SR400は、78年春に発売が開始され、09年10月までの累計で、かつての500版を含み約12万7000台を売り上げた根強い人気を誇る機種だ。
排ガス規制強化の関係から、08年夏に一度は生産終了モデルとなったそのSR400が、09年12月末に、フューエルインジェクション(FI)仕様となってラインアップに帰ってきた。
しかし、FI化や細部熟成を受けてはいるが、その雰囲気はこれまでのSRそのもの。FI関連パーツは巧みに隠され、シンプルかつ美しい伝統のスタイリングは、しっかり守られている。
始動方法も、変わらずキックのみ。セルスターターがないことには、賛否両論あるだろうが、走り出す前に“儀式”が必要なこの姿勢こそがSRなのだ。
ちなみに、一般的にはFI化により始動性がよくなるはずだが、キックスタートのSRではそういう印象はなかった。ただし、コツさえ知っていれば、始動はまったく難しくない。
さてそのエンジンには、始動方式ばかりでなく、心地よいトコトコ感も引き継がれている。さらに回転上昇フィーリングについては、FI仕様のほうが先代より勝っているイメージだ。
排ガス規制対応のため、最高出力や最大トルクは、若干ながら先代よりダウンしたが、とくに気になることはない。それよりも、FIで細かい制御が行なえるようになったことで、高回転域まで気持ちのよい吹け上がりが持続するようになったという印象のほうが強い。SRらしい味は残したまま、クリア感が増しているのだ。
また、車重は先代比で約6kg増えているが、軽快なハンドリングもこれまで同様。市街地クルージングはもちろん、タイトなワインディングでの適度なスポーツ走行も楽しめる。
初代から、エンジンや骨格の基本部分には、大きな変更がないままに熟成が続けられてきたSR400。今回、FIというかなりデジタルな要素が加わったが、そのアナログ感は崩されることなく受け継がれている。
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