とにかく美しい。ベスパLX1253Vを前に息を呑んだ。ボディを構成する滑らかな曲線と、それをさらに引き立てる上質なペイント。眺め始めると止まらない、そんな車両は本当に久しぶりだ。
欧州最大の二輪グループであるイタリアのピアッジオ。その中核をなすブランドとしてスクーターを手がけるのがご存知ベスパである。日本と同じ第二次大戦の敗戦国であったイタリア。ベスパは戦後復興のアイコンとして、半世紀以上に渡って独自の哲学を貫き、庶民のためのスクーターを造り続けている伝統あるブランドである。
ベスパというと、スチールモノコックボディとハンドチェンジに代表される旧シリーズを思い浮かべる人も多いが、今回試乗したのは、現行ベスパの中核モデルだ。
街中へ繰り出してビックリしたのは、3バルブエンジンのパワフルさだ。車重110kgと決して軽くはない車体をグイグイと押し出す力強さがある。見た目重視でパワーはソコソコに、などという遠慮は全く感じられない。それもそのはず、同クラスの国産車と比べてもスペックではなんら引けを取っていないのだ。これには正直驚いた。
加えて、乗り心地やハンドリングも見た目を裏切らないしっとりとしたもの。二人乗りでも安心できる剛性感もある。それでいて旧シリーズのように2ストローク混合仕様でハンドチェンジ、という乗り手を選ぶ気難しさとは無縁なのだ。
街中をストレスなく駆け抜け、個性あるライフスタイルもアピールできる。 スクーター作りに長けたブランドらしい一台である。
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