今、Z900RSが注目を集めているのは、そのスタイリングがかつての名車Z1を彷彿とさせているからであろう。でも、そのことは新しいRSでの本質ではない。その本質とは、走りがスポーツネイキッド本来の走りを実現していることではないだろうか。
今日の多くのネイキッドでは、軽くキビキビとしたハンドリングや、爽快に吹き上がっていくエンジンフィーリングなど、スポーツ領域での魅力が追求されるが、このRSではもっと現実的な領域にスポットが当てられている。エンジンはベースのZ900よりも低中回転域重視で日常域で扱いやすいだけでなく、トルクカーブはエキサイティングな特性となっていて、キャラクターも表情が豊かで、軽薄さがなく、いい意味で重厚でもある。また、ハンドリングも、マシンコントロールを実感させてくれるものとなっている。
それでいて、RSは昔のバイクの焼き直しではない。走りは至って今日的で、フロントの倒立フォークは、コーナーに向けてのブレーキングで無類の安定感とコントロール性を実現し、リヤのリンク式モノサスは、いかなる挙動にもマスの集中感を維持してくれる。トラスフレームがしなっても、芯はブレず、それがマシンからのインフォメーションとして伝わってくる。
かつてのZ1は45年前、革新的な走りが衝撃を与えたものである。このZ900RSのスタイリングは、単なるレトロ趣味ではなく、カワサキの伝統のみならず、Z1らしい革新性をイメージさせてくれるのである。
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