NC750XやVストローム650/XTでは物足りないけれど、KTM790アドベンチャーは本気度が高すぎるし、トライアンフ・タイガー900系やBMW F750/850GSは価格と車重がネックになる。あら、書いているうちにずいぶんニッチな市場のような気がしてきたが、そう考えているライダーがいたら、ついに日本での発売が始まったテネレ700に乗ってみるべきだろう。抜群の快適&万能性を備えるこのモデルは、近年のミドルアドベンチャーツアラーの平均を大きく下回る価格と車重を公表。市場がニッチだったとしても、テネレ700に対して、拍手を送っているライダーは世界中に大勢存在するはずだ。
このバイクで僕が感心したのは、トラクションと悪路走破性である。まずはトラクションの説明をすると、テネレ700が搭載するMT-07系のパラレルツインは、もともと後輪が路面を蹴る感触がわかりやすかったのだが、車格が大きくなることで、僕はその感覚が弱まることを危惧していた。でも実際のテネレ700は、希薄どころか、むしろ既存のMT-07系より濃厚なトラクションを味わわせてくれたのだ。そして悪路走破性は、KTMを除くライバル勢が霞んでしまうほど秀逸で、純正タイヤのままで、オフロードコースを楽しく走れてしまったのである。
なお現代の基準で考えると、テネレ700はアナログなバイクで、近年になってミドルアドベンチャーツアラー界でも普及が進んでいる、ライディングモードやトラコン、電子制御サスなどは採用していない。でも少なくとも僕はその点に対して、微塵も不満を感じなかった。
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