20世紀の後半、ヴィクトリーが登場してきたことでアメリカ製クルーザーは一気に面白くなったと思う。それまでハーレーだけがアメリカを代表するマシンのようになっていたところへ突如登場したヴィクトリーは、V型のビックツインを搭載したツアラーを多数ラインナップ。ハーレーに真っ向勝負を挑んだのである。
このヴィジョンは、ツーリングシリーズのスタンダードモデル。ハーレーでいうところのウルトラである。しかし実際に乗ってみるとハーレーとは見事に違う。ツインの鼓動感も強いしスロットルを開けたときのフィーリングもワイルドだ。
乗り心地は文句なし。エアを併用したサスペンションはソフトだがふわついた感じは皆無。ドッシリとしていて走りに高級感が漂う。車体は大きいけれどハンドリングは素直で乗りやすく、高速での安定性はケチの付けようがないほどに高く、タンデムしても走りにまったく影響しない頼もしさも持ち合わせている。
しかし、このマシン最大の魅力は、アールデコを連想させるその優美なスタイルだ。実車を前にするとこれが相当に大きくて派手。アメリカングラフティ時代にもてはやされた巨大なアメ車をオートバイで再現してしまったような雰囲気なのである。
エンジンの鼓動感が強くて見た目も派手なヴィクトリーは色々な部分が刺激的である。それは静かで機能的に進化した最近のハーレー・ツーリングファミリーに比べると、多少がさつな感じもしてしまうけれど、大人しいバイクが増えつつある今の世の中、こんな個性的なマシンはとっても魅力的で心惹かれてしまうのである。
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