98年1月に発売が開始され、その後は熟成が続けられてきた250ccロードスポーツモデルのVTRが、今年3月に大幅なモデルチェンジを受けた。
VTRは、国内排ガス規制の強化により、07年秋から生産終了モデル扱いとなっていたが、これにより新車ラインアップへと帰ってきた!
今回のテーマは、スタイリングの刷新と、吸排気系の変更。エンジンの基本部分は先代を踏襲しつつ、燃料供給をインジェクション(FI)化。この結果、始動性が大幅に向上した。
ただしFI化のメリットは、環境性能や始動性の向上だけではない。吸気系の制御が高度化されたことで、極低回転時にエンジンが粘るようになり、ストールしてしまうことが大幅に少なくなった。
これはつまり、ノロノロの渋滞走行時などに、クラッチを操作しなければならない回数が減るということ。初心者やATからの乗り替え組でも、気軽に乗れる仕様というわけだ。
また、厳しい環境規制に適合化された250ccのVツインということもあり、ギンギンに回転数を上げた場合でもエンジンの性格はあくまでフレンドリー。トルク感は薄いが、パワーの盛り上がりはわかるし、高回転域までスムーズなフィーリングでビュンビュンとまわる。
初心者を含め、ロードスポーツモデルを初めて乗るライダーも、これなら安心。一方ベテランは、まわし切る、または使い切る楽しさを堪能できる。
車体はコンパクトで、先代同様に超軽量。狭くタイトなコーナーでも、スポーツ気分を味わえる。エンジンパワーが少なめなこともあり、荒れた道でも安心。ビッグバイクだと持て余してしまうようなルートも、VTRなら遊び場になる。もちろん、初心者にも向く設定だ。
大型スポーツモデルでは“走る”場所を選ぶ日本。いまこそ僕たちは、超が付くほどの高性能やハイパワーばかりを追い求めるのではなく、クォーターの気軽さや楽しさを、再評価するべきなのかもしれない。
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