すでにスーパーバイクはV4に移行しているのに、どうしてドゥカティは、旧世代ミドルV2の改革を行ったのだろう。試乗前の僕はそう感じていたのだが、2020年型パニガーレV2をじっくり体感した現在は、同社の意図が理解できた気がしている。車重には大差がないものの、ハンドリングの軽さ、コーナーで感じる自由度の高さ、エンジンの中回転域で感じるトラクションの豊かさという面では、V2はV4を上回る資質を備えていたのだ。
もっとも、955ccエンジンを搭載する新世代のパニガーレV2を、僕は不特定多数のライダーにオススメするつもりはない。所有欲や目立ち度やパワーならV4のほうが優位だし、ライポジが先代よりスパルタンになったパニガーレV2は、敷居が決して低くはないのだから。とはいえ、多種多様な電子制御と空力特性の洗練が進んだパニガーレV2は、先代以上に、ワインディングやサーキットでのスポーツライディングが楽しいのである。具体的には、シャシーもエンジンも先代より包容力が高まっているので、乗り手としてはちょっと強引? と思いつつも、コーナーではいろいろなチャレンジをしたくなるのだ。
なお試乗前の僕は、どうせV2を続けるなら1299でやればよかったのに・・・とも思っていた。ただしこの件でも、今は同社の意図を理解した気分になっている。おそらくドゥカティは、近年のスーパーバイクで圧倒的な速さを実現しつつも、誰もが本当の意味でスポーツライディングを満喫できるのは、排気量が1000cc以下で、最高出力は150PS前後、と考えているのではないだろうか。
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