R1200GSは、BMWのなかで最も人気の高いモデル。日本、ヨーロッパでダントツの売り上げを誇っている。そんなGSが、大きな変更を受けた。
といっても見た目には、ほとんど違いが分からない。じつは車体や足まわり、外装はそのままに、エンジンがDOHC化されたのである。一般的に、ヘッドのツインカム化は、バルブの挟み角や燃焼室形状など設計の自由度が上がるために燃焼効率が向上、くわえてバルブ周辺の慣性質量が軽くなり、高回転化も狙うことができる。
いったいどんなエンジンに変わったのかと興味津々で乗ってみると、低中速をメインにトルクが増強されていた。
スロットルを開ければ、ドンと強烈なダッシュを見せるし、ローギアで不用意に全開にすれば、この巨体で、しかも姿勢変化の少ないサスペンションを採用しているのにも関わらず、フロントタイヤは簡単に路面を離れる。あきれるほどに元気なのだ。
もちろん、スロットルに対する反応は徹底的に調教されているから、ライダーの意志に反してバイクが飛び出してしまうようなことはない。普段は、あくまでもジェントルに。乗り手がその気になった時だけ、好きなようにパワーを絞り出せる。
また、実用域でのトルクが上がったことで、マシンの動きもずいぶん軽くなったような感じを受けた。スロットル操作でキッカケを作りやすくなったからだ。この巨体が、どんな時でも自由自在に動く様子は痛快。一般道でもワインディングでも、不安感なしに思い切ったライディングをすることができる。一度走ってみれば、このマシンが世界中で高い評価を得ている理由が一発で理解できるはずだ。
エンジンをこれだけ大きく変えたのであれば、デザインや車体も変えて、フルモデルチェンジを敢行しても良かったと思うのは私だけではないはず。それをあえて行なわなかった理由は、皆に愛され、支持されているものを変える必要はないというBMWの自信の表れなのだろう。
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