ニューモデルを精力的に市場へ投入するカワサキ。それだけに今年一番の注目車両をひとつ選ぶとなると難しい。しかし、サーキットにおける極限までのスポーツ性を追求したモデルとなると話は別である。カワサキのスポーツモデルを表すZXシリーズで一番そうした用途に向いているホットなモデルといえば、このZX-10Rしかない。かつてのZX-9R時代から数えるとおよそ15年近い歳月をかけてカワサキが進化させてきたスーパースポーツの現在形がこの11年型10Rなのである。
過激な性能を連想させるスタイルは、エアロダイナミクスを考慮して磨き上げられたものであり、その恩恵を受けるパワーユニットはなんと約200PSという非常にショッキングな数字である。
現行10Rはサーキットライディングでの楽しさを追求したマシンだ。高らかなスペックもその本性の一部に過ぎない。エンジンはカセット式ミッションやバックトルクリミッターを備えるほか、ミラーなども簡単に取り外しができる構造で、サーキット志向のユーザーにとってメリットの高い装備となっている。強大なパワーを使い切るにはもちろんサーキットでの使用が前提となるが、搭載するバリアブルパワーモードには、フルパワーの6割の出力となるモードも備えているため、ストリートでの実用性も備えていると呼べるのだ。トップエンドの性能だけではない乗り方を許容するエンジンマネジメントは、SSが初めてというライダーでも楽しめる、懐の深さを持っているのである。
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