ここ数年、クロスオーバーやアドベンチャーと呼ばれるモデルが世界中で好評だが、そんな中、ホンダが満を持して出した答えがVFR1200Xだ。
実際にこのバイクを目の前にすると、多くの人がそのボリューム感に圧倒される。ところが跨ってみると意外に足付き性がいい。シート高810ミリという高さは、このクラスではかなり低設定で、そこはさすがホンダ。日本人の体型をしっかり考慮した設計だ。
キーをオンにしてセルを回すと瞬時にV4は低い唸りを発し、ツインのような鼓動を打つ。走り出してまずビックリするのはDCTと呼ばれるオートマチックシステムのスムーズさ。ライダーはクラッチ操作の必要がなく、アクセルとブレーキ操作だけでいい。市街地の渋滞路やUターンなど低速を多用する場面では、この効果は絶大で非常に楽。
高速道路はどっしりした車体と高い防風性が多大な快適性を生み、ワインディングでは巨体を大きく倒しこむ乗り方でダイナミックなライディングが楽しめる。さすがにこの巨体と車重ゆえ、未舗装路は厳しいかと思ったが、意外や意外、優秀なトラクションコントロールのおかげで、タイヤが滑ることなく、低速なら難なく車体を前へ送り出してくれるのだ。フラットなダートなら腕に自信がなくても、通過できるだろう。
鼓動感とトルクあふれるV4、ウインドプロテクション、ETC、グリップヒーター、トラクションコントロール、ABS、積載性、そしてDCT。このVFR1200Xはホンダが日本人向けに作った、リアルでどこまでも頼れる旅バイクなのだ。
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