これはムチャクチャいいところを突いている。それがヒマラヤンに対する、僕の率直な感想だ。もっともその背景には僕自身が、旧車全般が大好きで、近年のアドベンチャーツアラーの先鋭化に疑問を抱いている、という事情があるのだが、現行車に比較対象が存在しない、唯一無二の資質を、このバイクは実現しているのである。
まず専用設計された411cc単気筒エンジンは、ロイヤルエンフィールドが長きにわたって熟成を続けてきた、ブリット/クラシック系に通じる鼓動感と粘りを備える一方で、振動対策として1軸式バランサーを採用しているから、高回転を維持しての高速巡航もなかなか快適。セルフスターターを装備することも、日常域やオフロードでの使い勝手を考えるとありがたい要素だ。一方の車体に関しては、同社にとって初となるロングストロークの前後サスとフロント21インチを、きっちりモノにしているという印象。といっても絶対的な悪路走破性は、日欧の本格的なアドベンチャーツアラーには及ばないのだが、少なくともツーリングの途中で遭遇する林道は余裕シャクシャクでこなせるし(ABSとリンク式リアサスの作動性はかなりの好感触だった)、穏やかで優しいハンドリングは、旅を楽しむうえでは有効な武器になると思う。
前述したように、現行車に比較対象が存在しないヒマラヤンだが、あえて言うならそのフィーリングは、80年代に販売されたヤマハXT500/600やホンダXL500を思わせるところがあった。ただしその2機種と比べると、ヒマラヤンのキャラクターは格段にフレンドリーである。
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