2025/02/06 16:28:22 更新【バッテリー交換、チェーン交換】ドゥカティ Monster400 車検整備、バッテリー交換/エンジンオイル交換/ドライブチェーン交換/ヘッドライトバルブ交換ドゥカティ モンスター400
車検整備でドゥカティMonster400にご入庫いただきました。

今回の車検を機にいくつかのオーダーを頂戴しました。 ブレーキフルード(Monsterは油圧クラッチですのでクラッチフルードも)交換。 エンジンオイルの交換。 ヘッドライトをもう少し明るいものへの交換。 バッテリーの交換。 ドライブチェーンの交換といったところです。 もちろん、他にも各部を点検して問題があれば調整、調整、場合によっては部品交換を行います。

ヘッドライトですがこちらの車両はハロゲンヘッドライトバルブを使用しています。 最近はLED搭載車両が増えてきましたが、必ずしもLEDが路面を明るく照らしてくれるわけではありません。 LEDバルブ用のヘッドライトレンズやリフレクター車両でなければその効果は発揮されにくくなることがあります。 また、こちらの車両はヘッドライトケースが薄く、LEDバルブを装着するためにはヘッドライトケースの交換が必要になり手間がかかります。 そこでハロゲンバルブのまま、より明るいタイプのバルブに変更します。 現在装着されているものはバルブ自体に薄く青いコーティングを施したもの。 ノーマルのハロゲンバルブはやや黄色がかった光になるため、青く着色することにより路面を白く照らすのです。 一般的に黄色っぽい光より、適度に白い光の方が昼間の太陽に光に近いため路面を見やすくしてくれるようですが、バルブ自体に着色するので当然ながら光量は低下します。 好みの問題ではありますが、着色していないバルブでもできだけ白ければより見やすくなるはずです。

ミッツ・ハーでは積載トラックに必ず搭載しているハロゲンバルブがあります。 通常のバルブと同じ60/55Wながら、本当に同じかと思うほど明るくなるバルブなんです。 感覚的には80Wくらいになった感じ。 その為か、照らす光は白っぽくなり路面も良く見えます。 積載トラックに搭載しているのは車検対策。 お客さまからお預かりした車検車両のヘッドライトが光量不足で車検不合格になることがあります。 着色されたバルブを使用していたり、拡散してしまうLEDバルブを使用していたり、あるいは旧車で十分は明るさを発揮できない車両だったり。 そんな時にこのバルブに車検場で交換します。 特に旧車はその可能性が高く、このバルブに交換すれば大抵は合格できます。 これで合格できない場合は配線の引き方を(リレーブースターを装着するなど)やり直す必要がありますね。 ハロゲンバルブのまま、今より明るいものにしたい方はお気軽にご相談ください。

現在使用しているバッテリーはACデルコ製で2年程使用したものです。 最近はあまり乗る時間がなかったとのことで、その為かだいぶん劣化していました。 専用テスターで点検してみると電圧は12.23ボルト(V)あるものの、CCA値は105 装着されているバッテリー本来の規定CCAは210ですから半分程度に低下しており寿命です。

エンジンを始動する際、セルモーターには大電流を流す必要があります。 その為、セルボタンを押すとリレーを介しバッテリーとセルフスターターモーターが直結されます。 電圧が12V以上あれば始動できそうなのですが、問題は電流です。 電圧と言うのは電気を押し出す力だと思ってください。 今回、このバッテリーは強いというわけではありませんが始動させるために必要な電圧を有していました。 問題はその電気をセルフスターターモーターへ効率よく流せていないため、エンジン始動(セルフスターターモーターの稼働)が困難なのです。 電気を流す量…これが電流でアンペア(A)と表記されます。

水道の蛇口に例えるとわかりやすいかもしれません。 水は蛇口に水圧をかけています。 蛇口をひねると水が押し出されて流れてきます。 蛇口を全開にすると水が勢いよく出てきます。 蛇口で水量を調整するのですが、電気に話しを戻すと蛇口から出ようとする水圧が電圧、そして蛇口で水量を調整する部分が電流です。 十分な水圧(電圧)があっても、蛇口を全開にしても何らかの理由(例えば蛇口部分に錆などの不純物が詰まっているなどが原因)で勢いよく水を出せない…水流が少ないとその先にある水車を動かすことができないということになります。 (例えが悪くて分かりにくいと思われた方…ごめんなさい)

鉛バッテリーは使用していないと僅かずつ放電していきます。 自己放電です。 バッテリー単体でも自己放電するのですが、車両に搭載していると停車中には暗電流といって電気が徐々に流れ出ていきます。 オートバイに時計がついてたり、セキュリティ装置がついていたり。 昔のオートバイに比べると停車中も電気を消費しています。 インジェクションモデルだとコンピューターの待機電力も必要です。 鉛バッテリーは放電するとサルフェーションという絶縁物質が生成されます。 このサルフェーションは柔らかい物質で、充電されることにより電解液に溶け込んでくれますが、放電されたままサルフェーションが固着し結晶化すると電解液には戻ならくなります。 電気を取り出すための電極版周囲に絶縁物質であるサルフェーションに覆われてしまうと内部抵抗が大きくなり、放充電がしにくくなりバッテリーの容量が低下しパワーダウンします。

こうしたことからよく「一度バッテリーあがりを起こしてしまうと本来の性能は発揮できない」と言われることがあるのですが、正確にはバッテリーあがりを「長時間放置」してしまうと本来の性能は発揮できないということです。 バッテリーがあがってもすぐに充電すれば回復します。 ただ、これを繰り返すと徐々に生成されたサルフェーションは硬質化し、バッテリーは寿命を迎えることになります。 サルフェーションは絶縁物質ですから電気をため込む領域を減らすことになります。 また、放充電がしにくくなるため大電流を放電することができなくなります。 仮に電圧が正常であっても大電流を放電できなければエンジン始動をすることができません。 この始動力をどれだけあるかを示すのがCCAという値です。 摂氏-18℃の環境で定電流放電させて、30秒後のバッテリー電圧が7.2V以上保つことができる限界の放電電流値がCCAになります。 といっても摂氏-18℃で停電放流なんてできません。 従って専用テスターを使用して測定します。

このバッテリーの基準CCAは210です。 新品で正常なら210アンペア(以上)の電気を流すことができるというわけです。 今回、テスターで診断したところCCAは105でした。 電圧は12.23Vとキープされていますが、流すことの出来る電気の量が通常値の半分ではエンジンを始動することができません。 要交換です。 実測(計測結果)CCA105÷基準CCA210×100=55…この計算で現在のバッテリーの状態がわかります。 基準CCAに対し55%しか発揮できず劣化しているということになります。 仮にこのCCAが170あれば80%以上の性能を維持していることになるので充電すれば使えなくはありません。 しかし今の状態ではいくら電圧をあげられても必要な大電流が流せないため、エンジンを始動させることができなくなる可能性が高いのです。 バッテリーは単に電圧測定するだけでなく、専用のテスターで各数値をしっかりと測定しましょう。 交換時にはオートバイの充電状況等の確認も必要です。 せっかく交換しても、充電状態がわるければ意味がありません。

交換するバッテリーはミッツ・ハーでも納車前点検整備時に使うことの多い欧州ブランドのBSバッテリー。 MVアグスタなどにも純正採用される信頼性が高く、コストパフォーマンスに優れたバッテリーです。 近年ではレースのサポートにも積極的で、2021年MotoGPチャンピオンのファビオ・クアルタラロ選手のスポンサーにもなっています。 彼のヘルメットにはBSバッテリーのロゴがありますね。 新品のバッテリーもメーカーが出荷前に点検していますが、念のために当店でもテスターで計測します。 電圧は13.01Vで、CCAは270です。 基準CCAの210を上回ります。

こちらの車両はバッテリーの電圧をモニターできる電圧計を装着しています。 エンジン始動するとオートバイの充電機能が稼働し、バッテリーの電圧が14.2V前後に上昇します。 エンジン回転数を上昇させても充電制御がしっかり機能しているので過充電にはなりません。 この電圧計とても便利で、電圧計自体にUSBコネクターが装備されており給電装置としても使えます。 おすすめの商品です。 電圧は充電すると上昇しますが、CCAは劣化と共に徐々に低下します。 定期的にバイクショップで点検しましょう。

ドライブチェーンの交換です。 使用するのはシールチェーンのパイオニア EK江沼チェーンのプレミアムチェーン「スリードD Luxe」 外側のプレートが黒、内プレートとピンがゴールドのコンビカラー。 カッコいいです!

性能と機能美を突き詰めたチェーン。 外側プレートは軽量化と造形美を追求し強度を落とさずに軽量化。外周の面取り&中央部の凹みという手間のかかる3次元形状を採用することで10%の軽量化を実現。 隅々までの軽量化を実施し、ピンも穴あきタイプにすることで5〜7%の軽量化を実現しています。

チェーンなんてそんなに注意して見ないよ という方も多いと思います。 が、わかる人にはわかる高品質チェーン。 けっこう気にしている方も多いんですよ。 ちなみにゴールドタイプやシルバータイプもありますのでお好みのカラーを選択できます。

専用工具を使って古いチェーンは圧入されたピンを押しぬいて切断します。 丁寧に作業しないと工具を壊しやすいので注意が必要です。

古いチェーンに新しいスリードDを接続、古いチェーンを引き抜けば新しいスリードDに入れ替わります。 スリードDを連結させ、外プレートをピンに圧入。 その後、ピンが抜けないようにカシメます。

写真で新しい接続部のピンが見られると思いますが、右がカシメているピンです。 左より少し外径が大きくなっているのがわかりますか? これはピンの中心部に突起物を圧入し広げているのです。 このカシメの力具合は難しく、カシメが足りなければもちろんダメなのですがカシメすぎてもダメ。 カシメすぎるとリンク部が固着したように硬く動かなくなります。 規定のトルクなどが支持されているわけではなく、経験による力加減と目視での確認で作業を完了させます。

一般の方は頻繁にチェーン交換をするわけではないと思いますので専用工具を買うのもハードルになりますが、なによりもこのカシメ具合の経験値が身に付かないことがチェーン交換のDIY化が難しい部分だと思います。 ご自分で作業されるときはくれぐれも注意してくださいね。

エンジンオイルとブレーキフルードの交換を終え、各可動部へ注油とグリスアップを実施。 フロントブレーキの接点が若干汚れていて導通状態が悪く、ブレーキランプが点かないことがあったので洗浄を実施。 ひととおりの点検整備を終えたら車両を奇麗に洗車し、ガラスコーティングを実施すればすべての整備完了です。

車検も一発合格! ご用命、ありがとうございました!