松井 勉 |
最高の気持ちよさを
味わわせてくれる瞬間、
バイクはクルーザーになる |
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心を飛ばせるクルーザー
そのハードルは意外と高い |
クルーズする。バイクは走る場所とバイクの種類を問わず、乗り手に最高の気持ちよさを味わわせてくれる瞬間がある。
たとえば、メキシコ、バハ・カリフォルニアにある広大なドライレイク、ラグナ・チャパラの干上がった平滑な湖底をオフロードバイクで延々とウイリーしながら走るとき。アウトバーンで未体験の速度で走り続けたとき。景色のよい秋の里山の少し冷たい空気のなかをトンボに急かされながら、ゴリラで走ったとき。オーディオの付いたツアラーモデルで、雨のなか、かき消されそうなラジオの音を聞きながら走ったとき。サハラ砂漠の砂丘を登り、そして下りながら加速してゆく瞬間、フロントタイヤに巻き上げられた柔らかな砂が水たまりを越えたときのしぶきのようにブーツに当たる感触を実感したとき……。
最高のクルーズの瞬間を味わわせてくれバイク、それはすべてにおいてクルーザーと呼べるにふさわしいのではないか。
辞書で「Cruiser」を引いてみると、巡洋艦、キャビンを備えたプレジャーボート、そして、巡航する航空機、そんな言葉が並んでいる。こんな言葉から連想されるクルーザーは、圧倒的な力強さをもって、そしてたくましく、かつ、意気揚々と進むようすが浮かび上がってっくる。
そのライダーが走り抜ける風景のなかに心が泳ぎだし、操るバイクとの一体感に陶酔するような瞬間を楽しませるハード的裏付け。数値ではなく、特性としてのパワー、優秀かつ良質なシャーシ。そして快適さ。
クルーザーのハードルは意外と高い。今回、そんな心を飛ばせるクルーザーが集まった。どれも手によりをかけて造られた秀作ばかりである。 |
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栗栖国安 |
バイクとしての基本性能が
高いレベルでバランスしているか。
それがクルーザーの条件になる |
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余裕を持てる力量が
気持ちのゆとりを生む |
クルーザーというと、ツアラーのようなバイクを連想しがちだ。たしかにカテゴリーを大別したときツアラーはクルーザーに含まれるけれど、フェアリング装備のオンロードスポーツだけじゃなく、アメリカンスタイル、デュアルパーパスなどいくつかのモデルのなかにもクルーザーに分類されるものはある。
要するにスタイルや装備だけでクルーザーと判断するのは早急なのだ。ではいったい、何を基準にクルーザーとするのか?
たとえば長距離走行での疲労を最小限に抑えてくれる快適性。これは重要な要素だろうけれど、アップライトでゆとりのあるライディングポジションとうたっていても、体格の違いから乗り手によって感じ方はさまざまだ。
シートの座り心地についても同様のことがいえる。ただし、サスペンションの性能が乗り心地に及ぼす影響は大きい。
空力特性は優れているに越したことはない。フェアリングとまではいかなくても、最低限ウインドシールドが付いていれば走行風を抑制してくれ、体の負担は少ない。雨天時や寒冷時にはとくにありがたい装備となる。
荷物の収納性や積載性も気になるポイントだが、そう大きな問題ではないと思う。大切なのはむしろ、重量のある荷物を積載した場合でも著しく操縦安定性が悪くならないことが重要だ。これはタンデム性にも直結する。
クルーザーにとって重要視しなければならないのは、バイクとしての基本性能がどれほど高いレベルでバランスしているかということ。実用面の機能はあくまでも付加価値に過ぎない。だからエンジン特性も含めて、どんな場面でも余裕を持てる力量が必要だと感じる。すなわちそれは、気持ちのゆとりにもつながるからだ。 |
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