日本の道路事情を考えれば、2輪に過給器なんて必要ない。世の中にはそんなことを言う人がいる。たしかに、カワサキ製スーパーチャージャー装着車の第1/2弾となったH2/R、第3弾のH2 SXは、誰もが気軽に楽しめる乗り味ではなかったかもしれない。でも今年から発売が始まるネイキッドのZ H2を体験したら、多くの人が過給器に対する認識を改めるはずだ。何と言ってもこのバイクは、混雑した市街地や荒れた路面のタイトなワインディングでも、わずかな直線区間さえあれば、自然吸気とはまったく異なる、怒涛の加速力が満喫できるのだから。
その主な原因は、常用域重視の刷新を受けたスーパーチャージャーとエンジンだが、ローギアード指向の2次減速比や、アップライトで見通しがいい乗車姿勢、全面新設計のシャシー、洗練されたABSやトラコンなども、Z H2の魅力を語るうえでは欠かせない要素。誤解を恐れずに言うなら、このバイクは気軽でフレンドリーなのである。だからヤンチャなキャラクターのZ1000や、各部の仕上げが大雑把なZ900RS/カフェのオーナーがZ H2を体験したら、意外な乗りやすさに驚くかもしれない。
もっともZ H2だって、足回りにH2/RやSXほどのコストはかかってないのだけれど、公道でその事実を認識する場面はほとんどないし(サーキットなら、前輪荷重が高くて足まわりが豪華なH2/Rが最も速く走れそう)、既存のH2シリーズより格段に安い、200万円を切るスーパーチャージドバイクという事実を考えれば、細かい部分に異論を述べるのは野暮というものだろう。
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