マリン後輩さんが投稿したバイクライフ

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    「よし! 」
    私は気合いを入れる
    「ふぅ……」
    集中。キックを最適な位置に調整。
    「ーーっふん!」
    蹴り落とす!
    チ、チ、カシュンーー失敗。
    「………」
    アイドルは4分の1上げ、チョークを全開。
    「はぁ…」
    再び集中……キックを調整。
    「ーふ!」
    蹴り落とす!
    チ、カシュンーー失敗。
    額を拭って、三度集中……
    アクセルは開けない
    「ーーふぅ!」
    蹴り落とす!!
    ドドンッ!
    けたたましい音が鳴り響く!
    E/Gが起きた。
    チョークを半分閉めてしばらく暖気。
    そして頃合いを見て、チョークを閉める。
    「………」
    腹に響くサウンドを感じながら、通常のアイドル位置へ。
    あの独特なテンポが刻まれ始める。
    「出発だ」
    私はヘルメットのアゴひもを閉める。

    去年の春、父を見送った。
    「人は泣きながら生まれてくる。だからイく時は轟笑をもって閉じるべし」
    生前の父のたわ言。
    文字通り、笑いながら満足そうにイってしまった。
    大いに笑って、少しばかり泣いて喪に服す。
    そして、少しずつ父の遺品を整理していく。
    そんな折りに。
    「あ」
    私は思わず声を漏らす。
    それは父のガレージの中にカバーを被り鎮座していた。
    カバーを取り払う。
    「まだ有ったんだ」
    ハーレーが居た。
    ガソリンとホコリの匂いの混じるガレージ中、忘れられたように佇む鉄塊。
    私がまだ中学生の頃に、父が乗っていたバイク。
    父は目を子供のように輝かせ、このハーレーを磨いていた。
    私も何度か後ろに乗せてもらったが……
    「やだ! うるさい! くさい! 」
    思春期の私には分からなかった。
    まぁ、そんな言葉を聞き、当の父は高笑いしていたが。
    ただ、それから父がバイクを見せびらかすことは少なくなった。
    ふと、ナンバープレートの車検の月日を確認する。
    今年いっぱいまで残っていた。
    思わずハンドルに手を伸ばす。
    「……あたたかい」
    触った指先から熱を感じた。
    シートに座り、両手でハンドルを握り車体を起こす。
    「ッ! おっもぉ!」
    ズッシリとした重さと鉄の軋み。
    クラっとガソリンを吸い込んだような目眩を感じる。

    「ねぇ~。何か有った~?」
    母の声が家の方から響く。
    「ううん! 何でもなーい」
    ハーレーにカバーをかけ直す
    「………」
    私はそれを一瞥し、ガレージを後にする。

    それからしばらくして、中型と大型の免許を取った。
    そして、父のハーレーの整備をショップに頼む。
    「うわぁ! ショベルじゃないですかッ!?」
    ショップのオジさんが父のように目を輝かせる。
    「あの、動かせるようにして欲しいんですが……」
    私の言葉も上の空、オジさんの目はハーレー、ショベルに釘付け。
    「あ、すいません! 承りました! お任せ下さい!」
    私は父のショベルヘッドに乗ることにした。
    苦労した、本当に苦労した。
    セルも無ければ、何もない。
    キックに悪戦苦闘。
    車校での経験がまるで使えない。
    修理費での苦心が可愛く思えるほどに手を焼いた。

    でも。

    「お! おぉ!」
    乗るたびに父の気持ちを理解していった。
    ショベルを通して昔日の父と対話する。
    走る。眺める。撮る。
    「血は争えんね~」
    そんな私を見て、母が煎餅を頬張りながら呟く。
    「明日、流星群を見に行くけど母さんも来る?」
    「うーん」
    母がうなる。
    流星群は父と母の初デートでの思い出。
    「とりあえず明日までに考えといて」
    言ってショベルをガレージに納める。
    そして棚に置かれたアルバムを開く。
    挟まれた父の思い出の足跡に、私も写真を挟んでいく。
    「明日は晴れると良いなぁ」
    呟きながら心から願った。

    そして翌日。
    夜になり、冒頭のように出発の準備をしていると……
    「お嬢さん」
    聞きなれた声が私を呼ぶ。
    「私も連れてって下さいな」
    母がおめかしし、ヘルメットを準備していた。
    「……もうぅ、母さ~ん遅いよ~」
    ニヤケながらタンデムシートを急いで取り付ける。

    「じゃ行くよ」
    私の言葉に、母がしっかりと抱きついてくる。
    スリーテンポのパルスを響かせ、走っていく。
    「わぁ」
    母がショベルのサウンドに紛れながら声を漏らす。
    「お父さんとも、こんな風に走ってたの?」
    「ーーうん」
    「そっか」
    少しスピードを緩める

    「じゃ、これからは私と走ろうね!」
    私は叫ぶ。

    「うんッ!」

    空を見上げる。
    満点の星空、ひときわ輝く星が見えた。
    「父さん」
    ありがとう
    「バイクって」
    これからはそこから
    「楽しいね」
    私達のことを見守っててね

    地面を駆ける一筋の光
    空を駆ける一筋の光
    後を追うのは、さてどちらだったか……


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