「うわっ、デカい」ムルティストラーダ1200Sグランツーリスモを目の前にした第一印象だ。ケースを除く全長など主な車体寸法は、ノーマルのムルティと変わりないのだが、大容量のサイドケースとトップケース、エンジンガードの装着などにより、見た目のサイズ感がアップしている。それにともない、車重はノーマルのムルティに比べて約20kg増。だが取り回しは重量増を感じさせない。足着きは身長160cm前半の筆者で、両足の爪先が着く程度だ。
ホイールサイズは、アドベンチャー系でありながら、前後17インチが採用されている。ホイールサイズによる走りの違いを良く知る読者であれば、ロードモデルと同じサイズ、ロード寄りのタイヤでダートに足を踏み入れることを躊躇するかもしれない。しかし、走行シチュエーションに合わせてエンジンキャラクターとサスセッティング、トラクションコントロールの特性を4通りに変化させるモード切り替えと、サスの動きをセンサーで感知し、その動きに応じて最適なダンピングを発生させるDSS(ドゥカティ・スカイフック・サスペンション)とが、ムルティに安定したハンドリングとトラクションをもたらしてくれる。つまり、最新の電子制御技術が17インチというダートでのネガをカバーするどころか、何も持たない19インチ車を上回る高性能をムルティに与えているのだ。実際に、ノーマルタイヤでフラットダートを走ってみたが、ライダーが余計なことをしなければ何も起こらないという印象だった。
オンロードでスポーツランを楽しみつつ、ダートも快適。新型ロングディスタンスツアラーに死角はない。
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