日本では高速道路でさえ100km/hに最高速度が規制されているけれど、ヨーロッパをはじめ世界に目を転じてみれば、200km/h以上での移動も日常的だ。そんな世界標準に合わせたモデルが、ハイスピードクルーザー、スポーツクルーザーと呼べる高性能マシンである。
なかには150馬力超なんていうハイパワーモデルもあって、スーパースポーツとの間に垣根を設けるのが難しい部分もある。しかし、そうした高出力モデルでも、機能や装備を改めて見てみると、あくまでもハイウェイやワインディングを走行ステージとして開発されていることが理解できる。
比較すると、わずかながらもアップライトに設定されたポジションや、乗り心地を考えたシート形状、さらにはエンジン特性、ハンドリングに至るまで、広い領域に対応する性能を持たせている。
特徴としてもうひとつあげられるのが、ほとんどのモデルがフルカバードボディとしている点だ。超高速走行での空気抵抗を低減させるためのエアロフォルムと呼ばれるスタイルだけど、これは単に空力特性の向上を目指しただけでなく、エンジン性能のアップに積極的に走行風を活用するエアマネジメントの考えを取り入れた結果だ。
そのためフロントフェアリングにはエアダクトが設けられ、エンジン冷却および、エアクリーナーへの新気導入を促進させている。また、エンジンの熱気がライダーに直接当たらない工夫もしてある。快適性を極力スポイルしないようにして、クルーザーとしての性能アップを図っているわけだ。 |
パワーユニットには基本的に高回転高出力を得やすいマルチエンジンを搭載するのが主流。吸入系にはインジェクションを採用し、低回転から扱いやすい特性を目指す。連続高速走行に対応するため、排気量は1000ccオーバーが中心だ。
当然、そのパワーを支えるフレームやサスペンションにも高い剛性が与えられている。性能面でもスーパースポーツに一歩も引けを取らない。ハンドリング特性は軽快性を前面に押し出すのではなく、安定性を重視したものとしている。だが、その運動性の高さは十分にスポーティな走りを許容する。
一方、実用面の機能では、たとえばオーディオシステムのような付加価値的なものは装備していない。しかし、必要に応じてパニアケースが装着できるようになっていたり、荷物の積載がしやすく設計してある。極端な段差のないシート形状も、積載性やタンデム性を考慮した結果だと思える。
1日に1000kmを移動なんていうクルージングスタイルは日本では馴染みがないかもしれない。しかし、これらスポーツクルーザーならそれを簡単に実現してくれる。そしてハイウェイだけでなくワインディングから市街地走行まで、あらゆる状況にも不足のない走りができるキャパシティを備える。
また、日本ではおよそ現実的じゃないけれど、最高速300km/hも可能という高性能ぶりも大きな魅力だ。いずれにしても、走る・曲がる・止まるという基本性能のレベルが非常に高いので、絶えず余裕を持って走ることができるのがスポーツクルーザーだ。 |
SUZUKI Bandit1200S |
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メーカー希望小売価格 95万5650円 |
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油冷並列4気筒エンジン搭載のスポーツツアラー。2灯式プロジェクターヘッドライトを組み込んだハーフフェアリングを装備し、高速走行時における風圧からライダーを保護。ロングクルージングでの疲労を抑えてくれる。このクラスとしては小柄なボディなので、日常的に乗るにも適している。その意味では現実性のあるモデルだ |
HONDA VFR |
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メーカー希望小売価格 105万5000円 |
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搭載される水冷V型4気筒は782ccと、高速クルーザーとしては小排気量だが、6800回転でバルブを切り替えるハイパーVTECの採用で、低回転から高回転までパワフルな走りを実現している。事実、最高出力も109馬力(輸出仕様)と高く、余裕の高速走行が可能だ。またポジションにもゆとりがあり、長時間走行も快適にこなす |
YAMAHA FJR1300 |
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メーカー希望小売価格 輸出車 |
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ヤマハ唯一のハイスピードツアラーとして進化してきたモデル。可動式ウインドスクリーン採用のフルフェアリングを装備し、快適な連続高速走行を実現してくれる。つねに高い安定性を発揮するハンドリングは乗り手に安心感を与える。またリヤサスはワンタッチでイニシャル調整ができ、タンデム走行に対応する。ABS装備車も設定している |
Ducati ST3 |
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メーカー希望小売価格 145万7500円 |
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ドゥカティのスポーツツアラーシリーズの最新モデル。ネーミングからもわかるように、2バルブのST2、4バルブのST4と同様、水冷Lツインは3バルブヘッドとしている。環境性能にも配慮した最新ユニットだ。フルフェアリング装備のスタイリングは基本的にST4と同じで、快適な高速クルージングを約束してくれる。パニアケースの装着性にも配慮する |
BMW K1200S |
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メーカー希望小売価格 178万5000円 |
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次世代のスポーツクルーザーとしてBMWが新たに開発したブランニュー。独自の思想から生まれたアルミツインスパーフレームやサスペンションシステム、さらには167馬力を発生する横置き水冷並列4気筒エンジンと、走りのよさを強くアピールしているのが特徴だ。日本製スポーツツアラーにとって強力なライバルになるのは必至 |
SUZUKI GSX1300R ハヤブサ |
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メーカー希望小売価格 輸出車 |
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その名が示すように「隼」をイメージしたマスクが特徴的なハイスピードモデル。頑強なアルミツインスパーフレームに搭載される水冷並列4気筒エンジンは、175馬力もの最高出力を発揮。市販車ながら300km/hを超える最高速を叩き出す。ちなみにギネスが認定した最高速モデルがこれだ。高性能な足まわりも、ハイスピードでの安定した走行性に貢献している |
KAWASAKI ZZR1200 |
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メーカー希望小売価格 輸出車 |
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スポーツツアラーの頂点に君臨した人気のZZR1100の後継モデルとして、高い運動性と扱いやすさを図りプラス100ccとされフルモデルチェンジを受けたのがこのZZR1200だ。高速クルーザーらしい安定性を進化させただけでなく、ワインディングにおけるスポーツ性も大幅に高めた。250km/h巡航もラクにこなす実力派モデルである |
KAWASAKI ZX-12R |
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メーカー希望小売価格 輸出車 |
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ハヤブサに対抗するように登場した高速ツアラー。市販車としては希少なアルミモノコックボディを採用して軽量化を実現。しかもそこに搭載する水冷並列4気筒エンジンは、178馬力を発生するのだから、自ずとその速さは想像がつくだろう。だが実際に走ってみると、ポジションも含めて意外なほど快適。これならば短時間での長距離移動が可能だ |
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