
      スロットルを緩めず走っていく!!
      シールドにアラートが表示される。
      ガス欠が近いようだった。
      大急ぎで最寄りの美東SAへ入る!
      「速く!早く!」
      タンクに入るガソリンを見ながら焦る。
      そこへ。
      「ーーあっ もう来やがったか」
      爆音を鳴らしながらP1が通過していった。
      ーーダメだ! 待てない!
      俺は給油を切り上げ出発する。
      10L足らず、これだけ有れば十分だ!
      再び高速へと合流。

      ここから先は中国自動車道。
      今までの山陽自動車道とは異なり、キツいテクニカルカーブの連続。
      スーツのアシストを最大限に利用し、サーキット顔負けのスプーンカーブをパス!
      暴れるH2をねじ伏せる!
      「ーー!」
      前方にP1のテールを捉える。
      ヤツもカーブに苦戦しているようだった。
      メーターに写る数字は180キロオーバー!
      いくら機械が進化しようとも人の力では、どうすることも出来ぬ領域。
      しかし!
      徐々にP1が離れていく…
      おそらくはKERS!
      そして僅かなストレートでDRSを使っているのだろう。
      「ーー○ソが!」
      思わず叫ぶ!
      自分の中の雑念を振り払う。
      勝つんだ! 後輩の苦しみはこんなもんじゃねぇ! 悔しくないんかッ!
      シールドに表示される心拍数が240を超える!
      アドレナリンに脳が溺れる。

      関門海峡に到達!
      吹き荒ぶ橋の上、ギアを落としスロットルを回す!
      一瞬車体が浮く、そして凄まじい加速に車体が暴れる。
      240…260…280…---
      みるみる内にP1のテールに迫る!
      そしてそのままP1を抜きーー

      「ダメだ!」
      沸騰しかけた頭を冷やす。
      橋の向こうに見えるは1キロにも及ぶトンネル。
      ここで並んでみろ、そのまま当てられ俺は挽き肉となる。
      「はぁーはぁー」
      空気を貪る。
      そして福岡に突入。
      残り70キロ。
      千切れかけた緊張を繋ぎ直し、数々のカーブとトンネルをパスしていく……
      見えるテールランプの煌めきに注意。
      そして。

      「来た!」
      車線が3つに増えた!
      最早あとなど無い!
      一気にラストスパートをかける!
      しかし。
      ブオオオォォォンッ!
      P1も加速していく。
      俺は車線をフルに使い、突破の糸口を探す!
      一瞬、カーブでヤツのラインが乱れた。
      P1が左に膨らんでいく。
      おそらくDRSを切るのが遅れたのだろう。

      「!!!」
      俺はそれを見逃さずP1の横をぶち抜いて行く!
      「ッ」
      おっさんがハンドルをこちらに切る!
      だが遅い、そしてそれは余りにも致命的!
      キュルキュルキュルキュルキュルキュルキュルキュル!
      凄まじいスキール音を響かせてP1がベ○ブレードよろしくスピンを始める!
      壁にぶつかり、おっさんもといP1が破片を撒き散らし大破していく。
      「勝った」
      俺はそれをミラーで確認し、アクセルを……
      「……」
      アクセルを……
      俺は路肩にH2を停める。
      そして。

      「っしょ。おい、おっさん大丈夫かよ?」
      鉄屑と化したモノから、おっさんを引きずり出す。
      「……なんで」
      虚ろな目でおっさんが俺に尋ねる。
      「あん? あぁそりゃ……」
      警察や救急隊に電話をしながら答える。

      「とれぇミニカーがぶつかったからぁ?」
      救急隊とのやり取りを終え、H2へと戻る。
      後ろから何かが聞こえた気がしたが気にしない。
      俺は早く古賀SAに行かねばならないんだ!

      法定速度を順守し、走っていく。
      古賀SAが見えてきた。
      「あぁ、腹が減った」
      そうだ、後輩にラーメンでも買って帰ってやろう……
      駐輪スペースにH2を停める。
      「ありがとな」
      ぽんぽんっとH2のタンクを撫でる。

      我はNinja H2 最強の忍者なり
      我はNinja H2乗り 最強のライダーなり


      #NinjaH2 #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #ぜ~んぶフィクションです

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月15日

      48グー!

      凄まじい速さで景色が流れていく。
      目の前のタコメーターは真上を差し、E/Gとマフラーが叫び声を上げる。
      コーナーが近付く。
      「ッ」
      ギアを踏み下ろし、跳ね回る針を一瞥、そして。
      「ーーぬぅ」
      膝バンクセンサーを擦りながらコーナーを脱出
      再びスロットルを開け、Vツインの野蛮で乾いたエキゾーストを響かせて加速していく……

      「…………」
      道の駅のベンチに座り、コーヒーを飲む。
      目の前には真っ赤なオートバイ。
      ドゥカティ999R
      一目惚れで買った俺の愛車。
      「~!」「ー♪」「~」
      忙しく駐輪場のバイクたちが入れ替わっていく。
      それらと999を何となく見比べる。
      バイクの優劣に、排気量、形、気頭数は関係無い
      俺の持論だ。
      ーーしかし、それでもーー

      「すいません、999の方ですか?」
      何て考えてたら話しかけられた。
      「ーーはい。そうですが」
      答えながら視線を移す。
      「良いですよね~ 999」
      紅白のレーシングスーツを身につけた男が立っていた。
      「どうも」
      「やっぱLツインは~ トレリスフレームの軸方向に対しての剛性が~」
      男が饒舌に口舌を垂れる。
      「ーーー」
      黙って聞く。
      ーーそして、一通り聞いたところで訪ねる。
      「あの、愛車は何に乗ってんで?」
      「あ、自分あそこのパニガーレV4乗ってます!」
      男が待ってましたと言わんばかりに、自分の愛車を見てくれと指差す。
      見れば真紅のパニガーレV4が佇んでいた。
      「ーーカッコいいですね」
      率直に感想を伝えた。
      「ありがとうございます! やっぱドゥカティって~ 昔は916乗ってまして~」
      男のトークがさらに加速する。
      なるほど。
      筋金入りのドゥカティスタのようだ……

      「長々とすいません! ありがとうございました!では良い旅を! 」
      男が笑顔で去っていく。
      「お気をつけて……」
      俺はそれを笑って見送った。
      ーーはぁ。
      静かになり、手元のすっかり冷えたコーヒーを胃に流し込む。
      冷たいモノが体の中に入り思わず身震い。

      「おじさん かめんらいだー?」
      突然の素っ頓狂な声。
      見れば、可愛いお坊っちゃんが俺を見上げていた。
      「あの赤いの、あくせるのやつ。おじさんあくせるなのぉ?」
      「はぁ? え?」
      アクセル?
      グーグルで坊っちゃんの言葉を検索……
      あぁ、なるほどね。

      坊っちゃんに目線を合わせる。
      「そうだよ。おじさん仮面ライダーなんだ」
      「やったー!」
      坊っちゃんが跳び跳ねる。
      「さぁ、そろそろお母さんの所に帰りなさい。」
      「えぇ~ でもぉ」
      坊っちゃんが名残惜しそうにキョロキョロ。
      「俺は今からドーパントと戦わなければならない。君がお母さんを守るんだ」
      坊っちゃんの頭を撫でる。
      「うん! 分かった!」
      坊っちゃんが道の駅の方へ走っていく。
      ーーさて。

      「俺も帰るか」
      コーヒーを片付け、999に跨がる。
      腹の下から999の雄叫びが上がる。
      そして、ゆっくりと道の駅を出ていく……
      ふと見れば。
      「ばいばいー!」
      あの坊っちゃんが両親と手をつなぎながら、こちらに手を振っていた。
      俺も手を振り返す。

      アクセルッ!!
      ヘルメットのシールドを閉じる!
      ブオォォンッ! ブオォォンッ!
      耳をつんざく雄叫び!
      俺は仮面ライダーアクセル!
      「振り切るぜッ!」
      アクセルはフルスロットルだ!!


      #999 #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #Leave all Behind

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月14日

      45グー!

      「よし! 」
      私は気合いを入れる
      「ふぅ……」
      集中。キックを最適な位置に調整。
      「ーーっふん!」
      蹴り落とす!
      チ、チ、カシュンーー失敗。
      「………」
      アイドルは4分の1上げ、チョークを全開。
      「はぁ…」
      再び集中……キックを調整。
      「ーふ!」
      蹴り落とす!
      チ、カシュンーー失敗。
      額を拭って、三度集中……
      アクセルは開けない
      「ーーふぅ!」
      蹴り落とす!!
      ドドンッ!
      けたたましい音が鳴り響く!
      E/Gが起きた。
      チョークを半分閉めてしばらく暖気。
      そして頃合いを見て、チョークを閉める。
      「………」
      腹に響くサウンドを感じながら、通常のアイドル位置へ。
      あの独特なテンポが刻まれ始める。
      「出発だ」
      私はヘルメットのアゴひもを閉める。

      去年の春、父を見送った。
      「人は泣きながら生まれてくる。だからイく時は轟笑をもって閉じるべし」
      生前の父のたわ言。
      文字通り、笑いながら満足そうにイってしまった。
      大いに笑って、少しばかり泣いて喪に服す。
      そして、少しずつ父の遺品を整理していく。
      そんな折りに。
      「あ」
      私は思わず声を漏らす。
      それは父のガレージの中にカバーを被り鎮座していた。
      カバーを取り払う。
      「まだ有ったんだ」
      ハーレーが居た。
      ガソリンとホコリの匂いの混じるガレージ中、忘れられたように佇む鉄塊。
      私がまだ中学生の頃に、父が乗っていたバイク。
      父は目を子供のように輝かせ、このハーレーを磨いていた。
      私も何度か後ろに乗せてもらったが……
      「やだ! うるさい! くさい! 」
      思春期の私には分からなかった。
      まぁ、そんな言葉を聞き、当の父は高笑いしていたが。
      ただ、それから父がバイクを見せびらかすことは少なくなった。
      ふと、ナンバープレートの車検の月日を確認する。
      今年いっぱいまで残っていた。
      思わずハンドルに手を伸ばす。
      「……あたたかい」
      触った指先から熱を感じた。
      シートに座り、両手でハンドルを握り車体を起こす。
      「ッ! おっもぉ!」
      ズッシリとした重さと鉄の軋み。
      クラっとガソリンを吸い込んだような目眩を感じる。

      「ねぇ~。何か有った~?」
      母の声が家の方から響く。
      「ううん! 何でもなーい」
      ハーレーにカバーをかけ直す
      「………」
      私はそれを一瞥し、ガレージを後にする。

      それからしばらくして、中型と大型の免許を取った。
      そして、父のハーレーの整備をショップに頼む。
      「うわぁ! ショベルじゃないですかッ!?」
      ショップのオジさんが父のように目を輝かせる。
      「あの、動かせるようにして欲しいんですが……」
      私の言葉も上の空、オジさんの目はハーレー、ショベルに釘付け。
      「あ、すいません! 承りました! お任せ下さい!」
      私は父のショベルヘッドに乗ることにした。
      苦労した、本当に苦労した。
      セルも無ければ、何もない。
      キックに悪戦苦闘。
      車校での経験がまるで使えない。
      修理費での苦心が可愛く思えるほどに手を焼いた。

      でも。

      「お! おぉ!」
      乗るたびに父の気持ちを理解していった。
      ショベルを通して昔日の父と対話する。
      走る。眺める。撮る。
      「血は争えんね~」
      そんな私を見て、母が煎餅を頬張りながら呟く。
      「明日、流星群を見に行くけど母さんも来る?」
      「うーん」
      母がうなる。
      流星群は父と母の初デートでの思い出。
      「とりあえず明日までに考えといて」
      言ってショベルをガレージに納める。
      そして棚に置かれたアルバムを開く。
      挟まれた父の思い出の足跡に、私も写真を挟んでいく。
      「明日は晴れると良いなぁ」
      呟きながら心から願った。

      そして翌日。
      夜になり、冒頭のように出発の準備をしていると……
      「お嬢さん」
      聞きなれた声が私を呼ぶ。
      「私も連れてって下さいな」
      母がおめかしし、ヘルメットを準備していた。
      「……もうぅ、母さ~ん遅いよ~」
      ニヤケながらタンデムシートを急いで取り付ける。

      「じゃ行くよ」
      私の言葉に、母がしっかりと抱きついてくる。
      スリーテンポのパルスを響かせ、走っていく。
      「わぁ」
      母がショベルのサウンドに紛れながら声を漏らす。
      「お父さんとも、こんな風に走ってたの?」
      「ーーうん」
      「そっか」
      少しスピードを緩める

      「じゃ、これからは私と走ろうね!」
      私は叫ぶ。

      「うんッ!」

      空を見上げる。
      満点の星空、ひときわ輝く星が見えた。
      「父さん」
      ありがとう
      「バイクって」
      これからはそこから
      「楽しいね」
      私達のことを見守っててね

      地面を駆ける一筋の光
      空を駆ける一筋の光
      後を追うのは、さてどちらだったか……


      #FLH1200 #海刊オートバイ #俺RIDE #私RIDE #東○海平 #にわか知識ですいません

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月13日

      51グー!

      「やっべ! めっちゃ綺麗じゃん!」
      テツクニが興奮しながら感嘆を述べる。
      「うわぁ…やべ、人生観変わるわぁ」
      シロウも同じような感じ。
      「………」
      ミキタカに至っては言葉を失っていた。
      ちなみに俺も似たような感じ
      目の前に広がるのは水平線。
      この世のモノとは考えられない世界が広がっていた。
      ただただ心を奪われる

      「…また来ような」

      テツクニの言葉に全員頷く。
      振り返れば、4人の影が長く長く伸びている。
      信じていた。
      これからどんなことが起ころうともーー
      信じていた。
      4人でなら何だって出来るとーー
      信じていた。
      ……信じていたんだ……よ。

      「Thank You! みんなありがとな♪ また来るぜェ! アバヨ!」
      テツクニのシャウトに、会場がドッと盛り上がる!
      エフェクターの残響、ボルテージも冷めやらぬ中でバックへ帰って行く。
      「ーーお疲れ」「おう」「やっぱしんでぇな」「はぁ………」
      4人とも言葉を交わし、アフターケアを始める。
      目線は合わない。
      俺は慣れた手付きでベースをケースに納めて帰宅準備に入る。
      「じゃ、俺帰るわ」
      3人から言葉なき返事が返ってる。
      俺もそれ以上は何も言わず、扉を静かに閉じた。
      通路にロックが響く。間接照明の廊下をスタッフさんに会釈しながら帰っていく。
      てきぱきと動く彼らを、少し眩しく思う……
      「って、ヤバいヤバい」
      気が付けばいつの間にか駐車場に着いており、愛車を通りすぎようとしていた。
      タンデムステップに引っかけていたヘルメットを被り、愛車に火を入れる。
      駐車場にVツインのパルスが響く。
      「あぁ~、やっぱカッコ良いわぁ」
      愛車、SV650Xを眺めてうっとりする。
      しばしの暖気。
      そして次の目的地に向けてSVを走らせる。
      「………」
      この時間が好きだ。
      耳と肌でSVを楽しみながら心に貯まった諸々を洗い流していく。

      俺たち4人は高校の時に趣味だったバイクつながりでバンドを結成した。
      ボーカルはテツ、ギターはシロー、ベースは俺、ドラムはミッキー
      放課後にみんなで集まってはバイクとコピバンに明け暮れる。
      自惚れかもしれないが、、、
      バンドに限っては学生にしては上手かったんじゃないかと思う。
      そして、そんな時にインディーズに拾われてデビューした。
      難しい横文字の名前で、青臭いロックを歌い奏でて刻む。
      で、売れた。
      欲しかったバイクや車を躊躇なく買えるほどにね。
      酒も大人の遊びも経験した。
      もうね、筆舌に尽くしがたいほどに浮かれてたよ。
      俺たちの天下!誰も俺らを止めらんねぇってね。
      で。
      そんなことを数年続けたところで……

      「昨日未明、人気ロックバンド所属ーー本名○○テツクニ容疑者がーー」
      テツがクスリで捕まった。
      急転直下、俺たちをバッシングが襲う。
      世間に背骨が折れ曲がるほどに謝罪し、そして、ほとぼりが冷めたタイミングでテツに面会に行った。
      「……ごめん」
      すっかり人相の変わったテツに全員言葉を失った。
      ま、俺らも俺らで辛気臭い顔になってたんだけどね。

      「っと」
      俺はカフェの裏にSVを停める。
      「よう、みんな。お疲れさん」
      「あ、店長。お疲れ様です!」
      「店長。オーダーとドリンクお願いしていいですか?」
      俺はカフェの店長になっていた。
      学生時代から通っていた馴染みの店。
      「あいよ~」
      前掛けを着け、準備されていたコーヒーを煎れる。
      あれから10年。
      メジャーからは退いたものの、俺たちはバンドを続けていた。
      全員、サラリーマンなり俳優なり働きながら休日に集まりライブハウスに出させてもらう。
      細々とではあるが、ファンに支えてもらってバンドを続けることが出来ていた。
      「店長、ライブ見ましたよ」
      「やっぱベース上手いっすね」
      「ドリンクまだですぅ?」
      口々に飛んでくるバイト達の言葉攻めに四苦八苦。
      「はいはい。ういうい」
      コーヒーをカウンターに渡し、オーダーをさばく。
      テツはクスリを辞めた。そして、今は作詞家をやっている。
      バンドでは未だにボーカルだ。
      多少、劣化したかもしれんが……
      「良い声してんだよなぁ」
      「え? 店長何か言いました?」
      バイトが振り向く。
      「んにゃ。なんでも無いよ」
      バイトに愛想笑い。

      R~R~
      ポケットのスマホが振動する。
      見ればミキタカからメールが来ていた。
      どうやら次のライブは来月らしい。
      で、後は別件でーー
      「来週末にツーリングかぁ」
      最近やっと生活が落ち着いて、全員またバイクに乗れるようになった。
      「売れてた時はカメラが怖くて、まともに乗れんかったもんなぁ」
      思わず顔がにやける。
      目を閉じれば。
      あの水平線が昨日のことのように、まぶたの裏に浮かぶ。
      あの頃と今じゃ全然違うけどーー

      「あッ店長! パスタ! パスタ!」
      バイトの焦る声。
      「あ、おっ! やっべ!」
      見れば茹でていたパスタが泡を吹いていた。
      R~R~
      慌てふためく俺のポケットの中、スマホが再び振動する。

      ライブ。お疲れ
      またお前のベースを頼むぜ
      腹減ったから皆で今からカフェ行くわ
      サービスしろよな
      ーーPacific Inline4 Howling


      #SV650X #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #音楽業界の皆さんコロナに負けないで #月の無い夜も朝は来る

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月10日

      52グー!

      世界が ぐるんぐるんと回転する。
      左に見えていた地面があっという間に右へ。
      落ち葉と砂利の地面に全身を打ち付け、視界に火花が飛び散る
      「あぁ……」
      スローモーションになっていく世界の中、俺は驚くほど冷静に状況を理解していた
      世界が暗転する……

      WRを買って はや1年。
      今日は念願のハードな林道に挑戦していた
      俗にいう廃道。
      まともな所など無く、落ち葉に砂利に倒木に、様々なモノが俺の行く手を阻む。
      「エルズベルグロデオかよ!」
      などと喜びの悲鳴を上げ、力と知恵を振り絞って、人の管理下から放れたソレに1人で立ち向かう。
      そして。
      想定していた道の約4割を越えたくらいの所でそれは起きた。

      「ちょッ!」
      コーナーを越えた瞬間に急に何かが飛び出してきた!
      「ッま!」
      思わずブレーキレバーを握り込む!
      派手に土煙を上げながらWR共々倒れ、左へと滑っていく。
      左に見えるは崖!
      一瞬で判断。
      強ばる体を無理矢理動かし、乾坤一擲にWRから飛び降りる!
      WRがそのまま左の斜面へとなす術も無く転げ落ちる。
      そして冒頭へ至る。

      気がつけば俺は地面の上に横たわっていた。
      「ーーー」
      興奮に心臓が飛び出しそうになるのを必死に抑えて呼吸。
      「ふぅ……ふぅ」
      とりあえずヘルメットを脱ぎ、上体を起こして呼吸を整える。
      痛みは無い。
      奇跡的にコケ方が良かったのが、全身を砂だらけにしただけで済んでいた。

      ピェ~

      鳴き声が聞こえる。
      見れば数メートル先に鹿が腰を抜かしたように佇んでいた。
      状況を理解。
      俺は鹿と衝突しかけたらしい。
      思わず怒りからヘルメットを投げつけーー
      待て。それはおかしい。
      俺が山に押し掛けているのだ。
      完全なる俺のミス、俺の責任。
      手にしたヘルメットを地面に置く。
      「……怪我は無いかい?」
      ピェ~。
      俺の問いに鹿が鳴き、そして山の中へ飛び込む。
      「………はぁぁ」
      やるせない気持ちを飲み込んで立ち上がる。
      いつまでも座り込んでられるか。
      とりあえず崖下を覗きこむ。

      見れば数メートルの斜面の下、ガレ場の真ん中にWRが転がっていた。
      「良かった」
      安堵。見た感じ、斜面も緩く何とか降りることが出来そうだった。
      茂る木々に掴まりながら下へと降りていく。
      その途中で、体に多少の痛みが走る。
      やはり打撲や擦り傷を負っているのだろう。
      しかし骨折は無いようだ。
      「体の傷は勲章…体の傷は勲章……」
      自己暗示を施す。
      そして、何とかWRにたどり着き、引き起こす。
      「うわ、ZETA無くなってるやん」
      右のナックルガードが無かったり、レバー類が歪んでいるものの、それ以外は落ち葉と砂利に まぶされただけで済んでいた。
      見える範囲の汚れを落とし、E/Gをかける。
      ガ…ジィィ…キュルキュル…
      ドドンッ!
      多少、嫌な音を立てながらもE/Gがかかった。
      「あ……とぉ」
      緊張が解けた為か、思わず膝が崩れる。
      そのまま砂利の上、汚れることも厭わずに仰向けに寝そべる。
      「……やらかした」
      今更ながら後悔。
      WRのデカール貼り直すかなぁ……
      レバーも買い直さないと……
      「ーーあの」
      「え?」
      ふと声がしたので起き上がる。
      「大丈夫ですか?」
      オレンジ水玉のアパレルに身を包んだオフスタイルの女の子が立っていた。

      「へぇ、君も今日チャレンジに来てたんだね~」
      女の子から貰ったコンビニのお握りを頬張りながら喋る。
      「そうなんですよ。あ、お茶飲みますぅ?」
      彼女がボブルビーから水筒を取り出す。
      聞けば彼女、カシマさんも今日セローに乗って林道に来ていたらしい。
      そして。俺やWRの落下音を聞き、ここまで進んできたらしい。
      「あれ? そういえば君のセローは……」
      「……ガレ場にビビって下に置いてきちゃいました」
      カシマさんが恥ずかしそうにする。
      「正解よ」
      俺はおどけて、汚れたパーカーをこれでもか見せつける。
      「ちょ!それ笑えませんよ~」
      カシマさんがケラケラと笑う。
      ーーさて。
      俺は気合いを入れ立ち上がる。
      「色々ありがとう。とりあえず俺帰るわ、下まで送るよ」
      「ええ! 良いですよ~」
      カシマさんが遠慮する。
      「いやいや。そうもイカンでしょ……。てか、君のセローの所まで送るわ」
      俺はWRに火を入れ、跨がる。
      「……良いんですか?でも……」
      カシマさんが渋る。
      見れば彼女の荷物はボブルビーだけ。
      なるほど、ヘルメットをセローに置いてきたのか。
      「じゃ、悪いけど俺のヘルメット被ってくんね? あ、大丈夫!今綺麗にするから」
      俺はバックの中のウェットティッシュでメットの内と外を拭きあげる。
      「じゃ失礼して……」
      カシマさんが俺のメットを被り、ちょこんと俺の後ろに乗る。
      「じゃ行くよ」
      俺の言葉にカシマさんが頷く。
      ガレ場を慎重に進んでいく。
      途中、案内に聞きながら山を下っていく。
      「ー次は?」
      「このまま まっすぐ!」
      カシマさんの存在を感じながら、しかし風圧や枝に顔をしかめながらノーヘルで林道を走っていく。
      しばらくして。
      「む」
      見れば茂る木々の間に何かが見えた。
      「ここで良いですよ!この先、歩かなきゃ無理なんで!」
      WRを止める。
      「ありがとうございました」
      カシマさんがペコッと頭を下げる。
      「いやいや! それは俺のセリフよ! 君のお陰で助かったわ! いやホントマジで!」
      俺は身ぶり手振りで感謝を伝える。
      「また会おうね」
      「……ですね」
      彼女が笑う。
      天使か、この子は!
      何度も会釈し、木々の中に入っていくカシマさんを見送る。
      俺はカシマさんが見えなくなるまで、千切れんばかりに手を振った。
      「じゃ俺も帰っか」
      俺は自分のメットを……
      これ、カシマさんが被ったんだよな?
      へへへ。しゃーない、しゃーない。
      メットを被り、息を吸う。
      メットから濃厚な森の香りがした。
      そしてすぐ横にあった国道へと目をーー

      「……ん?」
      ふと疑問に気付く。
      あの子、どうやってガレ場まで来てたんだ?
      WRで走っても中々の距離が有ったぞ。それを歩いて来たのか?
      わざわざ?
      そもそも何で あんなタイミング良く会えて……
      カシマ、、、かしま、、、
      セロー、、、セロー?
      「ーーあッ!!」
      思わずカシマさんの消えた先を見る!
      そこは ただ木が茂っているだけ。
      「……ははは」
      万感の思いで笑いが出る。

      「○追う者は山を見ず。なるほど、出来すぎてらぁな」
      また来るよ。
      誰に語るでもなく呟く。
      「前方良し!」
      国道を走り帰っていく。

      ふと聞こえる草笛は誰だったか。
      答えるようにアクセルを吹かす。


      #WR250R #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #セローの和訳はカモシカ

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月08日

      45グー!

      ギアを2まで蹴り落とす!
      コーナーをアウトに膨らみながら、ラインを見極めて脱出。
      そのままスロットルを開けていき、マフラーのバックファイヤーを応援歌にギアと回転数を上げていく。

      ーーンバアァァァッ!
      VTECが作動し、絶叫が金切り声へと変わる!
      ホームストレートを車体にしがみつき、物理的な壁と化す空気を押し退けながら駆け抜ける。
      ラップタイマーをチラ見。
      今日一番のベストラップが刻まれていた!
      「!」
      込み上げる興奮を飲み込みながら、1コーナーに突っ込んでいく。

      バイクの免許を取るきっかけは、しつこい先輩の勧誘に根負けしてだった。
      安くない金を払い、半端な気持ちで教習に通い始める。
      最初の引き起こしで嫌になったのを覚えている。
      「こんな鉄の塊乗れるか」
      教習所のジェットヘルの中で毒づいたのは良い思い出。
      そして何度かCBでコースを回った時、ふとバイクに乗るのが楽しくなった。
      坂道発進でエンストゴケ、スラロームでポールへ激突、一本橋に悪戦苦闘
      そして急制動の前の加速にアドレナリンが出た。
      仕事終わりに汗だくになりながら教習を重ねる。
      そして。
      免許を取得すると、その日にバイク屋へ 購入契約を済ませていた愛車を取りに行った。

      目の前にはピカピカの新車。
      CB400SF HYPER VTEC Revoを買った。
      走りまくり、あっという間に慣らしを終わらせる。
      VTECを初めて経験した時は興奮で過呼吸になるかと思った。
      たちゴケした時には飯が のどを通らなくなった。
      でもコイツとなら、町乗りからツーリングからサーキットまで全てが楽しかった。
      自分好みにCBをカスタムしては一心不乱に走りまくる。
      気付けば頭の中はCBでいっぱいになっていた。

      スーフォアは~ ホンダは~ だって教習車だろ?
      部外者から心無い言葉を言われることも有った。
      だからどうした、俺はCBが好きなんだ。
      乗れば乗るほどコイツに のめり込でいった。

      「………」
      トランポに寝そべりながらCBを眺める。
      自惚れながら、何度見てもカッコいい。
      とりあえず、もう何回か走って今日は上がろう。
      来週はツーリングに行こうか、いやまたサーキットを走ろうか……

      「カッコいいですね~」
      「ーーあ、どうも」
      などと考えていたら話しかけられた。
      のそのそと起き上がる。
      見れば革ツナギ姿の若い兄ちゃんが立っていた。
      「最終ラップとても速かったですね~。痺れるような爆音に惚れ惚れさせてもらいました」
      「……どもっす」
      改めてみると俺より一回りほど若いように思えた。
      「自分も今から走るんですけど…速く走るコツとか有りますか?」
      改めて見ると、その子のツナギには真新しいツヤが有った。
      なるほど
      今日がデビューという訳か
      「そっすね………まぁ、最初は無理をしないことですかね」
      いつぞやの自分の姿が脳裏に浮かび、むず痒い気持ちになる。
      「で後は~」
      俺の言葉に兄ちゃんが目を輝かせる。
      参ったな。

      「大好きな愛車と走ることを楽しめば良いと思いますよ」

      「………」
      兄ちゃんが押し黙る。
      まずい。変なこと言ったか……
      「ですね! そうですよね!」
      キラキラした目と言葉。
      そしてアナウンスが流れる。
      「ありがとうございました! 頑張ってきます!」
      俺に頭を深々と下げ、兄ちゃんがコースに小走りに向かっていく。
      ふと遠ざかる彼の背中に羽が見えたような気がした。
      「ははは」
      思わず乾いた笑い。
      「羽はエンブレムだけで足りてるよ」
      言ってCBとヘルメット、その他荷物をトランポへと納めていく。
      コースから続々とエキゾーストが響き渡ってくる。
      それを聞きながら俺もコースへと向かう。

      ーーどれ。
      「彼の勇姿を拝ませてもらうとしようか」


      #CB400SF #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #起源にして頂点

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月07日

      45グー!

      日もまだ昇らぬ朝方
      枕元のスマホのアラームが鳴り響く。

      「…………」
      枕元の音源を手探りで探し、アラームを止める
      そのまま、モゾモゾと布団の中で凝り固まった体を動かし、 定位置に置いていた眼鏡を取る
      「………んむぅ」
      画面の明るさに目を眩ませながら時間を確認
      AM3:50
      ーー起きるか。
      温かな布団の誘惑に、後ろ髪を引かれながらも予定を開始することにした。

      「寒ッ………」
      外に出ると、早朝のツンと張り詰めた寒さが広がっていた。
      ネックウォーマーにアゴを埋め、VOXに近づいていく。
      「……あ」
      すっかり冷えきったVOXのシートと積んでいた荷物に霜が降りていた。
      とりあえずE/Gをかける
      キュルルンと少しグズりながらもE/Gがかかった。
      ジェットヘルメットに仕込んだインカムとスマホを同調させ、出発の準備を進めていく。

      今日は100キロ先のキャンプ場へと向かう。
      連休を使っての旅の始まり、寒さと期待が混ざり合い、何とも気持ちが落ち着かない。
      「じゃ行くか」
      ヘルメットのシールドを下げ、信号の点滅する道路へと静かに走り出す。

      今の会社に就職したのは、高校を卒業してすぐだった。
      その当時の同級生より少しだけ勉強を頑張り、第一志望の会社に内定することが出来た。
      それから約10年。
      そこそこの給料、中々の暮らし。
      まさに安泰。
      多少の不満はあるものの、一切の不自由は無い。
      ーーなかったのだが……

      あれ? 俺の人生こんなもん?

      そんな疑問が心に芽生えた。
      30手前にして、思春期のような
      あまりにも青臭い憂鬱。
      普段なら仕事に追われ、忘れてしまうのが………
      あれ? あれ? あれ?
      と心の中に巣食うソレは次第に大きくなっていった。
      「あぁ。つまんね」
      仕事やプライベートで1人呟く。
      1度考え始めると止まらなくなっていた。

      そんな時、実家の弟が通学で使っていた原付が俺の元にやって来た。
      VOX。元は俺が学生の時に使っていた通学の相棒。
      こいつで旅に出よう。
      そう思った
      余っていたお金で旅に必要そうな道具を買い揃えていく。
      「ははは。良いんじゃないの」
      サイドバックや巨大なシートバッグで武装したVOXに思わず声が漏れた。

      ~~~~
      山へ上った、海へ行った、酷道を走った。
      オドメーターがスロットのように回転していく。
      壊れる度に直して、その度に愛着が増して。
      今まで もて余していた休日が堪らなく楽しみになった。

      「ふぅ~。着いたぁ」
      ヘルメットを脱ぎ、ガチガチになった体に新鮮な空気を吸い込む。
      やはり原付で3桁走るのは中々に堪えるもんだ。
      でも どこかそれを楽しんでいる自分も居た。
      走行後のキンキンと金属音を鳴らすVOXを見る。
      小さく擦り傷が無数に入ったボディやフェンダー。
      泥の跳ねたステップ。
      「これからも頼むぜ相棒」
      ぽんぽん とシートを撫でる。
      さてと。
      「ぼっちキャンプはじまりはじまり~」

      高校14年生の明日はどっちだ?


      #VOX #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #オートバイの楽しさに排気量は関係ない

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年03月04日

      54グー!

      「俺とバイクどっちが大事なんだよ!」

      カズキが半狂乱になりながら声を荒げる。
      些細なことからのいつもの口喧嘩。
      結局はどちらかが察して折れるいつものこと。
      ただ、しかし今回に限っては
      「ええ……。あんたがそれ言うん……」
      参った。よもや女の私が男にそれを言われるとは、、、

      バイクに乗り始めたのは学生の時の彼氏の影響だった。
      ありきたりな話だが、彼の直菅で下品なZEPHYRに憧れて、車校に通いつめ、何とか中免を取得。
      そして、お金と乗りやすさからビッグスクーターを買った。
      毎夜毎晩、サンダル半キャップでネイキッドから原付スクーターまで寄せ鍋状態で騒音を撒き散らす。
      今思えば汗顔の至りであるが、とてもとても楽しかった。
      そして、それも卒業と社会人になるにつれて減っていって、、、

      「はい。担当の者に変わります」
      気付けば、今ではノルマと上司に神経を磨り減らし、会社とアパートの往復を繰り返していた
      1日がとても長く感じる。
      しかし振り返ってみれば1週間、1ヶ月、半年があっという間に過ぎていて。
      「セツラ、おめでとう」
      友達の おめでた連絡に機械的に返信を返す。
      あの当時、つるんでいた友達はそれぞれに幸せになっていて
      過去のあの日々を何度も何度も思い返す。

      「……バイクに乗らなくちゃ」
      思い立った。
      久方ぶりに某2輪販売検索サイトにアクセスする。
      バイクの形、地域、販売店を絞っていく。
      アポを取り休日に訪問。それを繰り返していく。
      それに合わせてヘルメット、ジャケット、パンツ、ブーツと装備を揃えていく。
      そして。
      「ここをこうで…○○で、△△で」
      バイク屋の説明をヘルメット越しに聞く。
      しかし目と意識は目の前の黒いバイクに釘付け。

      インパルス400を買った。

      特別これが欲しかった訳ではなかった。ただ、私の諸々の条件にこのバイクが丁度良かった。
      「…………」
      ふと見ると、ここまで乗せてきてくれた彼氏のカズキが店頭のバイクを見ている。
      彼もバイクに乗るんだろうか?

      「しかし意識が高いですね」
      「ーーえ?」
      店員の言葉に意識を戻す。
      「いえですね。感心しまして、、、ほら、最近のライダーさんてカジュアルなスタイルが本当に多いんですよ」
      「…はぁ」
      「でもお姉さん。フルフェイスにしっかりプロテクターの入った上下にブーツ、グローブ。素晴らしいことですよ!」
      「ーーどうも」
      思わず恐縮する。
      言えない。かつてサンダル半キャップで走っていたなんて。

      「なぁ、まだ出られんの」
      カズキが私に耳打ちしてくる。
      「あ、すいません。ではそろそろ行かれますかッ!?」
      店員さんが察して、いそいそと道路に向けてバイクを移動させる。
      「何? じぇらしー?」
      「うるせぇ。後ろから俺が付いちゃるけん。はよ行くぞ」
      ぶっきらぼうなカズキ、これは確実に妬いてるな。

      「では ありがとうございました!」
      店員さんの言葉を聞きながら、インパルスに跨がり車体を起こす。
      多少の重量感に緊張
      イグニッションをON。
      ブォン!っと体を震わす音と振動に、私の気持ちにも火が入った。
      サイドスタンドを蹴りあげ、ローに入れる。
      「お気を付けて! 本当にありがとうございました! ご安全に!」
      店員さんの丁寧なお見送り。
      ペコッと軽く会釈する。
      ブィンブィンと多少ギクシャクしながら数年ぶりに公道へとデビューする。
      「……ひぁ」
      おッかなビックリ、興奮に声を上げながらミラーを確認する。
      深々と頭を下げる定員さんと、ドアに肩肘をつきながら運転するカズキ。
      速度を上げながら、ギアも上げていく。
      思わずニヤけてしまう。
      私ってまだまだ やれんじゃん!
      「んふぅ」
      全身を通して伝わってくるモノに思わず声が漏れる。

      すべては ここから!
      まだまだこれから!
      ここから私が始まるんだ!


      #インパルス400 #海刊オートバイ #俺RIDE #私RIDE #東○海平 #過去の愛車に思いを馳せて

    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2020年02月27日

      69グー!

      カメラを忘れたことに気づいたのは、
      旅館にて風呂を済ませ、大広間に行く時だった。
      浴衣姿で、部屋に戻りバックをひっくり返す
      しかし探せど探せど、カメラは無い。

      「……むぅ」
      海沿いでZZRを停め、心ゆくまで写真を納めたまでは記憶に有るのだが、、、
      「どうしよう」
      しばしの間、熟考。
      探しに行くことにした。
      8万のカメラ、放っていくには あまりにも惜しかった。

      そうと決まれば。
      散らかした荷物の中から、ジャケットやパンツを身に纏っていく。
      せっかく温泉に入り体を清めたというのに、、、
      最低限の貴重品をポーチへと押し込んでいく。
      こんな時にポロッとカメラが出てきてくれれば良いのだが、、、
      「まぁ、出てこんわな」
      カメラが出てくることはなかった。

      「失礼します、、、あら?」
      ノックと共に仲居さんが入ってきた。
      「お出掛けですか?」
      「ええ。ちょっと出先で忘れ物をしまして」
      「左様でございますか、、、。ご夕食どうしましょうか?」
      「あぁーー」
      しまった。今回は奮発して会席を頼んでいたのだった。
      どうしたものかーー
      「また改めましょうか?」
      「良いんですか!」
      「はい。2時間ほどなら大丈夫ですよ」
      仲居さんが微笑む。
      「ありがとうございます! すぐ戻るんで!」
      会釈し、愛車へと急ぐ。

      タイムリミットは2時間
      今現在の時刻は17時半ば
      すっかりエンジンも冷えたZZRを、生ガス抜けの炸裂音と共に たたき起こす。
      海辺までは往復50キロほど、余裕ではあるが どこか心許ない。
      石畳の温泉街にZZRの雄叫びが響く。

      「………」
      あのカメラには ここ数年のツーリングの思い出が入っていた。
      盗まれたり、壊れてなければ良いのだが、、、
      回転数高めに、海辺への道を走っていく。
      焦るために信号によく引っ掛かる。
      「はぁ~」
      ふと信号待ちがてら横を見る
      夕日が山に隠れ始めていた。
      もういっそ。
      カメラがこっちに走ってきてくれないものか……

      「あ! おーい!」
      いきなり前方から声がした。
      見れば対向車線の先頭に並ぶ、二人組のネイキッドに乗るライダーが共に手を振っていた。
      ………ヤエーか?
      こちらも軽く手を振る。
      「ダメだ、伝わってねえ!」
      「これ! これ!」
      片方のライダーがタンクバックから何かを取り出す。

      俺のカメラだった
      ~~~~

      「いやぁ、ほんとありがとうございました」
      俺はカメラを受け取り深々と頭を下げる。
      「いえいえ。こっちも勝手に持ってきて申し訳ない」
      「でも会えて良かったです」
      二人組。マスツーカップルが言うには、カメラはずっと あの海辺に放置されていたらしい。
      2人も、それを視界の隅にとめながら撮影会をしていたが、一向に俺が取りに来なかったので、思いきって俺を追って来たとのこと。
      「よく俺の場所が分かりましたね~」
      「あの爆音を頼りに来ました(笑)」
      「……お騒がせしました」
      「嘘ですよ。あの先の旅館に泊まられるんですよね?」
      「ええ。そうですが…」
      「僕達もそこに泊まるんですよ」
      「ここら辺、あそこしか泊まるとこ無いもんね~」
      街灯が灯り、2人を照らす。
      なるほど、これは良いものだ。
      「あのーー」
      ーー写真撮っても良いですか?
      口から出そうになった言葉を飲み込む。
      これは ちゃちを入れるべきではないな。

      「一緒に旅館まで行きませんか?」
      俺の提案に2人が賛成と顔を綻ばせる。
      「お礼に酒奢りますよ」
      「え? 良いんですか! やったー」
      「ちょっと。少しは遠慮しなさいよ!」
      「ええ~」
      3人いそいそと道の傍ら、準備を整える。
      見ればすっかり日も落ちて、見上げれば雲の合間に月が見え隠れしていた。
      「じゃ行きますか」
      啓蟄の夜に3つの光を連ならせていく。

      これだから旅は止められない。


      #ZZR400 #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #今年もたくさん走りたいです

    • マリン後輩さんが投稿した愛車情報(Ninja ZX-12R)

      Ninja ZX-12R

      2020年02月27日

      68グー!

      息が出来ない……
      スクリーンから顔を出そうものなら、はるか後方の彼方へ吹き飛ばされそうになる

      ただただ体を縮こませ、握るハンドルに力を込める、内腿が引き吊るほどにしっかりとニーグリップ!

      睨み付けるようにメーターを見る
      140…180……220
      針がみるみる内に320へ吸い込まれていく

      今回は行けるか?
      爆音と化した風切り音と恐怖心に揺さぶられながら、スロットルをさらに捻る!
      目測、ストレートは残り2キロ
      息をすることも忘れ、スロットルを握る右手と、尻を通して伝わるリアタイヤの挙動に全神経を集中させる

      240…260……280!
      そして!!


      ~~~~~~~~~~~~

      12Rのサイドカウルからユラユラと陽炎が昇る
      手に持った缶コーヒーを、縮こまった体に流し込む
      あまりにも熱いモノが体の中を通っていった
      「………ふぅ」
      情けないため息をつき、愛車のすぐ側に どかっと座り込む
      結局、今回もダメだった
      あの時、目の前には誰も居なかった
      愛車の状態も良好、しかし俺がダメだった。

      何度やっても320はおろか、300に到達出来ない
      最後の最後でスロットルを戻してしまう
      「…………」
      何も言わぬ12Rをただただ見つめる
      「ーーぁ」
      気付けば右足が震えていた。

      やはりダメなのか?
      これが限界なのか?
      俺ではーー

      「あの」
      突然、短い言葉が耳に刺さる
      見れば傍らに、おっさんが立っていた。
      「トばされてましたね」
      「……そっすね」
      「物凄い速さで抜かれてビックリしました」
      おっさんが12R をジロジロ見ながら喋る。
      なるほど、どうやら迷惑をかけたらしい
      「ーースイマセン」
      俺は深々と頭を下げる。
      「いえいえ! 」
      おっさんが大袈裟に声を出す

      「思わず見とれちゃいました」
      「え?」
      「良いですよね~……バイク」
      頭を上げれば、おっさんは まるで子供のような目で12Rを見ていた。

      「バイク乗ってたんですか?」
      「遠い昔ですけどね」
      何となく、おっさんの昔話を聞く。
      聞けば、その昔GPZ600Rに乗ってたらしい。
      何度もこけ、ボロボロになりながらも楽しんでいたそうな、、、

      「今は もう車ですけどね」
      「あの、車は……」
      「型落ちのレジェンドに乗ってます」
      レジェンド……なるほど。
      確かに居たような気がしてきた。
      「これから、何処に行かれるんですか?」
      「あぁ……これといっては……」
      思わず口ごもる。
      「ーーそうですか」
      しまった、何ともカッコ悪い。
      こんな時に柔軟に返せない自分が情けなく思えた。

      「あ! ちょっと待っといてもらえます!?」
      おっさんが思い出したようにSAに走っていく。そしてしばらくして帰ってきた。
      「これどうぞ」
      おっさんが俺に手を差し出す。

      その手には缶コーヒーが握られていた。

      「頑張って下さいね」
      おっさんが はにかむ。
      「……ありがとうございます」
      おずおずと缶コーヒーを受けとる
      「では。私はこれで」
      おっさんは満足したのか、踵を返し車の並ぶ中へ帰っていく

      「ーーあの!」
      俺はおっさんーー
      いや、おじさんに向けて声を飛ばす

      「良い旅を!」
      俺の言葉に、おじさんが笑顔で手を上げた。

      ふと12Rへ目を向ける。
      すっかり陽炎は消え失せていた

      「さてと」
      貰った缶コーヒーを一気に腹に流し込む!

      「もう少しだけ頑張りますかね」
      晴れた空に12Rの雄叫びが木霊する。
      次は320に届きそうな気がした


      #ZX-12R #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #全てフィクションです

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