最先端バイクの世界を読み解く

いま、技術はどこまで進化しているのか・・・最先端バイクの世界を読み解く

19世紀から始まり、21世紀となった現在まで脈々と続くバイクの歴史。最初は蒸気機関だった物が内燃機関になり、電動バイクも日々進化を続けていて実用化され始めている。動力だけでなくさまざまなところに電気信号による制御システムが発明され、どんどん安全かつ快適になっていくこのバイクという乗り物は、現在どんなレベルに達しているのだろうか。

Photo/Satoru Ise Text/Satoru Ii

2020

IMUをはじめさまざまな電子制御が一般的に

HONDA新車価格:278.3万円

CBR1000RR-R

FIREBLADE SP

これが初採用というわけではないが、現在はABS、IMU、トルクコントロール、スロットルバイワイヤ、スリッパークラッチなどといった電子制御をいたるところに駆使したバイクが一般的になりつつある。

時代と共に変化する「よいバイク」の定義

 速いバイク、楽しいバイク、安全なバイク・・・人によって「よいバイク」の定義は違うだろう。しかし一貫していえるのは、スタンドなしでは自立しない、2つのタイヤだけで支えられているこの不安定な乗り物を、手足のごとく操ることができたときの快感こそが、バイクの楽しみの原点なのではないだろうか。
 しかし昭和のバイクブーム時代、がむしゃらに速いマシンを作り続けていた各メーカーは、今ではこぞって安全な、転ばないバイク作りに勤しんでいる。歴史的な名車CB750FOURが発売されてから約50年、バイクはすっかり電子制御の時代に突入している。
 おそらく多くのライダーにとって、最も身近な電子制御パーツはABSではないだろうか。アンチロック・ブレーキ・システムの略称で、急ブレーキをかけたときに、タイヤがロックする前にオートバイがブレーキの利きを制御してくれるシステムだ。
 また、近年多くの大型バイクに採用されているトラクション・コントロールは、濡れた路面などでタイヤがグリップを失い滑りそうになったときに、電子制御が働いてエンジン出力をコントロールし、タイヤの空転を防いでくれる。
 このような電子制御システムのひとつにIMU(イナーシャル・メジャーメント・ユニット)がある。IMUとは一言で言えば「慣性計測ユニット」で、2011年に初採用された二輪車用IMUは年々進化を遂げ、現在では「ピッチ(左右方向の回転軸)」「ロール(前後方向の回転軸)」「ヨー(上下方向の回転軸)」の6軸の挙動を正確に検出・分析している。そこから得た情報を元にECUがバイクの動きをコントロールし、より安全な走行を可能にしているのだ。
 このように、以前はただひたすら速さのみを追求し、安全性はライダーのスキル任せだったバイクは「誰にでも安全に乗れる乗り物」に進化しつつある。そういう意味では「自由にバイクを操る楽しさ」は昔よりも減りつつあるのかもしれない。近年のバイクしか乗ったことのないライダー諸兄姉は、ぜひ一度ここで紹介しているような「かつての名車」に触れ、その不安定さと自由さを肌で感じてみてはどうだろうか。

IMUってなに?

CBR1000RR-Rに採用されているBOSCH製IMU。「ピッチ(左右方向の回転軸)」「ロール(前後方向の回転軸)」「ヨー(上下方向の回転軸)」の6軸の挙動を正確に検出・分析する慣性計測ユニット。

1969

4気筒エンジン・ディスクブレーキを採用

HONDA CB750FOUR

中古相場:38.5万円〜946万円

ホンダCBシリーズのフラッグシップモデル。空冷4ストローク4気筒エンジンを搭載し、量産車としては世界で初めて200km/h超えを記録。国内初のディスクブレーキを採用した量産車である。近代バイク史はこのバイクから始まると言っても過言ではない。

HONDA CB750FOUR

1971

空冷エンジンから水冷エンジンへ

SUZUKI GT750

中古相場:138万円〜198万円

当時の主流であった空冷エンジンから、水冷エンジンへとシフトする大きなきっかけになった1台。今や空冷エンジンはハーレーのような独特の鼓動感や、フィンの造形など見た目の美しさを求めるライダーに愛される個性派になっている。

SUZUKI GT750

1977

ツインショックからモノサスへ

YAMAHA DT250

中古相場:26.2万円〜71.5万円

車体中央のシート下部に一本のダンパーユニットを配置してスイングアームを支持することで、ツインショックに比べて重量を中心に集中することができ、ホイールトラベルも長くすることが可能になった。

YAMAHA DT250

1983

アルミフレーム採用で大幅な軽量化

SUZUKI RG250Γ

中古相場:25.9万円〜100万円

当時、フレームは鉄が当たり前。アルミフレームなどはワンオフのレーサーマシンにしか使われていなかった時代に、ガンマは市販車初のアルミフレームを採用。レーサーレプリカブームの火付け役となった。

SUZUKI RG250Γ

1990

リッターバイクの台頭

KAWASAKI ZZ-R1100

中古相場:16万円〜69.8万円

当時日本はまだ750cc規制がある時代。そんななか、海外向けに発売されたZZ-R1100で当時まだ未達成だった300km/hが見えてきて、日本でも逆輸入車が数多く販売された。現在まで続くビッグバイクブームは、ここから始まったと言ってもいい。

KAWASAKI ZZ-R1100

2007

フューエルインジェクションが普及

HONDA スーパーカブ50

中古相場:4.5万円〜35万円

国内でフューエルインジェクション(FI)が初めて市販車に採用されたのは1980年のZ1000H。そして2007年、厳しくなった排ガス規制に対応するため多くのモデルがFIを採用するようになり、スーパーカブまでも。

HONDA スーパーカブ50

※中古車相場価格はグーバイク調べ(2020年7月)。

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