RSV4は、SBKマシンと並行して開発されてきたアプリリアの新世代V4スーパースポーツである。
そのRSV4の市販バージョンとして発売されたモデルがファクトリーだ。そのファクトリーにワンシーズン分遅れて、普及型とも呼べるRSV4Rがデビューした。
結論を先に言ってしまうと、レース参戦に即対応できるパーツを多数採用しているファクトリーに比べると、このRは至って普通だった。
ライディングポジションは、コンパクトで体重移動の自由度の高いファクトリーと変わらず、腰高でシートも高い。
しかし、濡れた路面をゆっくり走り出すと、前後のサスペンションが気持ちよく動き、ホッとした気分にさせられる。サスの沈み込みが若干大きいのか、足着き性も心なしか良くなっていると感じる。
エンジンは、可変式のファンネルが省略されているものの、こちらのほうが扱いやすく好印象。1万回転でファンネル長が切り換わるファクトリーよりも、トルクカーブを体感しやすい。最高出力を発生した1万2500回転以後の伸び感や、その後の頭打ちも自然なので、唐突にリミッターが効き始めるなんて感じることもない。それでいて最高出力や最大トルクなどの性能諸元は、ファクトリーと同じなのだ。
ボディは、明らかにマスが集中していて、切り返しが軽く、狙ったバンク角に抵抗なくスッと収まってくれる。
エンジンにはさほどトルクフルな印象がなくても、スロットルを開ければしっかりリヤにトラクションを伝え、マシンは全域でトルクに押し出されていくといった具合なのだ。
そんなわけで、このRSV4Rは、ファクトリーよりもV4エンジンならではの良さを、多くの人が堪能しやすいと思えた。
このRを廉価版などと思ってはいけない。これぞ多くの人がライディングを楽しめる、ベーシックモデルなのである。
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