近年の日本のオフロード界で、急速にシェアを拡大しているイタリアのベータ。同社のラインアップには、世界選手権での圧倒的な活躍を基盤とする、トライアル/エンデューロマシンが数多く並んでいるものの、今回試乗したのはトレッキングマシンのALP200。コンペティション系のような派手さはないけれど、このモデルは約20年にわたって販売が続く、超ロングセラーなのである。
実際にALP200を試乗して、僕が最初に感心したのは、欧州車で時として感じる敷居の高さやシビアさが皆無だったこと。市街地走行はごく普通にこなせるし、高速は90km/h前後での巡航が可能(最高速は110km/h)。そしてセローのようなトレッキング、歩くような速度で獣道を移動するトコトコ走りが楽しめることも、僕的には感心した要素である。スズキから供給されたジェベル用単気筒は、納豆のような粘りを見せてくれるから、どんなところにも気軽に入って行けるし、Uターンも楽々。
とはいえ、そのこと以上にALPで驚いたのは、数多くのジャンプが設置されたオフロードコースを、予想以上のペースで気持ちよく走れることだった。そういう面では、ALPはKLX230に通じる資質を備えていたのだ。
となれば、セローとKLXのいいとこ取り・・・と言いたいところだが、ALPはトライアル的な走りもかなり楽しめる。もっとも積載性や安定感はセローとKLXに及ばないのだが、日常域での使い勝手のよさやオフロードにおける守備範囲の広さを実感した僕は、イタリアの名門が構築した独自の世界に、しみじみ感心することになった。
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