マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

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    「ヒカリちゃん今までご苦労様でした」
    店長が私に花束を渡してくる
    「ヒカリお疲れ様」「先輩お世話になりました」「新しい場所でも頑張って下さい」
    同僚や後輩たちが拍手と共に応援の言葉をかけてくれる
    「ありがとうございます」
    私は何度も何度も頭を下げる。
    ありがとうありがとうありがとうありがとう。っと握手を交わす
    「ではありがとうございました~」
    店を後にする……

    「……ハァ」
    緊張が解け、思わずため息が出た。
    渡された花束を見る。
    「苦手なのよね。こういうの」
    何ともし難い居心地の悪さを感じながら、駐車場までの街灯に照らされた夜道を歩いていく……
    皆の顔が頭の中でストロボのように流れる。
    皆が私との別れを悲しんでくれた。
    「まぁ、だからと言って戻りはしないんですけどね」
    駐車場に着いた。
    愛車のFZ400のシートに花束をネットでくくりつける。
    「………」
    花束が見事にひしゃげてしまった。
    いや、流石にこれはイカンでしょ……
    着ていたパーカーのファスナーを開け、体との間に花束を押し込む。
    「うぅ」
    濃厚な花の香りにむせそうになる。
    て言うかむせた。
    FZに火を入れる。
    ブォンブォンと直4の良い音が刻まれる。
    ヘルメットを被り空を見上げる。
    花の香りに包まれながら見る夜空は、いつもよりも綺麗な気がした。

    昔から人付き合いが苦手だった。
    男女の中はもとより、同性間でも友達であっても苦手だった。
    仲良くは出来る、しかし長いこと付き合っていると、自分や相手のアクが見えてきて疲れてしまう。
    「お前さ繊細すぎ。思春期かよ」
    元カレはそんな私を見て、大層めんどくさそうに呟いた。
    「あんた、そんな人に言えるほど大した人間なの?」
    友達の辛辣な言葉。
    「分かってる」
    分かっているんだけど、、、

    「はぁぁ」
    深夜の空港のフライトロード。
    その道路脇に座り、タバコをふかす。
    これからどうしたものか。
    どこに行こうか? 次の仕事は何をすれば? そもそも、いつまでこんな人生の逃避行を続けるのか?
    不安で心が押し潰されそうになる。
    「ねえ、君はどう思う?」
    FZに問いを投げる。
    FZ400。いつぞやの職場で誘いを断れず免許を取らされて、これまた提案を断れずに買ってしまったバイク。
    最初は嫌だった。でも気付けば今でも乗っているほどには気に入ってしまった。
    そんな私の愛車。
    「ーー」
    無論、FZは何も言わない。
    「しょうがない。とりあえず走るか」
    タバコを地面に押し付け、携帯灰皿に入れる。
    「どこ行きたい?」
    FZに行き先を尋ねる。
    「そっかそっか」
    グローブを着け、ジャケットを羽織る。
    物言わぬバイクに1人話しかけるなど端から見れば立派なーー
    「メン○ラだね」

    県を南から北へ上っていく。
    途中、何度かコンビニに寄って缶コーヒーと暖を取る。
    そしてオマケでタバコをふかしてはFZと会話。
    少しずつ東の空が明るくなっていく。
    「あ、やっば」
    県境を越す手前でガソリンが心許なくなってきた。
    最寄りのガソスタで、FZに奮発しハイオクを満タンに見舞う。
    「どうだ。ハイオクは美味いか!?」
    再び北上していく。
    回転数高めでFZの音を存分に楽しむ。
    しかし目的地に近づくにつれ、肌寒くなってきた。
    「寒い! 私を風から守って~」
    体を屈めてFZの小さなビキニカウルに潜り込む。
    そして……

    「到着~!」
    山の展望台の広い駐車場、私は思わず声を上げる。
    何とか間に合った。
    まばゆい朝日が真っ正面から差し、私とFZを照らす。
    眩しさに目を細める。
    寒い山の朝。
    夜通し走ったこともあり、すっかり体が冷えてしまった。
    FZのエンジンに手を近付けて暖をとる。
    「はぁ……綺麗」
    見える朝日はあまりにも綺麗だった。
    人生の逃避行。
    この旅の終わりはまだ見えないけど。
    今は少しだけ、この瞬間を楽しもうと思った。
    「ふぅ~」
    エンジンで温まった手をタンクに添える。
    これからも私を支えてね。
    走ってる時は私が君を支えるから。
    ーーだから。
    「これからもヨロシクね」
    FZのタンクを撫でる。
    私とFZの旅は終わらない。
    行こう。
    決意の朝を何度も迎えて。
    今日もアクビをひとつ
    変わらずタバコを吹かしてーー

    待ってろよ。
    私はなかなか手強いぞ。
    次こそは負けないからな。


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