320ccという中途半端な排気量が、日本fで受け入れられるんだろうか? 2015年にYZF-R3の国内販売が始まったとき、僕はそう感じたものの、結果的にこのバイクは日本でも好セールスを記録。その理由はおそらく、兄弟車であるR25との差別化がしっかり行われていたからだろう。高回転志向でスポーツ性重視のR25に対して、低中速トルクが充実しているR3は、街乗りやツーリングがソツなくこなせるオールラウンダーだったのである。そしてそのキャラクターは、シャシーを中心とした大幅刷新を受けた2019年型でも変わっていないのだが・・・。
第二世代に進化したYZF- R25/3は、快適性と運動性にかなりの磨きをかけて来たのだ。具体的には、レースの技術を転用したフルフェアリングのおかげで巡航が楽になったし(高速域だけではなく、低中速域でも十分な整流効果が感じられる)、倒立フォークとグリップ位置が22mm低くなるセパレートハンドルを採用したことで、フロントタイヤの接地感が増し、コーナーへの進入がイージーになった。さらに言うなら、ガソリンタンク+カバーの造形を一新したことで、体重移動を行った際のフィット感がすこぶる良好になったことも特筆すべき要素だ。
もっともそういった進化は、第二世代のR25とR3に共通する話なのだが、従来型を明らかに上回るグリップ力と上質な乗り心地は、前後タイヤをバイアス→ラジアルに変更したR3ならではの美点である。逆に言うなら2019年型R3を体験することで、僕はラジアルタイヤの底力をしみじみ痛感することになったのだった。
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