V9ボバーはモトグッツィ久々のブランニューモデルである。「ボバー」とは米国を中心に広がっているカスタムスタイルで、装飾を省いたシンプルさや落ち着いた色使いが特徴となっている。
車体は見た目以上にコンパクト。低いシートのおかげで足着きもすこぶる良い。ライポジは上体が起きたネイキッドのような感じで、ステップ位置も前すぎず実用的だ。
新設計のエンジンは現代的に洗練されて回転フィールもスムーズ。空冷縦置きVツイン独特の粗粒な鼓動感は残しつつも振動も抑えられて快適。従来のV7シリーズより排気量も100ccほど増え、よりパワフルになり、追い越しも楽になった。アクセルオンで車体が右に傾きテールがリフトする、グッツィ特有のリアクションが健在なことも、マニアには嬉しい部分だ。
ハンドリングは素直で安定感があり軽快。エンジンはこの上なく個性的なのに、これだけ普通に乗りこなせるところが素晴らしい。縦置きVツインならではのロール方向への軽さを生かしたコーナリングが魅力だ。それでいて、前後16インチのファットタイヤによるゴロっとした手応えも味わい深い。ブレーキは前後ディスクでしっかり効いてくれるし、前後サスの味付けもスポーティ。その気になれば爽快な走りも楽しめる。ABSとトラコンも標準装備されて雨の日でも安心だ。
モトグッツィらしい個性と新鮮味のあるスタイリングに加え、乗り味も洗練されるなど、完成度の高いパッケージングに仕上がっている。都会的な感性で普段着でも気軽に乗れるまさに”ボバー”な一台だ。
|