このバイク、すごく念入りにカスタムされている。フロントフォークボトム、ロッカーカバーの一部を残して黒ずくめのエンジン、もちろんクリーナーケースもそれに倣っている。ステップは細身のものに交換し、ペダルも黒フィニッシュ。手元のコントロール系やミラーも黒だ。
こうした部分とコントラストを見せるように、エンジンのプッシュロッドケースやエキパイがキラリと光る。エンジンのカバー類を留めているありきたりのキャップボルトですら、黒との対比で見事な造形を見せているかのようだ。
ホイールもスポーク部の一部を光らせ、キラリ感を演出。リヤまわりはウインカーにテールランプを押し込んだXL1200Nでも見せた斬新な意匠で、ツルンとしたフェンダーを強調する。
カスタムリーダーシップをスローガンに、市販車をまさにワークスチューンするハーレー。ソフテイルロッカーのように、ズバ抜けた存在の市販車にするのも凄いが、僕にはこのアイアンのように色味だけで化かすような手法のほうが凄いと思う。言ってみれば、今ある冷蔵庫の食材でどれだけ美味しいモノ作れるか選手権みたいなもので、これにかけてはギネスものだ。このアイアンの領域は他のメーカーがまねしたくてもまねできない領域だと思う。
このまま持ち上げて終わるのも一興(笑)だけど、走りも報告します。エンジンはトルクフル。急開してもVツインがガッツンガッツンすることなく滑らかに回る。とにかく流すのが気持ちいい。ショートストロークサスなのでバンク角が浅く、乗り心地も硬い(これには一言いいたい)。けれどこのスタイルの一部だと思えば許せるのが不思議だ。タンク下のハーネス類の処理がイマイチだが、走る気分、持つ歓び、それにハーレーが持つ世界にどっぷり浸れる点で最高。
ちょっと渋いミッションを操りながら、生き物のようなエンジンを楽しむ。コレ乗ってハーレーを体現できる人、僕は凄いと思う。
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