水温警告灯が点灯してしまったヤマハの原付スクーターJOGの修理です。

水温警告灯は冷却水が異常加熱したことを知らせる警告灯です。 水冷エンジンは冷却水がエンジン周囲を循環してエンジンを冷やします。 冷却水は一定の温度以上になるとラジエターに送られて放熱。 再びエンジンに戻って冷却します。 冷却水のサージタンクを点検すると空っぽです。 単に冷却水不足も考えられますが、空っぽになるほどというのは何らかの異常を疑ってもいい状態です。 外側から点検する限りは冷却水漏れはありません。 なのに減っているということは…

エンジンオイルを抜いてみると白濁したオイルが出てきました。 エンジンオイルに水が混入したことによる乳化現象です。 冷却水が減ってしまったのはエンジン内に流れ込んでしまったからのようです。 冷却水はウォーターポンプで循環されています。 このポンプはエンジンの動力でインペラ（羽車）を回す仕組みです。 この際に冷却水がエンジン内部に混入しないようにシールが備えられており、エンジン側（オイル側）とラジエター側（冷却水側）を分断しています。

ポンプを外してみるとクリーム状になったオイルが付着しています。 やはりオイルと冷却水が混ざり合ってしまっています。 ポンプのシール部分が破損しているだけでなく、インペラのシャフトも摩耗しがたつきが出ています。 がたつきに加えて冷却水がベアリングに負担をかけ、ベアリングも破損させています。 必要な部品を交換してこのポンプをオーバーホールする方法もありますが、部品代は安くなるものの工賃が高めになります。 それならいっそのことポンプごと新品に交換したほうが良いでしょう。

ポンプを交換した後にサーモスタットも点検します。 冷却水はエンジンを熱を吸収し、ラジエターを通過することにより放熱（冷却）されます。 エンジンが冷えているときにラジエターまで循環するとエンジンがなかなかあたたまりません。 そこで一定の温度で開閉する弁が備えられています。 これがサーモスタット。 点検すると錆と汚れで真っ黒です。 これではサーモスタットがきちんと動かず、開きっぱなしになったり閉じっぱなしになったりと不都合が起きます。

新品のサーモスタットに交換し、新しい冷却水を入れてエアを抜きます。 試走をして警告灯が点かないことを確認して修理は完了です。

修理完了と言いましたがもうひとつ… 実はスタンドが折れてしまっています。 地面に接地する2か所のうち、片方だけが折れてしまいました。

稀に、こういう折れ方をしちゃうお客様がいるのですが、これはスタンドのかけかた（使い方）が間違っているんです。 折れるのは左側です。 オートバイから降りると左側に立ちますよね。 このとき、たぶんオートバイはやや左に傾いています。 その傾いたままの状態でスタンドをかけてしまうと、スタンドの左側だけに負担がかかります。 こうしたスタンドの掛け方がクセのようになっていて繰り返すと負担のかかった左側の接地面は破損します。

スタンドはふたつの脚になっています。 ちゃんと右と左を均等に地面に接地させてスタンドをかけなくてはいけません。 駐車場が斜面だったりすると、片側だけを設置させてスタンドを掛ける人もいますが、それを繰り返すとこうふうに折っちゃいます。 走行距離27000キロ。 当然ながらあちこち摩耗や経年劣化がありますが、定期点検と整備をしっかりしていればいざ故障と言ったトラブルが起きても修理は可能です。 言い方を変えれば日常的に整備をしていない車両が故障した時は、もう手の施しようがないということが珍しくありません。 定期的な点検と整備は忘れないよに行いましょう。