私RIDEの投稿検索結果合計:9枚
「私RIDE」の投稿は9枚あります。
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2022年05月21日
53グー!
「お父さんは認めません」
父が私の懇願に憮然と言い放つ。
「なんで!? 友達はみんな乗ってるし私もバイク乗りたい!」
思わず声を荒げる。
「ダメです。オートバイなんて認めません」
「クマキチ君はオートバイで事故を起こして、大きな傷が残ったと言うじゃないか? そんなモノに娘を乗せようとするバカが居るか」
ふんすッ! と父が鼻を膨らませる。
「アレは違うよ、アレはクマキチが彼女とタンデムしながら乳繰りあおうとして事故ったんだよ」
必死に説明。しかし。
「乳繰りあうだとッ!? お前!そんなことをやろうと言うのか!」
父のボルテージが上がる。
「違わい!もういい! このバカ親父!」
もう知らないッ!!!
私は立ち上がり飛び出す!
「コラッ!待ちなさい!」
追いかけてくる父を振り切って。
ド! ドドン!
愛車のセローを叩き起こし!
「わぁぁぁぁぁ!」
私は走り出した。
「なぁ、セロー買わんか?」
始まりはゼミの先輩の言葉だった。
「セロー? 何ですかそれ?」
私は首を傾げる。
「バイクだよ、バイク。スッゲェ楽しいぜ」
先輩がニッコニコしながらバイクの魅力を語る。
「あの私、バイクの免許持ってないですけど……」
「まぢ? じゃあ取ろうぜ!」
「ええ~、、、でも、、、」
ちょっと困惑。
「そだ!週末に山行くからさ、付いてこいよ」
しかし、先輩はそんな私を無視し話を進める。
「いや、だから」
割とイライラ。
「じゃあ日曜の朝な」
先輩、満面の笑み。
「……はぃ」
押しきられてしまった。
そして明けて日曜日。
「お待たせ~」
待ち合わせ場所に先輩がやって来る。
「……え?」──これ?
先輩の跨がる細っいバイクに面を食らった。
「さ、さ!乗れ乗れ!」
先輩がポンポンとシートの後ろ側を叩く。
「───」
平均台みたいに細いシート……
恐る恐る乗ってみる。
「ほな行くで~」
トコトコと走り出す先輩にしがみつく。
「恐いか? カシマぁ」
頭を縦にブンブンと振る。
「ガハハハハ!」
先輩がスロットルを回す!
ドンッ!セローが加速し、ずり落ちそうになる!
「キャアアアア!」
○すぞ!
気持ちを込めて、しがみつく手で先輩の横腹を握り込む!
「わ!痛てぇ!痛てぇって!ワハハ」
先輩は悲鳴をあげながら笑った。
先輩にしがみつきながら山へと入っていく。
途中で先輩の友達たちが合流。
みんな細っいバイクに乗っていた。
えっちらおっちら言いながら山を進んでいく。
途中、先輩がコケる。
私も巻き添えで濡れた地面にキスをする羽目になった。
他の先輩たちにもタンデムさせてもらい、キャンキャン言いながら林道ツーリングなるものを味わわされる。
最初はもうテンションダダ下がりで文句言って帰ろうと思った。
でもいつの間にか。
「ギャハハ」「ゲラゲラ」「ケタケタ」
泥遊びにはしゃぐ子供のような先輩達と同じく。
「ワハハ」
私も笑っていた。
途中……
「カシマ、ここはお前が行け!」
いきなり先輩が私に運転の交代を命令してきた。
目の前には浅く抉れた轍の獣道。
「やってやろうじゃないですか!」
受けて立とう!
無免許も忘れ、その場のノリに圧されセローに跨がる。
*これはフィクションです*
*無免許での運転は絶対に止めましょう*
え? これ高ッ! 足が……足りん!
ローに入れフラフラしながら進入!
ガックン!ガックン!と揺さぶられながら。
「わ!わ!わ!」ブィン!ブィン!
見様見真似で獣道を進んでいく。
「カシマ!ビビるな!」
「そだ!カシマちゃんファイト!」
「行け!行け!行け!」
「は!はい!」
ウルセェ! ○すぞ!
………………
「──出来ちゃった」
しゃにむにやってたら獣道を走破した。
振り返り自分が走った獣道を見る。
ものの数十メートルの道、でもそれはとてもとても輝いて見えた。
「やったなぁ!カシマ」
先輩たちが私に追い付いてくる。
「ヤァッッッタァー!」
思わず両手を上げてガッツポーズ!
だがしかし。
ガックン!
ハンドルから手を離したためにエンスト。
そのままセローと共に地面へと倒れる。
「カシマ!」
先輩たちが私に駆け寄る。
「大丈夫か!?」
先輩たちが私を救助し私の顔を覗き込む。
「ヘヘヘ」
私は笑った。
「──うん」
「─はい。気が済んだら帰ります」
「分かってる。私こそごめんね」
飛び出した後、鬼のように掛かってきていた父の電話に出る。
怒声、困惑、そして心配。
電話越しの押し問答。
少しばかり上擦った父の声に心がヂクヂクと痛んだ。
「……うん。じゃまたねパパ」
電話を閉じる。
「ハアァァ~」
飛び出し登った山の上、眼下の絶景を見ながらため息。
なかなかコッチも前途多難ですね。
他人事のように漏らして、セローの横に座り込む。
ふとセローを見ると、小さな傷が目に付いた
傷を優しく撫でる……
「ん?」
ふと視界の端に何かが映る。
ナズナの花が咲いていた。
失礼して一房を手に取ってみる。
「知ってるか?ナズナって食べられるんだ」
いつぞや父とピクニックに行った時の記憶がよみがえる。
「春の七種にも使われるくらいで、生で食べるととっても甘いんだ」
「………えい!」 パクッ!
ナズナを思いきって頬張る!
「ンうぇッ!」ペッペッペッ!
すんごく不味かった。
口を水筒のお茶で濯ぎ、えずきに溢れた涙を拭う。
「文句言ったろ」
ヘルメットを被り帰宅の準備を始める。
──ポッ
スマホの画面にメールが届く。
今日の晩御飯はお前の好きなのも
早く帰ってきな
「ぷはっ!」
パパのメールに苦笑。
しょうがないなぁ~、
登ってきた道をゆっくりと下っていく。
下る道の途中、見落としていた花が咲き誇る場所を見つける。
ツツジの花が咲いていた。
#セロー250 #SEROW250 #私RIDE #俺RIDE #東○海平
#セロー乗ってはしゃぐ29歳児 -
2021年08月17日
64グー!
全神経を研ぎ澄ませて峠を走り抜けていく!
右─左─ギアを1へ踏み落とす!
途端、回転数が跳ね上がりエンジンが雄叫びを上げてマフラーから絶叫が木霊する!
カーブを抜けてストレートへ。
スロットルを根性で開けていく!
迫りくるキツい右カーブ。
ふと前方に父親とその愛車、CBR929RRのテールランプが見えた。
「イケる!!!」
早鐘を打つ心臓に、さらにアドレナリンが流れ込む!
ビリビリとした恐怖、一寸先に見える◯の狭間に指がブレーキへと伸びる。……グッと堪える。
──まだ。
眼前に迫るカーブ!
刹那、糸ほどの細い光るラインが見えた。
今!!!
ブレーキを握り込む!
ジャックナイフ寸前の綱渡りのようなタイトブレーキ、恐怖と興奮に歯が割れそうなほどに食い縛ってラインをなぞっていく──
見事にパス、眼前に長いロングストレートが広がる。
そのわずか先にCBRのテールランプを捉えた。
フルスロットル! 身を屈めてロケットのようにソレ目掛けて跳んでいく。
1000ccクラスのフル加速、轟音と針の穴ほどに狭まっていく世界で
テールランプの赤を睨み付ける。
……だけど。
「あ」
これはどういうことだ?
文字通りスルスルとソレは。
父親とCBRが私から遠ざかっていた。
スロットルを緩める。そしてガス欠でもしたのように路肩へと愛車を停める。
「………」
ヘルメットを脱ぎ、前方を眺める。
遥か前方、峠を上っていく父の背中とCBR929RRの後ろ姿が陽炎に消えていった……
バイクに乗り始めたのは父親の影響だった。
古くさいバイクを、まるで宝物のように取り扱う父親、その姿を今でも覚えている。
私はそんな父の姿が子供のように思えて嫌いだった。
なんで他の所のお父さんは外車とか、キラキラした高級車に乗ってるのに家のお父さんはバイクなんて乗ってるんだろう……
上手く言えないけど、ソレが恥ずかしかった。
「そんなガラクタ売ってよ、他の所のお父さんみたいにベンツとかレクサス乗ろうよ」
そんな事を言ったこともあった。
「ああ、そのうちな」
すると父は決まってそんな事を言うのであった。
そして月日は流れて、私は高校を卒業し社会人になった。
そんなある日に、仕事から帰ってきてボンヤリと眺めていたニュース、それは訪れた。
ホンダのバイクレーサーの訃報を告げるモノだった。
生前の彼の人生や輝かしい戦歴が詳しく説明される。
その中の1枚の写真、ソレが私の目に焼き付いた。
カラフルなマシンを駆る彼の姿、ソレが父の姿と重なったのだ。
私の中に竜巻のようなうねりが生まれる。よく分からない強い強いチカラが私を支配する。
──バイクに乗ろう。
そう思った。
それからは早かった。
目を白黒させる母をよそに、テキパキと教習を済ませ。
チカラに導かれるようにホンダのショップへと足を運び、書類にポンポンと印鑑を押して。
私の元にCBR1000RR SP SC77がやって来た。
「本当に大丈夫ですか?」
心配そうなショップのお兄さん。
「あらら~」
なぜか納車に付いてきた母親。
「では! 行ってきます」
会釈して私はおニューの装備に身を包んで1000ダボ? と駆け出した。
走って走って腕を磨いていく。
別に速くなることが目的じゃ無かったように思う。
走ることが楽しかった。
でも目標は有った。
にこやかに笑い父が私を追い抜いて走り去っていく……
「お父さんに勝ちたい!」
「あのニチャニチャした笑顔をギャフンと云わしたい!」
そう思ったんだ。
ガックリと肩を落とし、ゆるりゆるりと帰っていく。
「また勝てなかったなぁ」
ぶつくさと文句を垂れながら家路を走っていく。
おかしいなぁ~
排気量でもパワーでも勝ってんだけどなぁ~
やっぱアレかな~
まだまだ下手っぴなんだろうなぁ~
ファァァァァーンッ!!!
父のCBRの雄叫びが遠く聞こえた。
……ちくしょう。
絶対に次は勝ってやる!
・・・・・
「ただいま」
私は家の倉庫、父のCBRの横に自分のCBRを停めて母に声をかける。
「おかえり。遅かったね」
母がスイカを切りながら答える。
「どう? 今回は勝てた?」
「ダ~メ。途中まで食い下がったけど、最後の伸びで千切られちゃった」
スイカを2つほど拝借。食べながら母に結果を報告する。
「あの人速かったもんね~」
「奥大山のパープルイエロースターだったっけ?」
私は言いながら笑いそうなる。
「そうそう! ホント、馬鹿よね~」
母が懐かしそうに言って、笑って、ちょっと顔を背ける。
「だね~」
私は拝借したもう一つのスイカを皿に移す。
「だそうですよ」そして。
「パープルイエロースター」
私はスイカを仏前の笑う父に供えた。
オマケで割り箸を突き刺したキュウリとナスも供える。
網戸の向こう側、倉庫に並ぶ2台のCBRの方より風が吹き込む……
「来年は負けないからね」
スイカと特製の自信作を前に笑う父、私も笑いかけてやった。
#CBR1000RR #CBR929RR #私RIDE #俺RIDE #東◯海平 #お盆 -
2021年04月10日
54グー!
「ステイ!」
私の言葉にボーダーコリーのシューぺリアと、バーニーズのトラバントが伏せて私の顔を伺う。
「ジャンプ!」
私は高く手を掲げる、2匹が勢いよく立ち上がり、ピョ~ン♪と跳ねて、私の手にタッチを行う。
「バンッ!」
私は指でピストルを作り、2匹に向けて放つ。
(ワフッ)(ウォフ)
2匹がコロンと寝転がる。
シューぺリアとトラバントが流し目に私を見る……
「良し!」
(ワンッ!)(ンフッ!)
私の言葉を聞くやいなや、ピョンピョン跳ねながら、2匹がじゃれついてくる。
「グー! ベリーグーね♪良し良~し♪」
ご褒美の生ジャーキーを配りながら2匹を撫でる。
「流石っすね~。見事なもんですわ」
近くに居た同僚のポンタが顔を、柴犬のラオウに舐められながら喋る。
「そりゃドッグトレーナーですから──っぁ!」
大型犬の2匹にじゃれつかれ、私は倒れて。
「キャ~!!!」
ここぞとばかりに、顔や手を舐められてベロンベロンになった。
「シュペ~、トラ~」
気品のある飼い主さん夫婦が現れて、2匹を呼ぶ。
2匹がそれに気付き、飼い主さん達の元へ走っていく。
リードを優しく付けられ、2匹の尻尾が嬉しそうに揺れる。
「では、また木曜日に」
「はい。今日もありがとうございました」
にこやかに飼い主さん夫婦が笑う。
(ワフッ♪)(ウォフ♪)
シューぺリアもトラバントも笑った。
私はドッグトレーナーだ。
昔から犬が好きだった。
小さい頃から、たくさんの家族を飼ってきた。
そんな中で、訳有りな わんこと会った。
暴れん坊だった、気にはなっていたけど、、、
自分や家族が噛みつかれるのが恐くて手が出せなかった。
しばらくして、その子は飼い主に噛みついてしまった。
──救えなかった。
だから、次は救いたいと思った。
「ところで姐さん」
ポンタが私を愛称で呼ぶ。
「週末楽しんできて下さい」
ポンタが言って笑う。
「そうね。久しぶりだもんね~」
私も週末のことを考えて笑った。
「ども~、予約してた──」
新たなお客様がやって来て
ワンワンワンワン!!!
ワンコが弾丸のように飛んできて
「わぁ~~!!!」
「おぉ~~!!!」
2人でタジダジになった。
ドドドドドドドド!!!!!
4台で連なって走っていく。
今日は仲間内のツーリングだ。
愛車は皆、イントルーダー400クラシック。
マシンは一緒だがカスタムは様々、ナローやインスパイアなど4台4人で思い思いのスタイルを作っていた。
「到着~」
先頭を走る私は言って、後方に手信号を出し、道の駅へと入る。
「ふぃ~」「お疲れッす」「あ、豚串美味そ~」
みんなでガヤガヤしながら楽しむ。
楽しい。
みんなも楽しそうだ。
仕事でもプライベートでも世話を焼く。
性分なのだろうか。たまらなく、それが楽しかった。
そして。
また連なって走っていく。
そんな時に
「うおっ!」
仲間の1人の声がインカムを遠し聞こえた。
それと同時に。
───ヒュイン!!!
「きゃっ!」
凄まじい速さで、私達を何かが追い抜いて行った。
それは、さらに前方でテールランプを光らせて追い抜いていく。
少し古いスポーツバイクだろうか?
「あっぶねぇ」「頭沸いてんか?」
インカムで愚痴が飛び交う。
「だね~」
私も愚痴った。
そんなある日。
「あの、よろしくお願いします!」
バイクのチームに新たな仲間が加わった。
小柄な可愛らしい女の子がペコペコと頭を下げる。
「うんうん!」「ひゅ~♪」「俺、マサヒコ」
野郎達が色めき立つ。
「スミレです!」
彼女、スミレちゃんも勿論、インクラ乗りだ。
大きな車体に小柄な彼女、とても微笑ましかった。
どう言ったら伝わるだろうか、、、
「ポメラニアンみたい」
仲間内の1人が呟く。
なる程、言い得て妙だなと思った。
ツーリングに出かける。
野郎達がインカムを通してスミレちゃんに話しかける。
あぁ姫よ、蝶や花よ、といった感じだった。
「アハハ」
思わず乾いた笑いが出た。
現金なものである。
少しずつチームの形が変わっていく。
今までは私が皆を引っ張る感じだった。
──それが。
「ねぇスミレちゃん知ってる?」
「あのね、スミレちゃんこれはね」
「あ、そうだスミレちゃん」
スミレちゃん スミレちゃん スミレちゃん
「…………」
気が付けば私は1人で温泉街に来ていた。
足湯に浸かりながら景色を眺める。
「……たのしいな」
誰に言うでもなく呟く。
ふと、湯槽の水面を見る。
映るのは、据わった眼力と力仕事に鍛えられたソレ。
ロットワイラーがそこには居た。
「あの」
話しかけられる。
「隣いいすか? 」
言われて相手を見る。
「あっ」
相手が声を上げる。
「え」
私も声を上げた。
「姐さん」「ポンタ」
カジュアルライダーな姿のポンタが、そこには居た。
「やっぱ~、みんなソッチの方が良いよね~」
私は何となく、思ってたことを素直にポンタに喋る。
「あぁ~、ですかね~」
ポンタがバツが悪そうに目を伏せる。
「………」「………」
お互いそれ以上は話が続かず、足湯に浸かり、温泉街を眺める。
「姐さんはどうしたいんです?」
ポンタが尋ねる。
「……分かんない」
私は答えられなかった。
「ポンタはどうしたら良いと思う?」
今度は私がポンタに尋ねる。
「う~ん。俺の口からは何とも」
ポンタはそう言って。
「っでも!」
勢い良く立ち上がった!
「俺は好きですよ」
「……え?」
私は思わず思考が止まる。
「あの、その……何て言うか」
ポンタが改まる。
「俺は愛玩犬より頼れる番犬の方が好きです」
「………」
「あ、中でもロットワイラーとか大好きですね」
言うが先か、ポンタの顔がみるみるうちに赤くなっていく──
「じゃそういうことなんで!あの姐さん、お大事に!」
ポンタが急いで靴を履き、足早に走っていく。
そして遠くに止まっていたバイクに跨がった。
──あれはGSX-R400だろうか。
ブォン! ブォブォブォブォッ!
ペコペコと幾度も私に会釈をして
ブォォォォォォオン!!!
ポンタは去っていった。
「ふーん、なるほどね」
私はそう呟いて。
「よいしょ」
立ち上がる。そして。
クンクン!
私は鼻を使い辺りの匂いを嗅ぐ。
ふむふむ、なるほどね
香る硫黄の香り、その中に仄かに漂うアイツの匂い。
「ワンワンワォーン!」
愛車のインクラに跨がり、愛車を起こす。
ドドン! ドドドドドドド!
ゆっくりと、匂いを追って走り出す。
鼻と耳をそばだてる。
待ってなさい、きっとすぐに捕まえてあげるから。
「逃がさないからね」
絶対に逃がさないんだから!
#イントルーダークラシック400 #俺RIDE #私RIDE #東◯海平 #これじゃ番犬じゃなくて狂犬だよ -
2020年06月20日
47グー!
(では~今日はこの辺で)
(良ければ高評価とチャンネル登録お願いします)
(ではでは~)
すっかり夜も更けた真夜中。
私は動画を視聴しパソコンを閉じる。
「まぁ、こんなもんかな。 ん?」
そして簡単な感想を述べ、傍らの振動するスマホを手に取る。
「ハ~イ、テツコだけど。どしたエリー?」
「コンバンハ!動画見たよ、めっちゃ面白かったよぉ~♪」
エリーがテンション高めに喋る。
「そう?良かったぁ」
「サイコーサイコー! また行こうね!じゃねSee you」
「うん。また行こうねSee you」
私は通話を切り、ベッドに横になる。
ンフフ♪ 思わずニヤける。
今回はどれくらい再生数いくかなぁ?
5000? 10000?
「おやすみなさい」
私は証明を消し目を閉じる。
明日の朝が楽しみだ。
「お~い! テツコちゃん、こっち手伝って~」
会社の上司が私を呼ぶ。
「はーい!今行きまーす」
私は手元の作業を中断し、上司の元へと急ぐ。
「テツコ~」
エリーが私を見つけ駆け寄ってくる。
「私も手伝うよ」
「Thank You~」
私はエリーと共に振り分けられた仕事をこなす。
エリー。外国人技能実習として会社に来た外国籍の女の子。そして私が指導員として一緒に仕事している会社の同僚。
「私達の動画、メチャ再生されてたよ~」
エリーがコロコロと笑いながら私に話しかける。
「そうなん? やったね!沢山お金入ってくるよ」
私もそれを聞いて顔がニヤける。
私とエリーは2人でモトブログをやっている。
お互いバイク好き、しかもオフロード! ましてやお互いにジェベルに乗っているといった感じにシンパシーを感じて意気投合。
2人で走って動画を撮り、そしてソレを私が編集してアップする。
「次はどこ行こうか?」
「うーん……どうしょっかな~」
与えられた資料をパソコンに入力していく。
「私、アドベンチャーしたい!」
エリーがそう言って目を輝かせる。
「アドベンチャー……オフロード……」
私は動画映えしそうなスポットを考えてみる。
「お~い。テツコちゃんエリーちゃん終わったかーい?」
上司がせっかちに私達に尋ねる。
「はい! もうすぐ終わりますよ」
とりあえず返事を飛ばす。
「休日行こうね」
「オーキードーキー! 楽しみにしときます」
私とエリーはクスクスと笑い仕事へと戻った。
「うわっ」
休憩時間に動画のコメント欄を見て私は声を上げる。
「? どしたのテツコ」
エリーが私のスマホを見てくる。
「Oh……」
そして困ったように声を上げた。
ザッコww(^q^)
卑しいモトブログですね
Motorcycle is poor
「………」「………」
アンチコメを前に2人とも顔が引きつる。
「テ、テツコ! fight!fight!」
エリーが励ますようにファイティングポーズを取る。
「……そだね。ファイトだね」
私もファイティングポーズを取った。
「エリー。コーヒー買いに行こうか」
私はスマホをポケットにしまい休憩室から出る。
そんな私にエリーがトコトコと付いてくる。
~♪~♪
っと、出たところで休憩終了のチャイムがなってしまった。
「残念、次の休憩時間ね」
私は肩をすくめて、小さく舌を出す。
「Oh……残念ですね」
エリーも肩をすくめて、ペロッと可愛く舌を出してくれた。
「うひゃ~! 恐い!ムリ!ムリ!」
私は激しく上下する視界に悲鳴を上げる!
「頑張れテツコ! もうちょい!もう少し!」
先行するエリーが派手に泥砂利を上げながら進んでいく。
私達は休日を使い地元の林道に来ていた。
最初はいつも通りの緩いツーリングだったのだが。
「? あれ?」
どこかで道を間違えたのか。
「Why? 電波入んないよ」
気が付けばジャングルのような酷道へと足を踏み入れていた。
「ハァ……ハァ……エリー……待って……待って……」
ぬかるんだ路面にタイヤを取られる。
「テツコ! 止まったらダメ!GO!GO!GO!」
2人汗だくになって何とか進んでいく。
しばらく走って。
「ちょっと休憩!」
道の傍らに座り込み、持ってきたポカリをラッパ飲みする。
「ーク!ーク!ップハァ!」
横で同じようにポカリをラッパ飲みするエリーを見る。
流石は外国人! その姿すらも様になっていた。
「大丈夫?」
「うん平気。テツコは?」
「私も何とか……あ」
私は目の前に広がる景色に思わず声を漏らす。
「どしたのテツコ……」
連れて景色を見たエリーも言葉を失う。
曇っていた空が晴れて、眼下に光輝く海が広がっていた。
「綺麗………」「ーーBeautiful」
私は思い出したように手元のゴープロで風景を撮影する。
青々とした木々とキラキラと輝く海。
しっかりと目とカメラに写す。そして。
「お!?」
私はゴープロの録画をスマホで確認し声を上げる。
「電波復活してる! ええと、この後はーー」
スマホで道を確認する。
良かった、このまま進んで行けば何とか県道に繋がるようだ。
「行けそう?」
エリーが心配そうに私を見る。
「OKみたい。 じゃ次は私は先導するね」
私はスマホとゴープロをハンドルにセットする。
「Here we go!」
そしてバイクに跨がり出発ーー
カシュン!
思いっきりエンストした。
たまらずバランスを崩す。
「△△△△ッ!」
エリーが思わず母国語を叫び私に駆け寄る!
ガチャン!
私は立ちゴケした。
「痛っ~!エリーヘルプミー~」
足がジェベルの下敷きになってしまった。
エリーに覆い被さるジェベルを起こしてもらう。
「大丈夫?」
エリーが心配そうに私の足を優しく撫でる。
「ん、、、ちょっとヤバいかも」
足がジンジンと痛み、思わず顔をしかめる。
そんな私を見てエリーがオロオロと周りを見渡す。
「ーーあの」
ふと聞きなれない声がした。
私もエリーも声の方を見る。
「大丈夫ですか?」
オレンジ水玉のアパレルに身を包んだオフスタイルの女の子が立っていた。
「いやぁ助かったよ。ありがとね」
私は女の子に深々と頭を下げる。
「こちらこそお役に立てて光栄です。いえいえ! オフロードは助け合いですよ」
女の子、カシマさんがオーバーにリアクションして私に笑いかける。
カシマさん。たまたま通り掛かって親切に手を貸してくれた女性オフライダー。
あの後、私達はカシマさんに手助けされて何とか県道まで出ることが出来た。
私がエリーのジェベルにタンデムし、そしてカシマさんが私のジェベルに乗って、三人でーー
「わぁ!わぁ! コケるコケる!」「ちょっと待って!エリー!キャーッ!」「ええ! ジェベルシート高ッ! わっちょ!ひゃ~ッ!」
ワチャワチャしながら何とかここまでたどり着くことが出来た。
「ホントありがとうね」
「いえいえ。では私はこれで」
カシマさんがペコリと頭を下げ、踵を返して歩いていく。
「今度は一緒に走ろうね!」
私は手を大きく振って叫ぶ。
「~♪」
カシマさんも手を大きく振り返してくれた。
「……さて、私達も」ーーぅふ!
エリーが中腰になり私にくっつく。
「ーー!ーー!」
そしてグリグリと体を押し付けてきた。
「え? え? なに?」ってか足痛いんーー
ああ、そっか。
「I can never thank you enough」
私はそう言ってポンポンとエリーの頭を撫でる。
「Thank you.Any time」
エリーはニカッと笑った。
そして2人で近くのバス停のベンチに座り、泥だらけになった2台のジェベルを眺める。
「ねえエリー、あのアンチコメなんだけどさ」
独り言のようにエリーに語りかける。
「私どうでもよくなっちゃった」
「きぐぅ~、私も」
「誰に何を言われたって関係ない、まして赤の他人の言葉なんて。エリーと(誰かと)楽しく走って笑う、それだけで十分だね」
ピェ~。どこからか同意するように草笛が聞こえた。
「さて、今回の動画は傑作になるよ~」
私はやる気を示すように腕を回す。
「期待してますよぉ」
エリーがマネーと親指と人差し指で輪っかを作る。
「コラ! この銭ゲバ!」
「HAHAHA~!」
2人で笑いあってゆっくりと帰り支度を始める。
ーーっと忘れてた。
「では~今日はこの辺で」
「良ければ高評価とチャンネル登録お願いします」
「ではでは~」ヾ( ・∀・)ノ
#DJEBEL250 #海刊オートバイ #俺RIDE #私RIDE #東○海平 #完全妄想オンローダー -
2020年04月13日
66グー!
「ヒカリちゃん今までご苦労様でした」
店長が私に花束を渡してくる
「ヒカリお疲れ様」「先輩お世話になりました」「新しい場所でも頑張って下さい」
同僚や後輩たちが拍手と共に応援の言葉をかけてくれる
「ありがとうございます」
私は何度も何度も頭を下げる。
ありがとうありがとうありがとうありがとう。っと握手を交わす
「ではありがとうございました~」
店を後にする……
「……ハァ」
緊張が解け、思わずため息が出た。
渡された花束を見る。
「苦手なのよね。こういうの」
何ともし難い居心地の悪さを感じながら、駐車場までの街灯に照らされた夜道を歩いていく……
皆の顔が頭の中でストロボのように流れる。
皆が私との別れを悲しんでくれた。
「まぁ、だからと言って戻りはしないんですけどね」
駐車場に着いた。
愛車のFZ400のシートに花束をネットでくくりつける。
「………」
花束が見事にひしゃげてしまった。
いや、流石にこれはイカンでしょ……
着ていたパーカーのファスナーを開け、体との間に花束を押し込む。
「うぅ」
濃厚な花の香りにむせそうになる。
て言うかむせた。
FZに火を入れる。
ブォンブォンと直4の良い音が刻まれる。
ヘルメットを被り空を見上げる。
花の香りに包まれながら見る夜空は、いつもよりも綺麗な気がした。
昔から人付き合いが苦手だった。
男女の中はもとより、同性間でも友達であっても苦手だった。
仲良くは出来る、しかし長いこと付き合っていると、自分や相手のアクが見えてきて疲れてしまう。
「お前さ繊細すぎ。思春期かよ」
元カレはそんな私を見て、大層めんどくさそうに呟いた。
「あんた、そんな人に言えるほど大した人間なの?」
友達の辛辣な言葉。
「分かってる」
分かっているんだけど、、、
「はぁぁ」
深夜の空港のフライトロード。
その道路脇に座り、タバコをふかす。
これからどうしたものか。
どこに行こうか? 次の仕事は何をすれば? そもそも、いつまでこんな人生の逃避行を続けるのか?
不安で心が押し潰されそうになる。
「ねえ、君はどう思う?」
FZに問いを投げる。
FZ400。いつぞやの職場で誘いを断れず免許を取らされて、これまた提案を断れずに買ってしまったバイク。
最初は嫌だった。でも気付けば今でも乗っているほどには気に入ってしまった。
そんな私の愛車。
「ーー」
無論、FZは何も言わない。
「しょうがない。とりあえず走るか」
タバコを地面に押し付け、携帯灰皿に入れる。
「どこ行きたい?」
FZに行き先を尋ねる。
「そっかそっか」
グローブを着け、ジャケットを羽織る。
物言わぬバイクに1人話しかけるなど端から見れば立派なーー
「メン○ラだね」
県を南から北へ上っていく。
途中、何度かコンビニに寄って缶コーヒーと暖を取る。
そしてオマケでタバコをふかしてはFZと会話。
少しずつ東の空が明るくなっていく。
「あ、やっば」
県境を越す手前でガソリンが心許なくなってきた。
最寄りのガソスタで、FZに奮発しハイオクを満タンに見舞う。
「どうだ。ハイオクは美味いか!?」
再び北上していく。
回転数高めでFZの音を存分に楽しむ。
しかし目的地に近づくにつれ、肌寒くなってきた。
「寒い! 私を風から守って~」
体を屈めてFZの小さなビキニカウルに潜り込む。
そして……
「到着~!」
山の展望台の広い駐車場、私は思わず声を上げる。
何とか間に合った。
まばゆい朝日が真っ正面から差し、私とFZを照らす。
眩しさに目を細める。
寒い山の朝。
夜通し走ったこともあり、すっかり体が冷えてしまった。
FZのエンジンに手を近付けて暖をとる。
「はぁ……綺麗」
見える朝日はあまりにも綺麗だった。
人生の逃避行。
この旅の終わりはまだ見えないけど。
今は少しだけ、この瞬間を楽しもうと思った。
「ふぅ~」
エンジンで温まった手をタンクに添える。
これからも私を支えてね。
走ってる時は私が君を支えるから。
ーーだから。
「これからもヨロシクね」
FZのタンクを撫でる。
私とFZの旅は終わらない。
行こう。
決意の朝を何度も迎えて。
今日もアクビをひとつ
変わらずタバコを吹かしてーー
待ってろよ。
私はなかなか手強いぞ。
次こそは負けないからな。
#FZ400 #海刊オートバイ #俺RIDE #私RIDE #東○海平 #人生楽ありゃ苦もあるさ -
2020年04月05日
52グー!
「行くよ、ジュリー♪」
私はフリスビーを持つ手に力を込める!
「それ~!」
空高くフリスビーを投げる。
フリスビーめがけ、愛犬のボーダーコリーのジュリーが弾丸のように走っていく。
見事にキャッチ。
「よしよ~し」
褒めて褒めてと帰ってきたジュリーの頭を撫でる。
じゃもう1回、私は再び空へとフリスビーを放り投げる。
「サトミ君から連絡来てたよ」
ドッグランから帰ってきてシャワーから上がると、夫がソファに寝そべりながら報告してきた。
「ふーん。何て言ってた?」
冷蔵庫のお茶を飲みながら尋ねる。
「ザイゼン先生とアズマ先生しんどいって」
「ハハハ!」
思わず吹き出した。そんな私の足にすり寄るジュリーを撫でる。
「あの2人と仕事とか胃にポリープが出来るわ」
「間違いない。で、来週末はよろしくって」
L字のソファに座りながら2人でジュリーに構う。
「分かった。後で連絡しとく」
「存分に楽しんどいでぅぅぅ!」
夫がジュリーに顔をベロベロ舐められる。
思わず、また吹き出した。
「アサクラ先輩ー」
後輩が私の名を呼ぶ。
「ここが○○で、分からないんですけどどうすれば良いですか?」
「ああ、ここはね。カテーテルをーーで後は内科の先生に指示を仰いで」
「ありがとうございます!」
後輩がカルテを纏めて去っていく。
「忙しそうだな」
サトミ君が声をかけてくる。
「ううん。こんなもんだよ、何か頼み事?」
仕事をこなしながら喋る。
「んや。日曜はよろしくって言いに来ただけ」
じゃあの。っとサトミ君が仕事に戻っていく。
「頑張ってね。2人に負けちゃイカンよ」
彼に檄を飛ばす。
サトミ君はガックリとうなだれて、軽く手のひらを上げた。
「じゃ。一旦休憩でーす」
先頭を走る店長が道の脇にバイクを停めて声を上げる。
続々と走るバイクとライダーが停まっていく。
「ーーふぅ」
私も一息をついて、愛車のR100GSを停める。
今日は待ちに待った近所のショップ開催林道ツーリング。
緩やかなフラットダートをのんびりと走るツーリングに私は参加していた。
しかし思いの外しんどく、すっかり汗だくになっていた。
ゴーグルとヘルメットをミラーに引っかけ、ポカリを体に流し込む。
「お疲れ」
サトミ君が涼しい顔で話しかけてくる。
彼の愛車はKTM1190アドベンチャー、ヘビー級オフロードを振り回してこの様子。
「元気だね~」
すごいなぁと思った。
「食べる?」
サトミ君が溶けかけの塩飴を差し出してくる
「うん。いらない」
「ハハハ!だよね!」
ベンチに座り体力を回復させる。
汚れた皆の愛車、談笑するメンバーの様子を眺める。
「どうも、こんにちは~」
私と同じ女性に話しかけられる。
「こんにちは」
とりあえず会釈。
「とても綺麗に乗られてますね~」
彼女が私のGSをキラキラした目で眺める。
「えへ。どうも」
愛車を褒められてにやけてしまう。
「BMWが好きなんですか?」
「うん、そうなんです。仕事柄、ドイツが好きになりまして……」
「あなたの愛車は?」
私は彼女に尋ねる。
「……あそこのです」
彼女が恥ずかしそうに列に並ぶバイクを指差す。
「ーーウソでしょ!」
私は思わず目を疑った。
彼女の愛車は、GAS GASの真っ青なパンペーラ250だった。
「渋いね~!」
「どうも♪」
しばしオフロードトークに花を咲かせる。
「オフロード走ってると違う自分に出会えて楽しいんですよ」
「分かる分かる!」
「お、なになに? えらく盛り上がってるじゃない」
サトミ君が出歯亀してくる。
「お、来たな太鼓持ち」
「ちょ!その呼び名やめて」
「フフフ♪」
「では皆さん!そろそろ出発しまーす!」
店長が号令をかける。
ぞろぞろと準備を始める。
「ではまた」
「はいッ」
「俺も俺も」
林道へと入っていく。
オフロード走ってると違う自分に出会えて楽しいんですよ
彼女の言葉を心の中で反響させる。
「良し!」
ヘルメットとゴーグルをしっかりと装着。
GSもといツーリングメンバーの愛車たちが、ドコドコと雄叫びを上げる。
土と落ち葉を巻き上げて。
木漏れ日と森林の香りを全身に感じて。
「心のオフロード入りまーす」
知らない私に会いに行こう。
#R100GS #海刊オートバイ #俺RIDE #私RIDE #東○海平 #親戚の看護師の子が結婚しました -
2020年03月28日
52グー!
人生の大きな岐路を前に、あの人に会おうと思った。
「…じゃあ。行ってくるね」
玄関で見送る母に短く告げる。
「行ってらっしゃい」
母がそう言って私のヘルメットを差し出してくる。
ーーうん。
ヘルメットを受け取り、愛車のVTRに火を入れる。
朝日に照らされながら、Vツインのミットを打つようなパルスが刻まれる。
黒いカウルに朝露が滴る。
「あの人によろしくね」
母が目を細め、アンニュイな笑みを浮かべる。
無言で頷いた。
ーー行くよ。
私はタンクを軽く撫で、昇る朝日を目指し出発した。
私と母は2人で生きてきた。
父のことが気にならなかった訳では無かったが、女手一つで育ててくれた母を思うと、聞こうとは思わなかった。
そんな人生の中、高校の悪い先輩のバイクにタンデムした時に転機が訪れた。
「どや!ホマレ恐いか!? オモロいやろ!」
先輩の言葉に答えることが出来ない。
私の中で燃えるようなナニかが、のたうち回っていた。
「……面白かったです」
先輩に短く感謝を述べ、満足そうに去っていく先輩を見送る。
その後、すぐ車校に入った。
そして免許とバリオスを手に入れて走り回った。
そんなある日。
夜走りを終えて、家に帰ると母に呼び止められた。
「あんたバイク乗ってるの?」
母の言葉が私に刺さる。
別にバイクを禁止されてるわけでは無かったが、なぜかとても心が傷んだ。
「怪我だけはしないでね」
母の泣きそうな顔と言葉。
「うん。気を付けます」
私は頷くことしか出来なかった。
そして歳を重ね、二十歳を過ぎて人生の大きな岐路に差し掛かり。
「あなたに話が有るの」
母が改まって。
「お父さんについて。どうか聞いてね」
話をしてくれた。
初めて自分の父のことを聞いた。
どんな人だったのか。そして母がどう思っていたのか、今どう思ってるのか。
「ごめんね……本当にごめんね」
涙ぐむ母を前にして、私は決心した。
「…ねえ」
母の手を握る。
「お父さんに会いに行ってもいい?」
私は桜の下、なんとなく頭上の空と桜を眺める。
父と会った。もっと言えば、父の経営するカフェに行った。
「あの…えっと。VTR1000Fカッコいいね」
引きつった笑みを浮かべた父。
「ありがとうございます。そちらのSPもカッコいいですね」
私は心臓が飛び出しそうになる緊張と、上擦る声を隠す為に憮然と答える
「…ありがとう」
モソモソとコーヒーを煎れる、カウンターの中の父を見つめる。
ーーよし。
覚悟を決める。
「……待ってます。ご馳走さまでした」
私は父を呼び出した。
そして。
「じゃ話を聞こうか」
桜の下、父が苦笑を浮かべて私を見つめる。
「来てもらってありがとうございます。」
私は頭を下げる。
「初めまして、私は魚谷ホマレと言います。……そして」
「坂本ショウマさん。私はあなたの娘です」
私は説明をすっ飛ばし本題を述べる。
「ーーやっぱりか」
父…ショウマさんが遠くを見つめる。
私は一通の手紙をショウマさんに差し出す。
「私、結婚するんです」
「……は?」
「結婚式に来てください」
「ーーッえ!?」
ショウマさんが目に見えて取り乱す。
無理もない。
いきなり娘が現れて、突然父となり、あまつさえ結婚式に来いと言うのだ。
招待状を前にモニョモニョと口ごもる。
「私はあなたを許しません」
私は正直な言葉を吐露する。
「………」
ショウマさんが私の言葉にハッと顔を上げ、そして唇を噛む。
「でも、もし貴方が私の父親として」
ーー母の愛した男性として
「来てくれるのなら」
ーー頑張ったお母さんに会ってくれるのなら
「あなたを許そうと思います」
「……」
ショウマさんが目を伏せる。
俺が? 今さら? どの面をさげて?
そんな葛藤が見てとれた。
「だめ…ですか?」
「う~ん、、、」
ショウマさんが口を手で覆い、深く深く思案する。
そんな様子を見てーー
ダメなの? 来てくれないの? 私は? お母さんは?
と、思わず目頭が熱くなって。
「ーーねえ」
思わずうつむく。
「一緒に行こうよ お父さん」
視界がゆがむ。
「家族……なんだよ?」
私はショウマさん……お父さんに震えながら招待状をーー
「ーー分かった」
お父さんが招待状を受け取った。
「ほら。涙を拭きなさい」
そしてハンカチで私の目尻を優しく撫でる。
「ホント。そういうところはホノカそっくりだなぁ~。そうやって彼氏君も落としたのかい?」
「……ヒミツ」
ふと私とお父さんの間に風が吹き、散っていた花びらが舞い上がる。
「なぁ、、、その、ホマレ?」
お父さんが おっかなびっくりに私の名を呼ぶ。
「ちょっと走らないかい? お前も分かるかもしれないが、バイクに乗ると言葉を交わさなくても気持ちが伝わると思うんだ」
「俺の走りで気持ちをお前に伝えたい。ーーだから」
お前の気持ちを俺にぶつけてくれないか?
「分かった」
私はぐちゃぐちゃになったメイクをジャケットの袖で拭う。
「私の気持ちを伝えるね」
「おう! どんと来い」
「私速いよ~♪」
お父さんと今までの時間を取り戻すように語り合う。
~~~~
「ちなみに、お前のお婿さん。俺の義理の息子はバイクに乗ってるのかい?」
「うん。私よりも速いよ♪」
「なにぃ! それは聞き捨てならんな~!」
「相棒は何だ! 1000トリか? まさかR1か?」
「H2~」
桜の名所に親子のエキゾーストノートが響き渡る。
父が前に、娘が前に。
舞うは花びら、バージンロード。
2台のVTRがラインをクロスさせ走る。
今やっと。その手に然りと勝利を掴んで……
#VTR1000F #海刊オートバイ #俺RIDE #私RIDE #東○海平 #(ヽ´ω`) -
2020年03月14日
45グー!
「よし! 」
私は気合いを入れる
「ふぅ……」
集中。キックを最適な位置に調整。
「ーーっふん!」
蹴り落とす!
チ、チ、カシュンーー失敗。
「………」
アイドルは4分の1上げ、チョークを全開。
「はぁ…」
再び集中……キックを調整。
「ーふ!」
蹴り落とす!
チ、カシュンーー失敗。
額を拭って、三度集中……
アクセルは開けない
「ーーふぅ!」
蹴り落とす!!
ドドンッ!
けたたましい音が鳴り響く!
E/Gが起きた。
チョークを半分閉めてしばらく暖気。
そして頃合いを見て、チョークを閉める。
「………」
腹に響くサウンドを感じながら、通常のアイドル位置へ。
あの独特なテンポが刻まれ始める。
「出発だ」
私はヘルメットのアゴひもを閉める。
去年の春、父を見送った。
「人は泣きながら生まれてくる。だからイく時は轟笑をもって閉じるべし」
生前の父のたわ言。
文字通り、笑いながら満足そうにイってしまった。
大いに笑って、少しばかり泣いて喪に服す。
そして、少しずつ父の遺品を整理していく。
そんな折りに。
「あ」
私は思わず声を漏らす。
それは父のガレージの中にカバーを被り鎮座していた。
カバーを取り払う。
「まだ有ったんだ」
ハーレーが居た。
ガソリンとホコリの匂いの混じるガレージ中、忘れられたように佇む鉄塊。
私がまだ中学生の頃に、父が乗っていたバイク。
父は目を子供のように輝かせ、このハーレーを磨いていた。
私も何度か後ろに乗せてもらったが……
「やだ! うるさい! くさい! 」
思春期の私には分からなかった。
まぁ、そんな言葉を聞き、当の父は高笑いしていたが。
ただ、それから父がバイクを見せびらかすことは少なくなった。
ふと、ナンバープレートの車検の月日を確認する。
今年いっぱいまで残っていた。
思わずハンドルに手を伸ばす。
「……あたたかい」
触った指先から熱を感じた。
シートに座り、両手でハンドルを握り車体を起こす。
「ッ! おっもぉ!」
ズッシリとした重さと鉄の軋み。
クラっとガソリンを吸い込んだような目眩を感じる。
「ねぇ~。何か有った~?」
母の声が家の方から響く。
「ううん! 何でもなーい」
ハーレーにカバーをかけ直す
「………」
私はそれを一瞥し、ガレージを後にする。
それからしばらくして、中型と大型の免許を取った。
そして、父のハーレーの整備をショップに頼む。
「うわぁ! ショベルじゃないですかッ!?」
ショップのオジさんが父のように目を輝かせる。
「あの、動かせるようにして欲しいんですが……」
私の言葉も上の空、オジさんの目はハーレー、ショベルに釘付け。
「あ、すいません! 承りました! お任せ下さい!」
私は父のショベルヘッドに乗ることにした。
苦労した、本当に苦労した。
セルも無ければ、何もない。
キックに悪戦苦闘。
車校での経験がまるで使えない。
修理費での苦心が可愛く思えるほどに手を焼いた。
でも。
「お! おぉ!」
乗るたびに父の気持ちを理解していった。
ショベルを通して昔日の父と対話する。
走る。眺める。撮る。
「血は争えんね~」
そんな私を見て、母が煎餅を頬張りながら呟く。
「明日、流星群を見に行くけど母さんも来る?」
「うーん」
母がうなる。
流星群は父と母の初デートでの思い出。
「とりあえず明日までに考えといて」
言ってショベルをガレージに納める。
そして棚に置かれたアルバムを開く。
挟まれた父の思い出の足跡に、私も写真を挟んでいく。
「明日は晴れると良いなぁ」
呟きながら心から願った。
そして翌日。
夜になり、冒頭のように出発の準備をしていると……
「お嬢さん」
聞きなれた声が私を呼ぶ。
「私も連れてって下さいな」
母がおめかしし、ヘルメットを準備していた。
「……もうぅ、母さ~ん遅いよ~」
ニヤケながらタンデムシートを急いで取り付ける。
「じゃ行くよ」
私の言葉に、母がしっかりと抱きついてくる。
スリーテンポのパルスを響かせ、走っていく。
「わぁ」
母がショベルのサウンドに紛れながら声を漏らす。
「お父さんとも、こんな風に走ってたの?」
「ーーうん」
「そっか」
少しスピードを緩める
「じゃ、これからは私と走ろうね!」
私は叫ぶ。
「うんッ!」
空を見上げる。
満点の星空、ひときわ輝く星が見えた。
「父さん」
ありがとう
「バイクって」
これからはそこから
「楽しいね」
私達のことを見守っててね
地面を駆ける一筋の光
空を駆ける一筋の光
後を追うのは、さてどちらだったか……
#FLH1200 #海刊オートバイ #俺RIDE #私RIDE #東○海平 #にわか知識ですいません -
2020年03月04日
54グー!
「俺とバイクどっちが大事なんだよ!」
カズキが半狂乱になりながら声を荒げる。
些細なことからのいつもの口喧嘩。
結局はどちらかが察して折れるいつものこと。
ただ、しかし今回に限っては
「ええ……。あんたがそれ言うん……」
参った。よもや女の私が男にそれを言われるとは、、、
バイクに乗り始めたのは学生の時の彼氏の影響だった。
ありきたりな話だが、彼の直菅で下品なZEPHYRに憧れて、車校に通いつめ、何とか中免を取得。
そして、お金と乗りやすさからビッグスクーターを買った。
毎夜毎晩、サンダル半キャップでネイキッドから原付スクーターまで寄せ鍋状態で騒音を撒き散らす。
今思えば汗顔の至りであるが、とてもとても楽しかった。
そして、それも卒業と社会人になるにつれて減っていって、、、
「はい。担当の者に変わります」
気付けば、今ではノルマと上司に神経を磨り減らし、会社とアパートの往復を繰り返していた
1日がとても長く感じる。
しかし振り返ってみれば1週間、1ヶ月、半年があっという間に過ぎていて。
「セツラ、おめでとう」
友達の おめでた連絡に機械的に返信を返す。
あの当時、つるんでいた友達はそれぞれに幸せになっていて
過去のあの日々を何度も何度も思い返す。
「……バイクに乗らなくちゃ」
思い立った。
久方ぶりに某2輪販売検索サイトにアクセスする。
バイクの形、地域、販売店を絞っていく。
アポを取り休日に訪問。それを繰り返していく。
それに合わせてヘルメット、ジャケット、パンツ、ブーツと装備を揃えていく。
そして。
「ここをこうで…○○で、△△で」
バイク屋の説明をヘルメット越しに聞く。
しかし目と意識は目の前の黒いバイクに釘付け。
インパルス400を買った。
特別これが欲しかった訳ではなかった。ただ、私の諸々の条件にこのバイクが丁度良かった。
「…………」
ふと見ると、ここまで乗せてきてくれた彼氏のカズキが店頭のバイクを見ている。
彼もバイクに乗るんだろうか?
「しかし意識が高いですね」
「ーーえ?」
店員の言葉に意識を戻す。
「いえですね。感心しまして、、、ほら、最近のライダーさんてカジュアルなスタイルが本当に多いんですよ」
「…はぁ」
「でもお姉さん。フルフェイスにしっかりプロテクターの入った上下にブーツ、グローブ。素晴らしいことですよ!」
「ーーどうも」
思わず恐縮する。
言えない。かつてサンダル半キャップで走っていたなんて。
「なぁ、まだ出られんの」
カズキが私に耳打ちしてくる。
「あ、すいません。ではそろそろ行かれますかッ!?」
店員さんが察して、いそいそと道路に向けてバイクを移動させる。
「何? じぇらしー?」
「うるせぇ。後ろから俺が付いちゃるけん。はよ行くぞ」
ぶっきらぼうなカズキ、これは確実に妬いてるな。
「では ありがとうございました!」
店員さんの言葉を聞きながら、インパルスに跨がり車体を起こす。
多少の重量感に緊張
イグニッションをON。
ブォン!っと体を震わす音と振動に、私の気持ちにも火が入った。
サイドスタンドを蹴りあげ、ローに入れる。
「お気を付けて! 本当にありがとうございました! ご安全に!」
店員さんの丁寧なお見送り。
ペコッと軽く会釈する。
ブィンブィンと多少ギクシャクしながら数年ぶりに公道へとデビューする。
「……ひぁ」
おッかなビックリ、興奮に声を上げながらミラーを確認する。
深々と頭を下げる定員さんと、ドアに肩肘をつきながら運転するカズキ。
速度を上げながら、ギアも上げていく。
思わずニヤけてしまう。
私ってまだまだ やれんじゃん!
「んふぅ」
全身を通して伝わってくるモノに思わず声が漏れる。
すべては ここから!
まだまだこれから!
ここから私が始まるんだ!
#インパルス400 #海刊オートバイ #俺RIDE #私RIDE #東○海平 #過去の愛車に思いを馳せて
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