新しくトライアンフから登場したスプリントGTは、見ての通り、本格的ツアラーである。
既存のスプリントSTをベースに、ホイールベースを伸ばして、安定性とタンデムライダーの快適性や荷物の積載性を向上、またマフラーをシート出しから右下出しとして利便性を追求。STにしてもパニアケースが標準装備だったのだから、これをツアラーと言わずして、他に呼び方などないというものだ。
実際、GTは長距離ツーリングに最適の一台だ。快適に楽しく移動でき、タンデムや積載性にも不満はない。
とはいえ、コテコテのツアラーといった感じでもない。しかしながら、ライダーを楽しませる性能はピカイチだ。
3気筒の鼓動は、常にライダーを飽きさせることなく、中回転域では鼓動感とトルク感が相まって気分も高揚。コーナーが待ち遠しく、ロータリーや交差点で向きを変えるだけでもマシンコントロールを堪能できる。標準のバッグを外せばワインディングでスポーツバイクとして楽しめるSTの美点が、このGTにもそのまま引き継がれているというわけだ。
足着き性は、異例に良好だったSTとは異なり、このクラスのツアラーとして並みの水準になっているが、快適性のなかにもスポーツ性を意識したライポジは引き継がれており、小柄な身体にもマシンがフィットする。
落ち着きのあるハンドリングながら、ライダーの意思にダイレクトに反応。粘る感じはなく、その気にさせられる。それに、大型パニアケースを搭載している重ったるさもない。
エンジンは全域において強力でフラットなトルクを発揮。スロットルレスポンスもスムーズそのもので、神経質さを感じさせることはなく、大変に扱いやすい。そして、扱いやすくても、鼓動感が豊かで、中速域のトルクの立ち上がり感はスポーティそのものである。
そんなわけで、ツアラーとしての魅力の恩恵に預かりながらも、そのことを忘れそうになってしまうのである。
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