ドゥカティのアイデンティティとも呼べるパイプで構成されたトレリスフレームから決別し、モトGP譲りのモノコックフレームを採用した1199パニガーレ。独特のハンドリングには、ツボにハマれば面白いが、そう簡単にツボにはめられない難しさがあった。そのデビューから約1年半が経ち、近年のドゥカティ製スーパーバイクの定石通り、基本コンセプトを受け継ぎながら排気量を縮小したモデル『899パニガーレ』が登場した。
まず大きく変わったのは足周りだ。キャスター角が0.5度立てられ、スイングアームが両支持式になった前後サスペンションは1199よりも格段にしなやかな設定になった。さらにリアタイヤの幅が20mm狭くなったこと、シートの表皮が見直され、座面もフラットになったことなどにより、路面からのフィードバックが明確になり、挙動を把握しやすくなったのである。
また、エンジンも一昔前のLツインの特徴だった低中速回転域でのギクシャク感や荒っぽさは影を潜め、日本製の同クラスと大差なく扱えるようになった。それでもドゥカティらしいスポーツ性を堪能したいのであれば、5000rpm以上をキープすることを心がけて走ることが要求される。でも、それ以下の回転数でも、パワーバンドを大きく外した感が一切ない。日本仕様は本国仕様から30psダウンの118psだが、非力さなどまったく感じなかった。
熱やステップの装着位置など、1199と共通する問題点はあるものの、899パニガーレは、ドゥカティ史上もっとも親しみやすいスーパーバイクに仕上がっていた。
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