ホンダCBR600RRの復活という吉報はあったものの、近年のミドルSS市場は縮小傾向にある。そんな状況下で唯一、かつてと同じ姿勢を維持しているのがカワサキだ。同社が長きにわたって熟成を続けてきたZX-6Rは、今年で25周年を迎える、超ロングセラーになっているのだから。
ZX-6Rの最大の魅力は、SS/ST600レース規定を度外視した、636ccのエンジンだろう。かつてのライバル勢が高回転高出力化を推し進めた結果、低中回転域で物足りなさを感じることが多かったのに対して、+37ccの排気量を得たこのバイクは、どんな領域でも必要にして十分な加速力を発揮するし、高回転域ではミドルSSならではの爽快感がきっちり堪能できる。もちろんそういった特性は、以前から636cc仕様の特徴だったのだけれど、現代の視点で考えると、並列4気筒の美点を巧みに引き出したZX-
6Rの扱いやすさとパワフルさは、ものすごく貴重なのだ。一方の車体に関しては、かつてのZX-6Rは常用域が得意とは言えなかったものの、現行モデルはなかなかフレンドリーで、ミドルSS特有の難しさを感じる場面はほとんどない。あえて言うなら、ハンドルはもう少し高くてもいい気がするけれど、運動性を重視する開発陣としては、現状のハンドルが理想的だったのだと思う。
もっとも、ミドル市場でライバルになるCBR600RRやYZF-R6、CBR650Rなどと比較すると、ZX-6Rのキャラクターには少々中途半端なところがある。とはいえそういう特性だからこそ、市街地からサーキットまで、このバイクはあらゆる状況に過不足なく対応できるのだ。
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