2020年型Vストローム1050/XTの特徴は、往年のパリダカレーサーを再現したデザイン、ユーロ5規制に対応しながら7psの出力向上を実現したパワーユニット、守備範囲の拡大に貢献する電子制御スロットル+ドライブモードセレクター、トラコンとABSの精度を高める6軸IMUなど。ただし、僕がこのバイクで最も感心したのは、弟分の650や250に通じる親しみやすさだった。
逆に言うなら既存のVストローム1000は、車体が何だか硬い印象で、650や250と比較すると、乗り手の技量と走る場面を問うところがあったのだ。僕はその原因を、剛性が高すぎるアルミツインスパーフレーム+倒立フォークだと思っていたのだが、2020年型は車体の基本構成を維持したまま、前後ショックやタイヤなどを刷新することで、予想外にして極上のフレンドリーさを獲得している。この特性なら、先代が得意とは言えなかったオフロードも、適度に楽しめるんじゃないだろうか。
なお2020年型を走らせている最中、僕の頭にふと浮かんだのは、1970年代後半にスズキの旗艦を務めた、並列4気筒車のGS1000だった。もちろん、エンジン特性はまったく異なるし、車体の信頼感はVストロームのほうが格段に上なのだが、軽快感と安定感を程よい塩梅で両立した操安性や、乗り手の操作に対する実直な反応は、両車に共通する要素。言ってみれば新世代のVストローム1050/XTには、ベーシックモデルと言いたくなる資質が備わっていて、アドベンチャーツアラーに興味がなくても、この乗り味に共感する人は大勢いるはずだ。
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