新しいYZF-R1は、なかなか画期的なスーパースポーツである。いや、エポックづくしだと言っていいかもしれない。
その新しさの筆頭は、ヤマハとしては初となるスーパースポーツ国内仕様車であることがあげられる。
国内の騒音、排ガス規制の問題から逆輸入車としてのリリースがむずかしくなったという事情があるとは言え、素晴らしいことである。
また、最高出力は145馬力で、以前の国内仕様モデルからすると、破格のパワーが与えられている。
これは、最高出力に対する自主規制撤廃による恩恵だが、諸々の規制に対処しながら、現実的かつ十分に楽しめるものとされているあたりは注目に値する。
その数値は、フルパワー仕様に比べれば、約30馬力ほど劣るものの、初期型R1と同等のパワーを発生。
現在の公道用タイヤとも好マッチングで、使い切ることができる。
そればかりか、フルパワー仕様の場合、トルクピークの1万回転からレブリミットである1万3750回転までを常用する
高回転型のエンジン特性であったことに比べ、国内仕様は5〜6000回転あたりの繋がりもよく、ピークの1万回転に向かってトルクカーブが
立ち上がっていく領域を使って走らせることができる。
そして、エンジンのフィーリングというか、コントロール感が、既存のパラレル4エンジンとは、まったくの別物。いわば新種のエンジンなのである。
一般的にパラレル4のクランクシャフトは、隣り合う1番と2番、3番と4番のクランクピンがそれぞれ180度ずれたところに置かれていて、
爆発も等間隔。だが、ニューR1のクロスプレーン型クランクは、1番と2番、3番と4番のそれぞれが90度ずれたところにあって、不等間隔爆発になっている。
このクランクシャフトだと、ピストンが上下することで生じる慣性力をお互いに打ち消しあうのだという。
その結果、爆発によって発生するトルクはそのまま現れ、リヤのトラクションが感じ取りやすくなる。
実際に乗ってみると、低回転域ではまるでVツインみたいなパルスがガンガンと届き、回転のスムーズさが勝ってくる6000回転から上でも、
パルスがはっきりと感じられる。
そればかりか、1万回転から1万3750回転までは、パルス感を伴いながら、普通のパラ4より振動が少なくスムーズときている。
このパルス感が、一層、トラクションをつかみやすくさせている。また、フルパワー仕様よりも出力は抑えられているため、やたらオーバーレブ特性がいいような印象で、
上まで回すことにもストレスがない。
ハンドリングは、どちらかというと安定指向で、初期から軽快にキビキビと向きを変えていくタイプではない。
でも、つねにフロントには高い分布荷重が保たれていて、確実に曲がっていく。悪く言えば、面白さに欠けることになるのだろうが、乗り手を選ばない性格は、
市販車としてはベストなセッティングであろう。
前後サスは通常域ではソフトで、奥でじんわりと荷重を受け止めてくれる特性。
もう少しハードだと、路面からのインフォメーションがもっと豊かに届くとも思えるのだが、これなら路面の荒れた峠道でも、過度な緊張感を強いられることなく、
快適に通過できそうだ。
上質な味わいを持ちながら、敷居を高く設定せずにだれもが高次元の操縦性を楽しめる。それがニューR1なのだ。
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