このところクルーザーシーンに吹き荒れる脱クロームの風。なんでも「若い世代の嗜好が既存のクロームキラキラ路線ではなく、マットな部分で全体を引き締め、レトロの中に伝統をチョップしたかのようなディテールを合わせた新しさが求められている」そうだ。そういえば、ここ数年、ハーレーでもマットな色彩を武器にしたモデルが年を追うごとに増えている。
そんなトレンドを採り入れ、2年ほど前からモデル開発をしてきたというファントム。それだけにマットな部分の振り分け方が絶妙で、じつにカッコイイ。
これまでのシャドウが、クロームパーツやサドルバッグなどでよりゴージャスに、より重厚にしたくなるのに対し、ファントムは、すでにこの状態での満足度が高い。むしろ、ここからイメージを崩さずにカスタムするには、オーナー側にそれ相当のセンスと覚悟が求められるのではないだろうか。
さてそのファントム、走りもじつに楽しい。基本はシャドウと同じながら、スタイルやタイト感のあるポジションが、ワイルドな走りを演出する。
バイクの重さ、エンジンの力感、そして足つき性などどれもがバランスしていて、街中で先を急ぐような場面では思い通りのダッシュが決まるし、交差点でも身軽。
シャドウ400と車体サイズも車重もほぼ同じだから、エンジン排気量のぶんだけ余裕がある。また、たとえ市街地の奥まで迷い込んだとしても、足をベタベタについて方向転換できるので、行き止まりであってもあたふたすることはない。
それでいてエンジンをブン回して走ると、ブレーキの制動力や車体の反応に雑味がなく、スポーツバイクとしても楽しめるという一面も持っている。さらに、高速道路では排気量なりのゆとりから楽なクルージングを満喫できる。
今や希少となった「ナナハン」クルーザーだが、案外新種のネイキッドバイクとしてもお薦めできる。そう感じた。
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