半年ほど前から国内販売が始まったMT-09に対して、僕は少なからぬ疑問を感じていた。世界中で大ヒットしているモデルに対して、僕ごときが異論を述べる必要はないのだけれど、抜群のコントローラブルさと爽快感が満喫できる一方で、今後のヤマハ製ミドルの核となるべきモデルが、こんなに過激な特性でいいのか?という違和感を抱いていた。そんな僕にとって、MT-07はすべての疑問を氷解してくれるモデルだった。と言うか、同時期に07を開発していたからこそ、ヤマハは09に大胆なキャラクターを与えたのだろう。
クロスプレーンコンセプトという同じテーマを掲げているものの、07と09はまったく異なるモデルである。端的に表現すると、07は乗り手の技量や走る場面を問わないオールラウンダーで、誤解を恐れずに言うなら、ハーレーのスポーツスターやトライアンフ・ボンネビルT100といった、ネオクラシック系に通ずる味わいや操る手応えを備えている。もちろん、07の足周りには現代の技術が投入されているので、それらと比較すれば限界性能は高いのだが、07は前後17インチのラジアルタイヤを履く現代のバイクとしては、ちょっと異質と思えるほどに、低中速域で濃厚な充実感が味わえるのだ。
09の大ヒットに水を差すつもりはないのだが、普通のライダーが普通に楽しめるという視点なら、09より07のほうが上だと僕は思う。いや、どちらが上かという問題はさておき、乗り味の面白さや意外な質感の高さ、コストダウンの巧みさなどを考えると、MT-07は今後のミドルクラスにおいて、世界中のメーカーの指針になるのではないだろうか。
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