スラクストンは60年代のクラブマンレースで活躍した、往年のレーシングトライアンフの名を冠したトラディショナルスポーツだ。
空冷並列2気筒エンジンは外見こそクラシカルだが実はDOHC。加えて専用のカムとハイコンプピストンでチューニングされているため、ベースモデルのボンネビルと比べても一段と元気がいい。
等間隔爆発の360度クランクはバランサーを装備していることもあり、振動も少なくとてもスムーズ。レッドゾーン近くまでストレスなく吹け上がる爽快感がある。もちろん、回転数を抑えてトコトコ走るのも気持ちいいが、ある程度回したほうが安定感も出てくるし、スラクストンらしいスポーティな走りが楽しめるかも。
ハンドリングは独特で、大柄な車体とフロント18インチホイールが作り出す、しっとりとした安定感のあるコーナリングが魅力。Uターンのような極低速ではやや前輪が切れ込む動きを見せるが、速度が上がるにつれ、まるでレールに乗っているかのごとく正確にラインをトレースしてくれる。スラクストンは高速コーナーが得意なのだ。
したがって、乗り方もハングオフではなく、ライダーがシートの後ろ寄りに座ってフロントを遊ばせてやる、昔ながらの“リアステア”的なスタイルが似合う。このハンドリングの味わいはベテランには懐かしく、17インチ車に慣れた今の人には逆に新鮮に映るかもしれない。そして、威風堂々としたノスタルジックな風貌は、見ていて飽きないものだ。違いが分かる大人のライダーに乗ってもらいたい一台だ。
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