マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

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    全神経を研ぎ澄ませて峠を走り抜けていく!
    右─左─ギアを1へ踏み落とす!
    途端、回転数が跳ね上がりエンジンが雄叫びを上げてマフラーから絶叫が木霊する!
    カーブを抜けてストレートへ。
    スロットルを根性で開けていく!
    迫りくるキツい右カーブ。
    ふと前方に父親とその愛車、CBR929RRのテールランプが見えた。
    「イケる!!!」
    早鐘を打つ心臓に、さらにアドレナリンが流れ込む!
    ビリビリとした恐怖、一寸先に見える◯の狭間に指がブレーキへと伸びる。……グッと堪える。
    ──まだ。
    眼前に迫るカーブ!
    刹那、糸ほどの細い光るラインが見えた。
    今!!!
    ブレーキを握り込む!
    ジャックナイフ寸前の綱渡りのようなタイトブレーキ、恐怖と興奮に歯が割れそうなほどに食い縛ってラインをなぞっていく──
    見事にパス、眼前に長いロングストレートが広がる。
    そのわずか先にCBRのテールランプを捉えた。
    フルスロットル! 身を屈めてロケットのようにソレ目掛けて跳んでいく。
    1000ccクラスのフル加速、轟音と針の穴ほどに狭まっていく世界で
    テールランプの赤を睨み付ける。
    ……だけど。
    「あ」
    これはどういうことだ?
    文字通りスルスルとソレは。
    父親とCBRが私から遠ざかっていた。
    スロットルを緩める。そしてガス欠でもしたのように路肩へと愛車を停める。
    「………」
    ヘルメットを脱ぎ、前方を眺める。
    遥か前方、峠を上っていく父の背中とCBR929RRの後ろ姿が陽炎に消えていった……

    バイクに乗り始めたのは父親の影響だった。
    古くさいバイクを、まるで宝物のように取り扱う父親、その姿を今でも覚えている。
    私はそんな父の姿が子供のように思えて嫌いだった。
    なんで他の所のお父さんは外車とか、キラキラした高級車に乗ってるのに家のお父さんはバイクなんて乗ってるんだろう……
    上手く言えないけど、ソレが恥ずかしかった。
    「そんなガラクタ売ってよ、他の所のお父さんみたいにベンツとかレクサス乗ろうよ」
    そんな事を言ったこともあった。
    「ああ、そのうちな」
    すると父は決まってそんな事を言うのであった。
    そして月日は流れて、私は高校を卒業し社会人になった。
    そんなある日に、仕事から帰ってきてボンヤリと眺めていたニュース、それは訪れた。
    ホンダのバイクレーサーの訃報を告げるモノだった。
    生前の彼の人生や輝かしい戦歴が詳しく説明される。
    その中の1枚の写真、ソレが私の目に焼き付いた。
    カラフルなマシンを駆る彼の姿、ソレが父の姿と重なったのだ。
    私の中に竜巻のようなうねりが生まれる。よく分からない強い強いチカラが私を支配する。

    ──バイクに乗ろう。
    そう思った。

    それからは早かった。
    目を白黒させる母をよそに、テキパキと教習を済ませ。
    チカラに導かれるようにホンダのショップへと足を運び、書類にポンポンと印鑑を押して。
    私の元にCBR1000RR SP SC77がやって来た。
    「本当に大丈夫ですか?」
    心配そうなショップのお兄さん。
    「あらら~」
    なぜか納車に付いてきた母親。
    「では! 行ってきます」
    会釈して私はおニューの装備に身を包んで1000ダボ? と駆け出した。

    走って走って腕を磨いていく。
    別に速くなることが目的じゃ無かったように思う。
    走ることが楽しかった。
    でも目標は有った。
    にこやかに笑い父が私を追い抜いて走り去っていく……
    「お父さんに勝ちたい!」
    「あのニチャニチャした笑顔をギャフンと云わしたい!」
    そう思ったんだ。

    ガックリと肩を落とし、ゆるりゆるりと帰っていく。
    「また勝てなかったなぁ」
    ぶつくさと文句を垂れながら家路を走っていく。
    おかしいなぁ~
    排気量でもパワーでも勝ってんだけどなぁ~
    やっぱアレかな~
    まだまだ下手っぴなんだろうなぁ~

    ファァァァァーンッ!!!
    父のCBRの雄叫びが遠く聞こえた。

    ……ちくしょう。
    絶対に次は勝ってやる!

    ・・・・・
    「ただいま」
    私は家の倉庫、父のCBRの横に自分のCBRを停めて母に声をかける。
    「おかえり。遅かったね」
    母がスイカを切りながら答える。
    「どう? 今回は勝てた?」
    「ダ~メ。途中まで食い下がったけど、最後の伸びで千切られちゃった」
    スイカを2つほど拝借。食べながら母に結果を報告する。
    「あの人速かったもんね~」
    「奥大山のパープルイエロースターだったっけ?」
    私は言いながら笑いそうなる。
    「そうそう! ホント、馬鹿よね~」
    母が懐かしそうに言って、笑って、ちょっと顔を背ける。
    「だね~」
    私は拝借したもう一つのスイカを皿に移す。
    「だそうですよ」そして。

    「パープルイエロースター」
    私はスイカを仏前の笑う父に供えた。
    オマケで割り箸を突き刺したキュウリとナスも供える。

    網戸の向こう側、倉庫に並ぶ2台のCBRの方より風が吹き込む……

    「来年は負けないからね」
    スイカと特製の自信作を前に笑う父、私も笑いかけてやった。


    #CBR1000RR #CBR929RR #私RIDE #俺RIDE #東◯海平 #お盆

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