インドのLML社は、80〜90年代にベスパのライセンス生産を行ない、インド国内やアジア諸国での販売を続けてきたメーカー。99年にピアジオ社との提携を解消した後も、ハンドチェンジ式スクーターを生産し続け、輸出も行っている。それが、日本ではスターデラックスと呼ばれるシリーズだ。
その従来型は2ストエンジンを搭載。以前のベスパPXから基本構造を受け継ぎながら、細部に改良を加えた設計だった。
そして、この従来型ボディを流用(細部は熟成)しつつ、新4ストエンジンを搭載したのが、09年に登場した4Sシリーズだ。
排気量は2スト版と同じく、125ccと150cc。共通の車体に搭載され、今回は125cc版を試乗した。
スターデラックスシリーズ最大の特徴は、変速がハンドチェンジ式であること。そのため、左手側にクラッチレバーとシフト機構が集中、実際のシフトチェンジや発進時のクラッチミートを左手だけで行なう。通常のマニュアルクラッチ車とも、カブなどの自動遠心クラッチが付いた機種とも、一般的なスクーターとも異なる、この独特の操作フィーリングは、レトロ感がたっぷりで、慣れるととっても楽しくなってくる。
エンジンはけっしてパワフルではないが、昔設計な車体との組み合わせなので、これくらいでちょうどいい。
ちなみに、筆者は4スト150cc版にも試乗したことがあるが、回転上昇時の心地よさや車体とのマッチングでは125cc版、多少の荒削り感はあるがやはりパワーでは150cc版が勝っている印象を受けた。
車体もエンジンも、トバす気などまるで起こらない性能なのだが、日常的に使うために必要な旋回性能や制動力は、十分に備えている。
何かと焦り急ぎがちな現代社会だが、こんなのんびりコミューターで移動すれば、いつでも心に余裕を取り戻せそうだ。
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