ハッシュタグ これじゃ番犬じゃなくて狂犬だよのカスタム・ツーリング情報1件

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    • マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

      2021年04月10日

      54グー!

      「ステイ!」
      私の言葉にボーダーコリーのシューぺリアと、バーニーズのトラバントが伏せて私の顔を伺う。
      「ジャンプ!」
      私は高く手を掲げる、2匹が勢いよく立ち上がり、ピョ~ン♪と跳ねて、私の手にタッチを行う。
      「バンッ!」
      私は指でピストルを作り、2匹に向けて放つ。
      (ワフッ)(ウォフ)
      2匹がコロンと寝転がる。
      シューぺリアとトラバントが流し目に私を見る……

      「良し!」
      (ワンッ!)(ンフッ!)

      私の言葉を聞くやいなや、ピョンピョン跳ねながら、2匹がじゃれついてくる。
      「グー! ベリーグーね♪良し良~し♪」
      ご褒美の生ジャーキーを配りながら2匹を撫でる。
      「流石っすね~。見事なもんですわ」
      近くに居た同僚のポンタが顔を、柴犬のラオウに舐められながら喋る。
      「そりゃドッグトレーナーですから──っぁ!」
      大型犬の2匹にじゃれつかれ、私は倒れて。
      「キャ~!!!」
      ここぞとばかりに、顔や手を舐められてベロンベロンになった。

      「シュペ~、トラ~」
      気品のある飼い主さん夫婦が現れて、2匹を呼ぶ。
      2匹がそれに気付き、飼い主さん達の元へ走っていく。
      リードを優しく付けられ、2匹の尻尾が嬉しそうに揺れる。
      「では、また木曜日に」
      「はい。今日もありがとうございました」
      にこやかに飼い主さん夫婦が笑う。
      (ワフッ♪)(ウォフ♪)
      シューぺリアもトラバントも笑った。

      私はドッグトレーナーだ。
      昔から犬が好きだった。
      小さい頃から、たくさんの家族を飼ってきた。
      そんな中で、訳有りな わんこと会った。
      暴れん坊だった、気にはなっていたけど、、、
      自分や家族が噛みつかれるのが恐くて手が出せなかった。
      しばらくして、その子は飼い主に噛みついてしまった。
      ──救えなかった。
      だから、次は救いたいと思った。

      「ところで姐さん」
      ポンタが私を愛称で呼ぶ。
      「週末楽しんできて下さい」
      ポンタが言って笑う。
      「そうね。久しぶりだもんね~」
      私も週末のことを考えて笑った。

      「ども~、予約してた──」
      新たなお客様がやって来て
      ワンワンワンワン!!!
      ワンコが弾丸のように飛んできて
      「わぁ~~!!!」
      「おぉ~~!!!」
      2人でタジダジになった。

      ドドドドドドドド!!!!!
      4台で連なって走っていく。
      今日は仲間内のツーリングだ。
      愛車は皆、イントルーダー400クラシック。
      マシンは一緒だがカスタムは様々、ナローやインスパイアなど4台4人で思い思いのスタイルを作っていた。
      「到着~」
      先頭を走る私は言って、後方に手信号を出し、道の駅へと入る。
      「ふぃ~」「お疲れッす」「あ、豚串美味そ~」
      みんなでガヤガヤしながら楽しむ。
      楽しい。
      みんなも楽しそうだ。
      仕事でもプライベートでも世話を焼く。
      性分なのだろうか。たまらなく、それが楽しかった。
      そして。
      また連なって走っていく。
      そんな時に
      「うおっ!」
      仲間の1人の声がインカムを遠し聞こえた。
      それと同時に。
      ───ヒュイン!!!
      「きゃっ!」
      凄まじい速さで、私達を何かが追い抜いて行った。
      それは、さらに前方でテールランプを光らせて追い抜いていく。
      少し古いスポーツバイクだろうか?
      「あっぶねぇ」「頭沸いてんか?」
      インカムで愚痴が飛び交う。
      「だね~」
      私も愚痴った。

      そんなある日。
      「あの、よろしくお願いします!」
      バイクのチームに新たな仲間が加わった。
      小柄な可愛らしい女の子がペコペコと頭を下げる。
      「うんうん!」「ひゅ~♪」「俺、マサヒコ」
      野郎達が色めき立つ。
      「スミレです!」
      彼女、スミレちゃんも勿論、インクラ乗りだ。
      大きな車体に小柄な彼女、とても微笑ましかった。
      どう言ったら伝わるだろうか、、、
      「ポメラニアンみたい」
      仲間内の1人が呟く。
      なる程、言い得て妙だなと思った。
      ツーリングに出かける。
      野郎達がインカムを通してスミレちゃんに話しかける。
      あぁ姫よ、蝶や花よ、といった感じだった。
      「アハハ」
      思わず乾いた笑いが出た。
      現金なものである。

      少しずつチームの形が変わっていく。
      今までは私が皆を引っ張る感じだった。
      ──それが。
      「ねぇスミレちゃん知ってる?」
      「あのね、スミレちゃんこれはね」
      「あ、そうだスミレちゃん」
      スミレちゃん スミレちゃん スミレちゃん

      「…………」
      気が付けば私は1人で温泉街に来ていた。
      足湯に浸かりながら景色を眺める。
      「……たのしいな」
      誰に言うでもなく呟く。
      ふと、湯槽の水面を見る。
      映るのは、据わった眼力と力仕事に鍛えられたソレ。
      ロットワイラーがそこには居た。
      「あの」
      話しかけられる。
      「隣いいすか? 」
      言われて相手を見る。
      「あっ」
      相手が声を上げる。
      「え」
      私も声を上げた。
      「姐さん」「ポンタ」
      カジュアルライダーな姿のポンタが、そこには居た。

      「やっぱ~、みんなソッチの方が良いよね~」
      私は何となく、思ってたことを素直にポンタに喋る。
      「あぁ~、ですかね~」
      ポンタがバツが悪そうに目を伏せる。
      「………」「………」
      お互いそれ以上は話が続かず、足湯に浸かり、温泉街を眺める。
      「姐さんはどうしたいんです?」
      ポンタが尋ねる。
      「……分かんない」
      私は答えられなかった。
      「ポンタはどうしたら良いと思う?」
      今度は私がポンタに尋ねる。
      「う~ん。俺の口からは何とも」
      ポンタはそう言って。
      「っでも!」
      勢い良く立ち上がった!

      「俺は好きですよ」

      「……え?」
      私は思わず思考が止まる。
      「あの、その……何て言うか」
      ポンタが改まる。
      「俺は愛玩犬より頼れる番犬の方が好きです」
      「………」
      「あ、中でもロットワイラーとか大好きですね」
      言うが先か、ポンタの顔がみるみるうちに赤くなっていく──

      「じゃそういうことなんで!あの姐さん、お大事に!」
      ポンタが急いで靴を履き、足早に走っていく。
      そして遠くに止まっていたバイクに跨がった。
      ──あれはGSX-R400だろうか。

      ブォン! ブォブォブォブォッ!
      ペコペコと幾度も私に会釈をして
      ブォォォォォォオン!!!
      ポンタは去っていった。

      「ふーん、なるほどね」
      私はそう呟いて。
      「よいしょ」
      立ち上がる。そして。
      クンクン!
      私は鼻を使い辺りの匂いを嗅ぐ。

      ふむふむ、なるほどね
      香る硫黄の香り、その中に仄かに漂うアイツの匂い。

      「ワンワンワォーン!」
      愛車のインクラに跨がり、愛車を起こす。
      ドドン! ドドドドドドド!
      ゆっくりと、匂いを追って走り出す。

      鼻と耳をそばだてる。
      待ってなさい、きっとすぐに捕まえてあげるから。

      「逃がさないからね」
      絶対に逃がさないんだから!


      #イントルーダークラシック400 #俺RIDE #私RIDE #東◯海平 #これじゃ番犬じゃなくて狂犬だよ

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