マリン後輩
運営にフォトコン6年無視されるくらいには
写真撮るの下手ぴっぴ _(:3」∠)_ でも頑張る
Rainy Wet Missile Tourer ZZR400限界難民
ZX-12R 3/08 83600オ・フィ換 次86600オ
Z125プロ 1/25 19600オ換 次21600オ・フィ
今年の春で息子が社会人になった。
祖父の代より住んでいる我が家、私と妻とでは手広になってしまった。
「久しぶりに乗ってみるか」
ふと、このところご無沙汰だった相棒に会いに行こうと思った。
トラクターを納めている倉庫の中、幌をかけられた相棒から幌を引っ剥がす。
「よう、久しぶり」
相棒、GSX-R750に久方振りの日光が眩しく差す。
その当時、アマチュアからル・マン、WGPで活躍するスズキに惚れ込み、カツカツにローンを組んで手に入れた相棒。
あの頃は将来も考えず、草レースにツーリングに明け暮れていた、、、
「若かったなぁ~」
忘れていた熱いモノが、昔日の興奮と共に甦ってくる。
最後に乗ったのはいつだったか……
座り込み相棒のコンディションを確認する。
タイヤはオシャカ、移動を試みればキチキチと異音、E/Gもタンクも覗けばドロドロ。
この数年は、なにかと忙しく放置してしまっていた。
「まずは、お山のカミさんに相談だな」
私は思い立ち、出掛けることにした。
「もう一度、バイクに乗ろうと思うんだ」
私は妻に、献上品のケーキを差し出しながら申し出る。
「ふぅん。そう」
妻は興味無さげ言って、ケーキを皿に移す。
「反対しないのか?」
「子供も1人立ちしました。私や家計への負担を抑えるなら良いんじゃないです?」
「……そっか」
肩透かしながら、テーブルで小さくガッツポーズをとる。
「事故だけはしないでね」
妻がケーキを頬張りながら小さく、しかし確りと聞き取れる声で私に釘を刺す。
「ああ。約束する、ありがとう」
私も確りと頷いた。
「うわ! ジスペケナナハンじゃないすか!」
相棒を持ち込んだショップの兄ちゃんが目を輝かせる。
「知ってるのかい?」
「知ってるも何も、初代で~、油冷で~、油冷によって~、他メーカーよりも軽さで~」
兄ちゃんがまるで宝物を見つけたように饒舌に言葉を紡ぐ。
「………」
驚いた。よもや相棒よりも年下であろう若い子たちが、コイツの歴史を語るとはーー
「そうだよ、そうなんだよ」
思わず年甲斐もなく子供のように語り合う。
「しかし、750ってまだ売ってるんだね~」
ショップに並ぶ最新のSSの中に混じるGSX-R750を見て驚く。
てっきり、レギュレーションと共に1000ccに駆逐されたと思っていたが……
「スズキですよ。浮沈を支えた750を切るわけありませんよ」
「ははは。そうかそうだね」
その言葉に思わずにやける。
「あ、そういえば。その750買いたいってお客さん来たんすよ」
「へぇ~」
「買われるのも時間の問題っすね~」
ーーそうか。
「じゃお願いします」
相棒を預け、丁寧に見送りまでしてくれた兄ちゃんに手を振る。
ふと振り返り、並んでいたGSX-R750のことを考える。
「大事にしてもらえよ」
老婆心ながら750に檄を飛ばした。
ボオォォォン!
水冷には無いガラガラ音と共に喧しい音を奏でる。
近所の軽いワインディング、久方ぶりの興奮だ。
懐かしい音、匂い、振動、熱。
クラッチを握り、軽くスロットルを煽る
ボォン!ボォン!
3000回転から始まるタコメーターの中、忙しく針が跳ねた。
「ハハハハ」
仕事に追われ、子育てに苦心し、当たり前の大人になるために、いつの間にか忘れていたモノ。
「帰っていたぜ」
少しだけ速度を上げる。
「ふぅ」
開けた海岸線の駐車場。
新調したヘルメットを脱ぎ、相棒の横に座る。
疲れてしまった。
やはり、こればかりは20年前と一緒とはいかないか、、、
額から頬に伝う汗を袖で拭う。
傍らの相棒がチリチリと音を立てる。
「………」
見ればカウルやタイヤに所々、剥がれが見えた。
「お互い年食ったなぁ……」
ブオオオオォォォン!
けたたましい音が鳴り響く。
見れば海岸線の向こうにバイクが見えた。
ヘッドライトの光が近づいてくる……
そして、同じように駐車場に入ってきた。
「え?」
しかも、何を思ったのか相棒の横に止めてくる。
不審に思いながら立ち上がる。
見れば先日の最新のGSX-R750だった。
跨がるライダーがミラーシールドのヘルメットを脱ぐ。
「うぃーす」
ライダーが私に微笑んでくる。
「ーーは?」
私は思わず声を上げる。
「久しぶり父さん」
ライダーが私をそう呼ぶ。
はにかむ息子がそこに居た。
「お前バイク乗ってたのか」
「うん。実は免許取ったんだ」
息子と缶コーヒーを飲みながら、久しぶりに語り合う。
「驚いたよ」
「驚かせたかったからね」
聞けば、以前よりバイクに興味はあったらしい。
しかし、言えば反対させると思い我慢していたとのこと。
そして社会人となって免許を取り
、意気揚々とバイクを買ったという。
「ホントは父さんのジスペケ乗りたかったんだけどね」
「ほう」
「でも、コイツに惚れちゃって」
息子が自分のジスペケを愛おしそうに眺める。
そうか。お前も相棒を見つけたか……
「じゃ次は嫁さんだな」
「うるさいやい」
「母さんみたいな美人さんを捕まえるんだぞ」
「はいはい」
「相手は居らんのか?」
「あぁ~。さて、そろそろ走るかなぁ!」
息子がいそいそと準備をし、足早にジスペケに火を入れる。
「あ、待て。バカ息子!」
私も急いで準備し、相棒に火を入れる。
時代を越えて、形を変えて。
しかし変わらぬ名前と思いを抱いて。
2台のGSX-Rが雄叫びを上げる。
#GSX-R750 #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 #E/Gのボアストローク変わってないとかマジ!?
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04月03日
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#好きな惣菜発表ドラゴン
#YZF-R1 #GSX-R1000 #GSX-R750 #CBR1000RR
#Z1-R #KATANA #ビモータSB8? -
01月25日
49グー!
お久しぶりですぅ(⑉• •⑉)‥
久々に‼️ 1100が修理から戻って来なくてはや2年💧
いい加減我慢できなくて 大型バイク2台目に手を出してしまあました🤣 GSX-R750k1✨
やってしまいましたよ💦 しかもナンバー取りに行ったらなんと、1000番でした〜ꉂ🤣𐤔コレは運命の車両ですね!ꉂ🤣𐤔
コチラも大事にしますわ〜!✨
何処かでお会い出来ましたら話しかけてあげて下さい🙏
よろしくお願い致します!
#GSX-R#750#GSX-R750 #運命のバイク#スズキ #大型バイク2台持ち -
GSX1100S KATANA
2023年11月05日
48グー!
先週は運良く休日に晴れが重なって、この時期にはめずらしくバイク三昧な時間を過ごせた俺氏。
まず1日。
やはり偶然は必然に、先月ご一緒したR750さんに誘われバリオスさん、SRさんと秋山郷へ。あたくし新潟県民でありながら行った事がありませんでした。地元民、近所の観光スポットには行かない法則。
休館中、林道走行時に先頭のSRさんがクマの親子を2回見かけたと報告。あれはカーブ注意のクラクションじゃなかったのね~(笑)
そして3日。
何気なくモトクルを眺めていたら、岡山の@Q太郎さんがなんとこちらにおられるとの投稿発見!ご迷惑かも?と4秒悩みましたが思いきってDM発射!自宅から10分のホテルに宿泊とのこと、都合を合わせていただき道中少しだけご一緒させていただきました\(^-^)/
待ち合わせ場所に@けろりんさんとのNEW刀ペア、お揃いの斬のカンバン、カッチョえぇ!!
上越から戸隠まで裏道コースでご案内してお蕎麦屋さんで昼食後お先に離脱。
いやいやいやいや
両日共に偶然(クマ含む)と新しい出会い(クマ含む)の1日になり、笑顔の絶えない時間を過ごさせていただきました。
今週はどんな新しい出会いが待っているのか…オラ、ワクワクすっぞ(笑)
出会い出会った出会うみなさんに感謝!ありがとうございます(^-^)
#GSX1100S
#高気圧鉄騎兵団
#GSX-R750
#BALIUS
#SR400
#GSX-S1000S
#秋山郷
#うぃるそば戸隠本店 -
GSX1100S KATANA
2023年10月04日
62グー!
偶然か必然か?まぁ偶然だな(笑)
先日知り合えた素敵なR750乗りさんと、今日は暗くなるまでランデブー。
待ち合わせ後、山の中のジンギスカン屋さんを目指し昼食。お肉ランチ最高!しかし!写真撮るの忘れた!
お店を出て時間はちょうど昼。道が不安な為ペースメーカーになってもらい、初めて走る峠道を「楽しい」ペースで駆け抜ける。
次はおっさん一人では敷居の高い山の中のクレープ屋さんへ。デザート別腹!しかし!写真撮るの忘れた!
途中道の駅で休憩しながらそこから海へ。 暗くなるまでバイク談義その他。きっちり雨にもあたらず帰宅、俺だけかもしれないけどペースの合った?合わせてもらった?(笑)走りでめちゃめちゃ楽しい1日になりました!
初めて走るお相手、初めて走る道。取っ掛かりは偶然でも、今日のこの楽しい気分は次、必然になるのかな。ありがとうございました!次回もお手柔らかによろしくお願いします(^^ゞ
#GSX1100S
#GSX-R750
#じんぎすかん料理 澤田屋
#クレープハウス 果実の 星野屋
#道の駅 R290 とちお
#道の駅 越後 出雲崎 天領の里 -
Ninja ZX-12R
2023年01月30日
66グー!
「じゃあお世話になりました〜」
ディーラーから仕上がった愛車を受け取り、イソイソと押していく。
「○○がもうメーカー在庫無いので、〜〜がもう廃盤で〜」
整備のドンが小言、アドバイスをおっしゃる。
「ハハハ、ですよね」
思わず苦笑い。
「ほんじゃま、ウッスウッス」
そしてセルをしばし長押し。
キャンギャンキャン!
ドドンッ!!!!ドルドルドルドル!
ZX-12Rの久方ぶりの勝鬨。
「…フフフ」
ニヤける顔を隠すように、一張羅のフルフェイスのあご紐を締めていく。
ハンドルを握る。
愛車に跨がる。
伝わる振動。
次第に俺の心臓と脳みそのボルテージが上がっていく。
「お世話になりましたー」
静かにディラーから出ていく。
10分ほどして高速に乗る。
ヴォォォォォ!バンッ!ヴァァァァァァ!
雄叫びを上げ疾走する愛車。
「アヒャヒャヒャヒャ!ヨッシャアアア!」
俺は爆笑した。
始まりは友達がバイクにハマったことだった。
最初は1人が250クラスに乗り始めて、その次にもう一人が400クラスに乗り始めて、そして俺も免許取ろっかななって。
そして9ヶ月後には、、、
「俺のヤツぁ200馬力以上でー」
「バーカ、馬力有っても扱えにゃ意味無くね? その点、俺んは最新の電子制御で〜」
「、、、ハハハ」
俺はその時の愛車を見る。
あんなに好きだったのが、急に色褪せて見えた。
その夜。
「なぁ親父」
家のリビングで笑点を見る親父に話しかける。
「今度、親父の12R乗っていい?」
乗り始めて数分で後悔した。
親父が後生大事にしていた古いバイク。
ZX-12Rは噂に違わぬバイクだった。
文句を言い出すとキリがないので、簡単に言うと、ものすごく乗るのに苦労した。
「あ〜もう!チクショウが!」
友達(あいつら)をビビらす為に、乗ろうと考えていた自分の浅はかさに反吐が出た。
そして今日まで乗ってきた親父を尊敬した。
ビビッて歯を食いしばって、この股下の化け物を手懐ける。
いや、その気難しい御心に寄り添っていく。
「ハハハ、こいつは――」
スゴいですや。
苦労して苦労して乗れるようになった12R、ソレに跨り友達とのマスツーに出かける。
まず加速について行けなかった。
次にカーブで反対車線に突っ込みかけた、オマケで危うくガードレールにキスもしかけた。
「おい!大丈夫か」「休憩すっか?」
友達らの優しさがチクチクした。
ああ、、、これが20年のバイクの進化かぁ、、、
でも。
2車線の有料道路。
「ぐぐぐ」
200キロで先行する2台についていく!
凄まじい風切り音と、チリチリと心臓を焼く恐怖。
橋に差し掛かり、周囲の風景が開ける。
吹きつける暴力的な横風!!
「あ⁉」
風に煽られ、前の2人がふらつきブレーキが光る!
フラリと揺れる2つの赤。
まるで逆走するかのように急激に近付く紅い残光。
「““““““」
それらの真ん中を12Rにしがみつきブチ抜く。
チラリと見たメーター、目に焼きつく数字、3○○。
最寄りのサービスエリア。
あーだこーだと話し合い、一通りダベって、ラーメン食って帰路につく。
「お? おかえり。ツーリング楽しかったか?」
家に付くと親父、いや父さんが出迎えてくれた。
「うん」
「そうか! まぁ、無事に帰ってきてくれて安心安心」
「ねえ、父さん」
「あん?」
「12R楽しいね」
俺の言葉。
「だろう♪」
父さんはめちゃくちゃ良い笑顔を作った。
12Rを納屋に戻す。
傍らに停まっている俺の愛車。
窓から差し込むオレンジに照らされ輝くソレに俺は跨がる。
「そうだよなぁ、そうなんだよ」
トンチキな独り言。タンクに伏せ、スロットルをカチャカチャとひねる。
「ブオーンブオーン!」
#ZX-12R #海刊オートバイ #俺RIDE #東○海平 -
Ninja ZX-12R
2022年09月04日
48グー!
後編はーじまーるよー
「なんぼあんちゃうぬうぬしてらっきゃ。急いでらんだが?」
ふと、東北のSAで休憩してたら隼に乗っていたライダーに話しかけられた。
「あ、はい。友達が弘前市に居るもんで」
「まねでばな、からだもち気ぃつけて、へば!」
隼ライダーが呪文を唱える。
「???、あ、はい。分かりました」
「わっはっは!」
隼ライダーが去っていく。。。
俺は、いがめんちを食べる。
「うわ!これ美味すぎんだろ!」
弘前いがめんちは、とても美味しかった。
「なるほどな、それで12Rで全国を回ってる訳やな?」
関西で会ったブラバのライダーが、たこ焼きを頬張りながら俺をつま楊枝で指差す。
「いや、まぁそうなりますかね」
俺もたこ焼きを頬張る。
「ガっ!? 熱っ!」
口の中でハフハフとたこ焼きを転がす!
激熱の生地に口の中を火傷しかける、いや火傷した。
「ガハハ!アンちゃん食うのヘッタクソやなぁ~!で、次はどこに行きまんねんや?」
「えっほ、ふぎは、、、」
「なんちぃ?」
ブラバのライダーが足をバンバン叩きながら大受けする。
ちくしょーー!こっちはまだ、たこ焼き食ってる途中やっちゅうねん!
しかし、なるほど。確かにこれは美味いね。
「ヘェ~!12Rで全国回っとんけぇ!ご苦労なこっちゃのう!」
中国地方で会った12Rライダーが、がんすを俺に手渡しながら笑う。
「まぁしんどいですね」
がんすを食べてみる。ほう、これは中々。
「じゃろうの!ワシには出来んわ!岡山越えた当たりで腰イワすやろうのぉ」
12Rライダーがおもむろに、がんすにマヨネーズを搾る。
俺も真似てマヨしてみる。
「あ、ヤッベ!美ッ味」
カメラで記念にマヨがんすをパシャる。
「もう何キロ走ったや?」
「そうですね、、、上ったり下ったりして、もうオイル交換をにぃしぃろぉ………」
これぐらいですかね? と指で大体の数字を表す。
「バカじゃ。バイクバカじゃ!」
「がはは!」 「わはは!」
「で、九州まで来たの」
九州縦断中に会いに来てくれたZZR1400ライダーが俺にマンゴーつくしのアイスを手渡す。
「どもども! ですね。やっぱライダーたるもの、九州は何としてでも来たかったですから」
アイスをペロリ。冷たいのにマンゴーの濃厚な甘さが口から脳天を突き抜けた。
「ここまで来たんなら、次は鹿児島からの沖縄ね?」
「いえ、これから福岡まで戻って、それからフェリーで大阪からの関東ですね」
「ばい~!!フットワークの軽かのぉ!」
「最速ですからね」キリッ!
「バカは休み休み言え!」
「バイクバカですから、ってアッ!」
アイスの頬張りすぎて、あの頭痛が俺を襲う!
「おうおう、そんなにおろたえて……ンムっ!」
1400ライダーにも頭痛が襲った。
「明日で九州ともお別れかぁ」
海を望む露天風呂で浸かりながら、しみじみとツーリングを振り返る。
「たくさん走ったなぁ~」
「………」
なんとなく体の向きを変え、向こうに停まっている愛車の12Rを眺める。
「よく頑張ってくれた」
まだまだこれからも走るけどな!
rrr………rrr……。あ?
手元に置いていたスマホが通知を知らせる。
手に取って見てみる。
久しぶり 私分かる? ○○だよ
今さらだけどアナタの愛が
俺はポチポチとスマホを押す。
(アホ✕✕)
「せいっ!」
スマホを遠くにぶん投げて、俺は海に向けて仁王立ちで胸を張る!
「うおぉぉぉぉっっっ!!!!」
先輩に届くように俺は叫ぶ!
水平線の遥か先、先輩が笑ったような気がした。
気が済んだので振り返る。
12Rも笑っていた。
#ZX-12R #俺RIDE #東○海平 #おじゃマリン -
Ninja ZX-12R
2022年09月04日
43グー!
⚠️⚠️⚠️⚠️
今回は話が長引いたので前編、後編で分けてます
(´ε`;)ゞ
どちらか一方でも話としては上手くいってる…はず😅
前編はーじまーるよー
バンピーな山陽道を300キロオーバーで疾走っていく!
時刻は真夜中、貸し切りのような最高の道路コンディション。
愛車ZX-12Rが俺を乗せて風を切り裂いて征く!
凄まじい速さで風景が流れる。
ヘッドライトをビカビカに焚いて、爆音と暴風の中をハンドルにしがみついて疾走っていく。
「ヤッベェ! 全ッ然見えねぇ!恐ェェェ!」
眼前に広がるは暗闇、しかしスロットルは緩めない。
意地と根性と度胸と見栄の4気筒、アドレナリンとエンドルフィンのハイオクガソリンで脳ミソと心臓をブチ回すッ!
ハンドルのスマホナビを一瞥。
「よっしゃおらッ!!!!」
青森まで、あと1000キロ!
真面目に頑張ることにホトホト疲れた。
机にしがみつき、青春をドブに捨てた10代。
高収入な一部上場企業に飛び込み、死に物狂いで働いた20代。
努力はいつか報われる。
諦めなければ夢は必ず叶う。
それを信念に頑張ってきた。
……頑張ってたんだけどなぁ~
30代になった矢先、ソレは訪れた。
「……ごめんなさい」
近所のファミレス、テーブルの向こう側で頭を下げる俺の婚約者、そして。
「許してくれ!」
深々と頭を下げる俺の大親友。
「金は払う!だから俺達を許してくれ!」
対面の2人がテーブルに頭を擦り付ける。
「……そうか」
俺は店の外を眺める。
曇ったガラスに反射して、テーブルの下に、見えるはずもない2人の固く結ばれた手と手が見えた気がした。
これからはより一層、仕事に励もう。で目の前のボケ共を見返そう、そう心に決めた。
だ・け・ど。
「すまない、俺やっちまったらしい」
直属の上司が俺に勢い良く頭を下げる。
聞けば、会社での派閥争いに負けたというではないか。
しかもそれだけに留まらず、なんと1000万単位のチョンボの片棒と、アジア圏への長期出張を押し付けられたらしい。
「俺はもうオワリだ、お前も俺を切れ」
やつれた上司の顔。
入社してこの人にはお世話になった。
仕事のイロハを叩き込んでくれた、ミスをした時は叱ってくれた。そしてその後は決まって家に呼んでくれて、奥様特製の料理を振る舞ってくれた。
バッティングセンターで鬱憤を共に晴らした。休日にはバイクでマスツーにも出掛けた。
「先輩」
俺は思わず上司、、、先輩の肩を。
「ダメだ」
先輩の睨み付ける眼差し。
「─────」
「─────」
「お世話になりました」
俺は元上司に頭を下げた。
新たな部署での仕事は、それほど苦労なく馴染むことが出来た。
そんなある日の昼休憩。
部内での広報で元上司が正式にアジア圏の支部に配属されることを知った。
「……そうかぁ」
それからしばらくして俺は仕事を辞めた。
「なぁ、俺のバイクを貰ってくれないか?」
先輩の激励会&俺のお疲れ会での一幕、ベロベロな先輩が俺に訊ねる。
「え?あの12Rですか、ええ~」
「頼むよ~」
「俺より運転上手ェ先輩でも手焼いてんでしよ、俺に扱えっかなぁ~」
「お願いだって~」
「あ、そだ!先輩も仕事辞めて俺とバイクで旅に出ましょうよ!でぇ~その様子をヨウツベに~」
「頼むわ」
ふと先輩の言葉に違和感を感じ、先輩の顔を見る。
その顔は真っ赤だったけど真剣だった。
「承りました」
俺の言葉を聞くと、先輩は顔を崩して。
「ありがとう!ありがとう!」握手を求めてきた。
「そのかわり」俺は先輩の手を握って。
「代金として、俺の退職金を貰ってくれませんか」
そりゃお前、、、と先輩が。
「お願いします」
俺は先輩の目を見る。
「ありがとう!ありがとう!ブヒィ!」
先輩が感謝と変な嗚咽を漏らす。
「良いんです!良いんです!先輩も頑張って!ズビビ!」
俺も謝辞と変な嗚咽を漏らした。
後日。
「じゃあ、12Rを頼むな」
「了解しました!」
先輩から愛車のZX-12Rを受け取る。
「可愛がってもらえよ」
先輩が愛おしそうに12Rのタンクを撫でる。
「じゃあな!」
先輩がゆっくりとした足取りで帰っていく。
「先輩!」
俺は去っていく先輩の背中に声をかける。
「マジでお世話になりました!また!絶対にまた!」
俺は一生懸命に手を振る!
「おう、またな」
先輩も手を振ってくれた。
「また!絶対にまた!」
俺は先輩が見えなくまで手を振り続けた。
2ヶ月後。
「あ~走った走った」
俺は12Rでのツーリングを終えてヘルメットを脱ぐ。
しっかしアレだな。聞きしに勝ると言うか………。
「ZX-12Rはバケモノか」
俺は12Rのタンクを撫でる。
「明日はどこ行くかなぁ~」
なんて、明日の予定を立てながら、アパートのポストに手を突っ込む。
「あん?」
なんかハガキが来ていた。
どれどれ、、、
「──」
先輩の葬式を伝えるモノだった。
#ZX-12R #俺RIDE #東○海平
#僕のリアル先輩は12Rを80諭吉で押し付けてきた