ヤマハのパリダカマシンの称号でもあるテネレ。その称号を冠したモデルが新世代へと進化した。83年に登場した単気筒のXT600Zテネレ(95年に660に発展し、それは今も現役)、5バルブ2気筒になった89年のXTZ750スーパーテネレを経て、今回、XT1200Zスーパーテネレが登場することになったのだ。
車輌カテゴリーは、オフロード走行を視野に入れたデュアルパーパス、いわゆるアドベンチャーツアラーだ。排気量もR1200GSやムルティストラーダと同水準に拡大され、ライバルに真っ向から勝負を挑むことになる。
となると、日本人に扱い辛い大きな車格が気になるところだが、それが嬉しいことに全くもって案ずることがない。
調整式のシートを低位置にセットすれば、足着き性は良好で、このカテゴリーとしては最良だろう。おまけに、新設計のエンジンや車体構成は低重心化やマスの集中化が徹底され、跨ったときに安定感がある。
前輪19インチで、サスストロークは豊か。ゆったりしたリズムはおおらかな気分にさせてくれる。いっぽうで、エンジンが単気筒並みにコンパクトで、マスも集中しているので運動性に富み、ハンドリングはいかにもオフロード性能が高そうな雰囲気。なのに、オンロードではそのことによるネガを一切感じさせない。オンロードスポーツとして楽しめるフィーリングなのだ。
そして、エンジンは中速域で鼓動感とともにモリモリとトルクが湧き上がってくる。粘りもあるし、レッドゾーンの7800回転までストレスなくまわる。スロットルレスポンスもじつに扱いやすい。
バイクとしての優れた素性を持ち合わせている基本部分に、電子制御スロットル、トラクションコントロール、パワーモード切換え、ABS、前後連動ブレーキといったハイテクが導入され、それらが見事にバイクのキャラと調和している。遠くまでツーリングしたくなる魅力的なバイクの登場である。
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