ハイパーモタードは、素晴らしい性能を備えたマシンが多いドゥカティのなかにあって、最もアグレッシブなモデルと言われている。スペック的に見れば、大人しい部類に入るハイパーモタードが、なぜアグレッシブと表現されるのか?
それはこのマシンを走らせてみればすぐに分かる。ライダーが積極的にマシンを操らないと、まったくいうことを聞かないジャジャ馬的な性格なのである。
その要因は、ロードスポーツの車体に、幅広のハンドルとライダーがフロント寄りに座る独特のポジションから生まれている。
そのポジションは、ライダーが直立して、一見、自由度が高そうに見えるのだが、じつは加減速で生じる前後方向の力に耐えるのが、とても難しい姿勢。
しかもハイパーモタードのエンジンは低中速からトルクが爆発する1100ccのLツイン。ボケっとしたまま、うっかりスロットルを捻ろうものなら、腕が伸び切り、上体は仰け反る。
反対に、フロントブレーキは、普段でも指二本、頑張れば指一本だけでも、リヤタイヤを持ち上げるくらいにガツンと効く。一般的なロードバイクのつもりで4本指で握ったりしようものなら、体が前に飛んで行きそうになってしまう(モタードの競技車では、これくらいが普通なのだが、一般道ではかなり戸惑う)。
つまり、このマシンを上手に走らせるためには、ライダーが、マシンの動きに先んじて姿勢を変えるような乗り方をするべきなのである。
コーナーリングに関しては、長いハンドルに余計な力を入れてステアリングの動きを妨げないよう気をつけながら、ハンドルグリップを内側に押し込む。そうすると、わずかな力でも、ハイパーモタードは簡単にバンクして行く。
とはいえ、手強いマシンであることには変わりなく、それゆえに乗りこなした時の喜びは大きい。乗りやすいマシンばかりが横行している現代にあって、これくらい骨のあるマシンも面白いと思う。
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