新しいCB650Fは、CB600Fホーネットの後継型だ。でも、イタリア製だったホーネットとは違い、タイ生産(国内向けは熊本生産)の650Fは、これまでのようにスポーツ的な魅力を追求するのではなく、ベーシックモデルの原点を見つめ直したものとなっている。
だから、フレームはアルミ製ではなくスチール製で、コストを抑えた構成とし、走りも、現実的に使えるものとなるよう作り込まれていることが印象的である。
完全新設計のエンジンは、600Fよりストロークを伸ばし、排気量を拡大しながらも、スロットルボディを小径化。トルクフルで粘りがあって扱いやすい。
アイドリング回転でも発進が可能で、そのままスロットルだけでバイクを進めることができる。ステアリングに対する動きも素直で、切れ角を有効に生かし、ダイナミックに取り回すことも楽しい。低中回転域のトルクは十分で、街中にすんなり溶け込める。しかも、トルクは高回転域に向かって淀みなく立ち上がっていく。道具としても使える特性だ。
コーナリングは、マシンに逆らうことなく、スロットルワークや荷重移動にメリハリを付けていく乗り方がマッチする。マシンから寝かし込むと、インに向かって切り込んでいきがちだが、それを方向転換に生かす気持ちで楽しむのがいい。車体の剛性感は、かつてのスチール製ツインスパーフレームよりも、格段にナチュラルである。
トルクフルさが災いしてか、エンジンの振動感がガサツな気がしないでもないが、ケレン味のない素のバイクを感じさせる650Fなのである。
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