高性能なマシンがひしめく600ccクラスのなかで、ER‐6nのスペックは、それほど目を引くものではない。それがなぜ、デビューと同時に人気になったのかといえば、個性的なデザインに加えて、あらゆるライダーにとって等身大のスポーツ性能を持っていたからだった。
このマシンが搭載しているパラレルツインは、低回転で力強いだけでなく、高回転でバランスの良い180度クランクを採用。そのため、どの回転を使っても走りやすい。フルスロットルにした時のパワーはそこそこなのだが、逆に言うと丁度使い切れるし、扱いやすいので、走っていてストレスが溜まらない。
ハンドリングも同様で、絶対的な車体の剛性感や運動性こそないものの、軽快で素直なため、峠などでは十分にスポーツすることができてしまう。何もかもが人間の感覚に近いところにある。だから走っていて楽しいと感じる。スタイルで人気になったマシンだが、趣味の乗り物としての性能も決して低くはなかったのである。