ビンテージテイストを盛り込んだコンプリートチョッパーとして大人気のロードホッパーシリーズ。その最新モデルがこのタイプ5ショベルだ。リアサスを持たないリジッドフレームにスプリンガーフォーク、そして独特の造形美を見せるエンジン。旧車然としたスタイルを持つこの車両の乗り味とは一体どんなものなのか?
ガソリンコックをオンの位置にしてからチョークを引き、セルボタンを押し込む。そう、これはキャブレター車なのだ。儀式と呼ぶには大袈裟だが、目を覚ましたS&S製ショベルヘッドは、ブリッピングだけで分厚いトルクを誇示する。ワイドなギアレシオともあいまって、街中では5速あるうちの3速までで十分。図太い排気音と、リジッドならではの大地を蹴り飛ばす感覚を満喫して走るのは想像以上にスリリングだ。
そのフレームだが、やはり乗り味は独特だ。リアサスを持たない構造ゆえ、路面からの衝撃は身体に直接伝わってくる。しかもフロントフォークは、フリーク達が“74スプリンガー”と呼ぶ半世紀以上前の機構。当然、ガンガン飛ばす走りには向かない。
とはいえ、フレームはリジッド前提の『しなり』を想定した設計で、前後輪にはハイトのあるバイアスタイヤをセット。後付けリジッドの“ボルトオン・ハードテール”とは出自がまったく異なり、フレーム・フロントフォーク・タイヤがこのパッケージの中でバランスしている。意外にも、ハードな乗り味によるしんどさよりも、面白さが身体に残る。これが“ショベル・リジッド”の楽しさなのか……。
公認取得済みの新車でこうした世界観を楽しめる車両は他にない。その存在自体が大きなトピックである。
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