ここ数年、アドベンチャーバイクがブームを迎えている。各社でオンロード寄りのモデルが目立つなか、15年1月に発売されたタイガー800XCxは、オフロードでの使用を徹底的に考え抜き、クラス最高レベルの走破性を実現させた。
乗り心地は、とにかく「柔らかい」。高級四輪車が滑らかに走る感覚に似ていて、乗り手に伝わる衝撃を足周りで吸収する。これにはモトクロスレース界の一流ブランド、WP製のサスペンションが大きく貢献している。また21インチの大径タイヤによって、躊躇してしまいそうな未舗装路にも飛び込めるだろう。しかも、砂利や水溜りでズルッと後輪が空転しても、すぐにトラクションコントロールが介入。まるで後ろから誰かに支えてもらっているかのような安心感だ。
スロットルマップを4段階で切り替えられる電子制御システムも搭載。峠を攻めたいときは「スポーツ」、ウエットな路面を慎重に走りたいときは「レイン」など、路面状況やライダーの気分に応じて、設定を変えていくのも面白い。モードを替えるごとに別の車両に乗ったかのような感覚だ。
さらに、オンロードでの長距離走行の快適性も高い。神奈川〜大阪を往復する日帰りツーリングに使ってみたが、3気筒800ccエンジンは伸びやかで、高速道路の追い抜きも悠々とこなせる。車両サイズはリッターオーバーに比べれば、ポジションに無理を強いられず、日本人向き。オンオフ問わずロングツーリングが楽しめて、ふらっと街乗りをするのも億劫ではない、そんな万能性の高さも魅力だ。
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